ディー・エヌ・エー(DeNA)は5月10日、2018年3月期の連結業績を発表した。通期の売上収益は1393億9000万円(前年同期比3.1%減)、営業利益は275億300万円(同18.7%増)、純利益は229億8100万円(同25.4%減)となった。
四半期ベースでは、売上収益が333億円(前四半期比1%増)、営業利益(IFRS)は13億円(同90%減)。季節変動の大きいスポーツ事業を除く売上収益は316億円(同5%増)、Non-GAAP営業利益は27億円(同16%減)となっている。
通期における主力のゲーム事業はユーザー消費額が拡大し、ブラウザの限界利益の減少よりもアプリの限界利益が上回る形となった。一方で、固定費の増加によりセグメント利益は286億円から251億円へと減少している。スポーツ事業は、収益事業のひとつとしての存在感を高めたほか、新規事業領域では、投資をコントロールしつつ種まきと見極めが進捗したとしている。
決算説明会で登壇したディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEOの守安功氏は、2018年度の方針として、主力のゲーム事業においては「健全な収益性の確保」、そして新たな柱の構築に向けた投資において「タクベル(オートモーティブ)、ヘルスケア型保険、ソーシャルライブ」の先行投資積極化を挙げた。
ゲーム事業においては、固定費構造の改革を行いながらトップラインに応じた適切なコストコントロールによって、前年度と同等以上の利益水準を確保。そしてグローバルで人気のIPタイトルを含めた新規タイトルの開発が着実に進んでいることから、新たなヒットタイトルの創出を図り、2019年度からの再成長に向けた足掛かりを作る方針。守安氏は、トップラインの追求よりも、限界利益の増加を図りつつ、それに見合ったコストとのバランスを主眼に置いて展開を図るとした。なお今期は5タイトル強の新作リリースを想定。任天堂との協業タイトルである「マリオカートツアー」のほか、IPタイトルについて「グローバルで大きく通用するようなタイトルを1本仕込んでいる」(守安氏)という。
かねてから、長期的に複数の事業を、ゲーム事業に匹敵する収益の柱に育てる方針を掲げているなか、新規事業に向けた投資を2017年度の55億円から、80億円(見通し)へと拡大。そのほとんどをオートモーティブ、ヘルスケア、ソーシャルライブサービスに投下する。
なかでもオートモーティブは投資額の50%以上を占める見通しで、中長期の成功を見据えAIを活用したタクシー配車アプリ「タクベル」を中心に投資。タクベルは2017年9~10月にかけて神奈川県タクシー協会とともに実用実験を、横浜市の限定エリアで実施した。登壇したディー・エヌ・エー執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏は、その結果を踏まえ「十分事業性が見込める」と判断。2018年4月から正式サービスを開始した。
現在は横浜、川崎エリアでサービスを行っており、今夏には神奈川県全域へ拡大する見通し。地域によってもバラつきはあるとしながらも、神奈川県タクシー協会加盟の約半数の事業者の車両から配車が可能になっているという。中島氏は、正式サービスからはまだ数週間の状態としながらも、アプリのダウンロード数や配車回数など利用に関する立ち上がりは良好とし「今後に関しても大きく期待を持っている」と自信を見せる。2018~2019年度は投資フェーズとし、首都圏での利用拡大ならびに、事業者への導入の両面で投資をかける。そして2019年度からの有意な売り上げの立ち上がり、2020年度には本格的な収益貢献を目指すとしている。
ソーシャルライブサービスについては中国で台頭しており、日本でも同様の兆しを見せているという。DeNAでは、2013年秋から双方向コミュニケーションの仮想ライブ空間とうたう「SHOWROOM」のサービスを開始(現在は子会社が運営)。タレント事務所などの協力により、アイドルやお笑い芸人、声優といった有名な配信者が利用することで成長を続けていると説明。その路線は継承しつつ、今期から新しい取り組みとして、近年盛り上がりを見せている“バーチャルYouTuber”“VTuber”と呼ばれるバーチャルキャラクターの領域にも注力していくという。
守安氏は、すでにSHOWROOMでもバーチャルキャラクターによる配信を行っているなかで「SHOWROOMとバーチャルキャラクターの仕組みは、親和性が高い」と語る。配信者とのコミュニケーションは主にコメントやアイテムのギフティングによって行われるが、バーチャルキャラクターによる配信の場合、そのアイテムを手に取ることができることから、「バーチャル空間のなかでコミュニケーションがとれるような、新しい体験を提供できている」と語った。
ヘルスケアにおいては、健康レコメンデーションアプリ「KenCoM」などといったエンゲージメントサイエンスや、それらによって収集した利用者のライフログなどのデータのエビデンスを活用し、2018年度には給付金とも連動するヘルスケア型保険の商品開発に、保険会社ととも取り組み、2019年度に第1弾をリリースする計画という。
2019年3月期通期の業績予想について、売上収益は前期比8%増の1500億円、営業利益(IFRS)は同44%減の155億円。Non-GAAP営業利益も同14%減の155億円、純利益は同52%減の110億円を見込む。ゲーム事業では前年度と同等以上の利益水準は見込むものの、注力領域への投資積極化や、営業利益(IFRS)では、海外子会社の清算手続き完了に伴って2017年度に計上した、その他の収益107憶円の剥落があるとしている。
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