一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は5月23日、年次定例会見を開催し、2017年度の徴収・分配額および主な活動などについて報告した。
2017年度の著作物使用料徴収額は前年比98.1%の1096億4762万円。コンサート市場の好調やホテル、クラブ、ディスコなど利用規模の大きい施設との契約推進により「演奏」で堅調を維持した一方、CDやDVD売り上げ減には依然として下げ止まりがかからず、「録音」分野は前年比87.3%と大きく数字を落とした。
前年から大きく数字を伸ばしたのは「複合」分野のインタラクティブ配信。サブスクリプションサービスの契約者数大幅増に加え、動画投稿・共有サイトが好調に推移し、前年比124.1%を記録した。
使用料分配額は1108億6000万円(前年比98.6%、16年下期~17年上期を反映)。JASRACでは権利者への分配透明性を高めるために利用曲目報告データを活用した分配明細の詳細化を進めており、2017年9月分配よりインタラクティブ配信に関する「分配明細データ詳細版」の提供を開始。2018年上期からは演奏会分野、2019年度内には放送分野でのデータ提供を実現すべく準備を進めているという。
3月の選挙で2期目の会長就任が決まったいではく氏は「JASRACの役割として徴収ばかりが取りざたされることが多いが、正しく分配している、ということに世間一般の理解が得られていないと個人的に感じている。きちんと分配していることが伝われば、世間の受け止め方も変わってくるものと考えている」とコメント。今後も分配透明化に努めるとともに、そうした活動をしっかり広報していく方針を示した。
JASRACの浅石道夫理事長は、2018年の活動について「『人に人権、音楽に著作権』という標語が生まれて60年。これを改めて前面に押し出すとともに、音楽文化の発展に寄与したい」と挨拶。2019年の創立80年に向けて、音楽著作権の正しい在り方を啓蒙していく考えを示した。
漫画・アニメなどの海賊版横行にともなうサイトブロッキング対応については「基本的人権同士のぶつかりあい」と評した上で、「(サイトブロッキングに)反発する憲法学者の方々は(表現の自由などを認めた)憲法第21条には言及するものの、財産権を認めた29条には触れない」と指摘。JASRACとしては「当たり前のことを当たり前に提言していく」とし、新たな法整備も含めた海賊版対策を積極的に推進する方針を示唆した。
文化庁長官裁定にともない、4月1日から徴収が認められた音楽教室への演奏使用料については「請求権不存在確認訴訟が続いており、現時点では(文化庁から)個別の督促を行わないよう行政指導も出ている」(大橋健三常務理事)ため、事実上、徴収は停止している状況が続いているという。
一方、4月時点でJASRACとの契約を申し出た音楽教室も数10社程度あり、「数としては少ないが、われわれの説明を真摯に受け止めていただいた事業者もいるということ」(大橋氏)と手ごたえを感じているという。当面は「音楽教室を守る会」との裁判を粛々と進めていく方針だが「一審判決が出た時点で(「守る会」に参加していない)全体の半数以上が何らかの判断を下すことになるかもしれない」(同)とした。
前年度の著作権使用料分配額の多かった作品を表彰する「JASRAC賞2018」は、星野源氏が作詞作曲を手掛けた大ヒット曲「恋」が金賞を受賞した。
2016年に放送されたドラマの主題歌としてヒットしたことに加え、動画投稿サイトなどへの「恋ダンス」投稿が流行したこと、さらにカラオケでも多くのユーザーに選曲されるなど、幅広い分野で高い評価を獲得。ドラマ放送終了後も着実に人気を保つロングセールスへとつながった。
銀賞は「ドラゴンクエスト序曲」。ゲームファンならずともお馴染みの楽曲で、2017年の銅賞に続く2年連続の受賞となった。表彰式に参加した作曲者のすぎやまこういち氏は「(銅賞から銀賞に上がり)『ぱらららっぱっらっぱ~♪』という気分です」と、ゲーム内のレベルアップ音で喜びを表現した。
銅賞は1970年代のヒット曲「UFO」。テレビCMに使用されたことで着実に使用料分配を得た形で、故・阿久悠氏にとっては初のJASRAC賞。前JASRAC会長でもある作曲者の都倉俊一氏は「(任期中に)自分で自分に渡したかった」とのVTRコメントを寄せた。
そのほか、海外からの入金が最も多かった国内作品に贈られる国際賞は「ドラゴンボールZ BGM(TV)」が受賞。外国作品分配額1位に贈られる外国作品賞は、コンビニエンスストアのCMなどで使用された「DAYDREAM BELIEVER」がそれぞれ受賞した。
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