スピルバーグ監督最新作「レディ・プレイヤー1」制作秘話--VRの役割 - (page 2)

Richard Trenholm (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年04月18日 07時30分

 予定のセットを仮想プレビューの中で動き回れるため、Spielberg監督はアングルや照明などのクリエイティブな選択肢を複数検討することができた。メリットはそれだけではなく、セットが実用的かどうかをStockhausen氏が確かめることもできた。「例えば、(セットの)サイズ感は妥当かどうか、あるいはそこでアクションや演出を展開できるか、何らかの調整が必要か、といったことを検討できたのは素晴らしかった。大いに役に立った」(Stockhausen氏)

 VRは今回のレディ・プレイヤー1だけでなく、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の企画段階でもすでに使われており、映画制作で今後さらに普及しそうだ。Stockhausen氏もこう述べている。「VRはいま草創期だが、やがては映画制作に欠かせないルーチンの1つになるだろう」

イースターエッグの数々

 レディ・プレイヤー1のファンにとって最大の見どころは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンと「AKIRA」の金田バイクがレースで競う場面など、ポップカルチャーで人気の元ネタが次々と登場する、ぜいたくな取り合わせだろう。Stockhausen氏によると、この映画にふさわしい元ネタを散りばめるのは、制作チームにとっても楽しいことだったという。「監督と一緒に、映画史上に残るクルマをレースに登場させるとしたら何がいいだろうか、などと相談した。『夢のチョコレート工場』から使うなら何がいいか、考えるだけでも楽しかった」(Stockhausen氏)

 デロリアンのような有名どころは、作中で重要な役割を果たすが、法務チームが尽力して権利の問題を解決しなければならなかった。その上で、精密な高解像度版としてオアシスの世界を作っていったが、瞬きした間に見逃してしまいそうな小ネタを制作チームが山のように盛り込んだのは、モブシーンや登場人物がたむろするシーンなのだという。「よくよく気をつけて見れば、いろいろな映画でおなじみの宇宙船がそこかしこに登場する。壁にも、ありとあらゆるものが並んでいる」。Stockhausen氏はそう話している。

 前半のアクションシーンのひとつ、仮想のニューヨークを舞台に繰り広げられる大がかりなレースの場面も、映画ファンには楽しい光景だろう。「80年代のニューヨークを舞台にした映画に登場する有名な建物や看板を再現したのは、面白かった」と、Stockhausen氏は回想する。適当に例を挙げてみると、Dustin Hoffman主演の1982年のコメディー映画「トッツィー」に出てくる建物に、よく見れば気づくだろう。また別の場面では、オアシスのアーカイブの設計が「ブレックファスト・クラブ」の図書館が元になっている。映画を見て気づけるだろうか。

 どんな小ネタでも、法務チームは権利の問題をクリアしなければならなかった。そのため、映画に出てくるアイコンの一部が、原作で言及されているものとは若干違うこともある。「権利を得られなかったものが一定数あったが、(法務チームを)非難するつもりはない。プレッシャーを与えたくないからね」と、Stockhausen氏は笑いながら語った。原作にあって、どうしても入れられなかったものの1つが、日本で愛されてきたウルトラマンだ。割愛せざるを得なかったのは、作者が拒否したからではなく、権利所有者をめぐって訴訟が続いているためだったという。

 しかし、このように元ネタを断念するのは、必ずしも悪いことばかりではない、とStockhausen氏は語る。「ある権利が使えないとなって、最終的には何がいいのか真剣に考えたからだ。巨大ロボットをどれでも使えるとしたら、いちばん使いたいのは何か。使えないと分かるたびに、もっといいものはないかと、深く議論することになった」

 レディ・プレイヤー1は、全米ではすでに公開中で、日本では4月20日より公開予定である。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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