小田急電鉄と神奈川中央交通、SBドライブ、慶應義塾大学は6月6日、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでの自動運転実証実験の模様を公開した。
この実証実験は、2017年12月に小田急と神奈川中央交通、慶応義塾大学の間で締結した連携協力協定に基づいたもの。キャンパス内に設定した約500メートルの区間を、最高時速15kmで走行。自動運転バスが走行できる環境であることの技術的確認やオペレーション上の課題の把握、また自動運転技術に対する学生・教職員などに向けた理解の醸成を目的とする。
実証実験に使用するのは、日野自動車が市販するバス「ポンチョ」だ。コミュニティバスなどに使われるこのポンチョをベースに、SBドライブが自動運転に対応する改造を実施し、GPSやミリ波レーダなどのセンサを搭載。あらかじめ人間が走行したルートをGPSによりトラッキングして走行し、ミリ波レーダやカメラなどで障害物を認識すれば自動で停止する。現在認識できる障害物は、自動車、二輪車、人間の3種類で、前方40メートルまでの検知が可能だという。
実際に自動運転バスに乗車したところ、走行は思ったよりもスムーズだ。バス停の位置や一時停止箇所もあらかじめプログラムされており、センサで周囲の状況を確認しつつ、通常のバスと同じように整然とした運転を見せてくれた。
今回の実証実験では、緊急時に備えて運転手が運転席に座る「レベル3」という段階だった。今後はさらに、運転手が乗車しない完全無人運転の「レベル4」を目標としているという。しかしながら、この完全無人運転では、乗合バスの3分の1を占めるという車内事故の発生時に車内で対応できる従業員がいないこととなる。
これについてSBドライブでは、センサ類の搭載による遠隔監視を目指している。車内にカメラを設置し、乗客の頭をトラッキング。車内事故の大部分を占めるという転倒を検知し、運転責任を持つ遠隔監視者に通知できるシステムを構築するという。このほか、車内での急病人や車外での落石など、継続運行が難しい場合にも、遠隔監視者が状況を判断。場合によっては監視者の操作で緊急停止する。
課題もある。緊急停止した後、係員が現場に出向くのか、あるいは警察などに通報すべきなのか、という対処方の考慮が必要だ。また、現行の法律下では、レベル4の完全無人運転は認められておらず、車両1台に対して運転責任者となる人間が1人必要だ。人材不足が深刻化するバス業界において、この段階では雇用問題の解決につながらない。この点に対しSBドライブでは、実証実験を進めつつ法改正を待ち、複数台を1人で管理できるような体制を目指すとしている。また、小田急電鉄 経営戦略部課長代理 モビリティ戦略プロジェクトチームの西村潤也氏は、車内のトラブルに対しては、運転責任を持たない車掌を乗車させることも選択肢だとしている。
神奈川中央交通 経営企画部事業推進グループ課長の大塚英二郎氏によると、「実用化段階を100とすると、現状は10から20」だという自動運転バス。「ゆりかもめ」のように完全無人で運転するバスが走る日は来るのだろうか。西村氏は、法律の問題から具体的なスケジュールは決められないとしつつ、「法改正を待つのではなく、法改正を考える土台としての実証実験を繰り返していきたい」と、今後の意気込みを語った。また大塚氏は、2020年頃に限定地域での自動運転バス実用化を目指した国の案に触れ、「安全を確保できた段階で導入していきたい」と述べた。
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