中国デジタルビジネス最前線

アリババが作った新しいスーパーマーケット「盒馬鮮生」--人海戦術でO2Oに対応

近衛元博(D2C China代表)2018年05月23日 13時00分

 世界中で話題のテクノロジである無人レジスーパー。Amazonが米国で実店舗を作っていますが、アジアでもっとも話題になっているのは、アリババが運営する無人レジスーパー「盒馬鮮生(Hema:フーマ)」です。2017年12月時点で、中国国内で25店舗あると言われていますが、今後ますます拡張予定のようです。テクノロジによって、一部の職が消える可能性があると言われていますが、フーマはその代表例になるでしょう。

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無人スーパーの「Hema(フーマ)」

 フーマの大きな特徴は、オンラインとオフライン実店舗の両方を運営している点です。ただ、中国ではデリバリーサービスが盛んで、どこのスーパーでもオンラインサイトを持っているため、スマートフォンから注文すると40分程度で届けてくれるサービスは、実店舗のスーパー、レストランなど、すでに実行されていると言っても過言ではありません。

 マクドナルドやスターバックス、街中のどんな小さな店舗でも、ジュース一杯からすぐにデリバリーしてくれます。もちろん、実店舗とオンライン注文の価格は一緒です。配送費として、おおよそ7元(120円)程度かかりますが、例えば、50元分購入すると7元を割引するといったサービスが多くあるため、ほぼ価格は一緒だといえます。

 ですので、30分で宅配するフーマのサービスは、中国ではすでに当たり前のサービスで目新しいものではないのです。店舗で購入しても自宅まで届けてもらえますし、スマートフォンアプリで注文した商品は、配送するか実店舗の店頭で受け取ることも可能です。

フーマは何が新しいのか

 フーマで新しい仕組みの1つが電子値札システムです。値札には、価格のほかに、在庫数や陳列情報なども表示することで、棚を管理するための人件費や手作業によるミスの削減にもつなげています。

 フーマ実店舗で買い物した客は、無人レジに商品を持って行き、商品についているバーコードをレジに自分でかざして、支払いをします。お客さんがレジ打ちの店員の役割を自分でするということですね。もちろん袋詰めも自分でやります。ちなみに中国では、買い物ビニール袋は有料です(7円程度)。

 支払いは、アリババが運営する「AliPay」のほか、「WeChat Pay」から直接支払うことができます。この2つのアプリは、銀行口座と直接つながっており、日本で例えるところのデビットカード的な存在でしょうか。現金も使用可能ですが、あまり現金を使っている人は見かけません。フーマ以外にも、中国の街角には無人レジがどんどん増えています。

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無人レジを導入

オンライン注文したユーザーのために50人程度の店員が店内を駆け回る

 フーマの特徴の一つにバックヤード体制が挙げられます。オンラインでオーダーが入ると、スタッフが店内に並んでいる商品を専用バッグに入れていき、商品がそろい次第専用のクレーンに載せ、店内の天井に設置されたレールで、バッグヤードの配送エリアまで運びます。

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店の天井にレールが設置されている

 これは、単に見世物としてのエンターテインメントであるほかに、オンライン注文をさばく部隊が店内を走り回るため、一般来店者と同じ列に並ぶことなく、スピーディーにオンライン注文したユーザーまで商品を届けるのに一役買っています。

 店内を50人程度の店員が袋をたくさん抱えて縦横無尽に走り回り、棚の商品を袋に放り込んでいきます。ここまでオフラインとオンラインが共存している店舗は、たぶん世界には存在せず、衝撃が走ります。当然、店内には日本からの使節団もちらほら。O2O(Online to Offline)を、実験の領域からきちんとビジネスに昇華させているアリババは流石と言えるでしょう。

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店内をオンライン専用スタッフが駆け回る

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