アニマルセラピーに代わるぬいぐるみロボット、患者の心のケアに一役

Patrick Holland (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年04月13日 07時30分

 病室というのは、奇妙な二面性がある場所だ。筆者の母親が入院したときも、治療に最適な場所であると同時に、本人にとっては最もいたくない場所でもあった。母は、腎臓病と心疾患による合併症を治療しながら、あのライトグレーの病室で数カ月を過ごした。

 家族も私も、母が気持ちよく過ごせるようにあらゆる手を尽くしたが、母が最も欲しがったものだけは持ち込めなかった。自宅で飼っていた、猫のCapucineだ。

 病気になったとき、母のように飼い猫を連れていきたいと願望するのは、珍しいことではない。ペットをなでると、リラックス効果のあるホルモンが分泌される。動物の呼吸と心音は、気持ちを落ち着かせる。だが、病院で患者と接するとなると制約も多い。仮に許可されたとしても、監督が必要だし、トイレの問題もある。面会も一定時間に限定されるだろう。

 こうした制約を解消するのが、いわゆるセラピーロボットだ。アニマルセラピーの利点はそのままに、病原菌やアレルギー源、コストといった心配もない。「パロ」(アザラシ型ロボット)や「My Special Aflac Duck」「Jerry the Bear」といった名前のセラピーロボットが、がんや1型糖尿病、認知症、うつなどと闘う子どもや大人を支援している。

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左は癒やしを目的に設計されたアザラシ型のパロ、右は1型糖尿病の子どもを支援する機能を備えたJerry the Bear
提供:Josh Miller/CNET

セラピーロボット

 共通認識のために述べておくと、ここでは健康向上や癒やしを目的としたロボットと玩具を総称して、「セラピーロボット」という用語を使うことにする。例えば、SproutelのJerry the Bearのように、拡張現実(AR)のスマートフォンアプリと連動する設計のぬいぐるみもある。

 同じSproutelが開発したMy Special Aflac Duckのようにもっと精巧なロボットもある。また、パロはアザラシ型ロボットだが、米食品医薬品局(FDA)によって、クラスIIのセラピー用医療機器として認定されている。

 玩具メーカーのHasbroも猫や犬のロボットを販売しており、玩具とセラピーロボットとの境界線は曖昧になりつつある。

現実の動物をベースに

 Stanford Health Careのボランティアで、動物が病院を訪問するPet Assisted Wellness at Stanford(PAWS)プログラムを担当しているLyn Belingheri氏は、動物がもたらす癒やし効果を信じている。「動物は、人と人とをつなぎ、対話や触れ合いの橋渡しもする。重度のうつ病患者が、まず私の犬と仲良くなり、犬に話しかけるようになって、最後には私に話しかけるようになった」とBelingheri氏は話す。

 生きた動物と同じように、セラピーロボットも形態はさまざまだが、ほぼすべてが、現実の動物をベースにしている。自然な人型ロボットを作るのは難しい上に、子どもを相手にすることが多いためもあって、セラピーロボットの多くはロボットというより、ぬいぐるみに近い。

 Sproutelの共同創業者であり、最高クリエイティブ責任者であるHannah Chung氏は、次のように語っている。「子どもが動物のぬいぐるみで遊んでいるところを考えてみると、子どもは、そのふかふかの存在に想像力をつぎ込んでいる。われわれは意図的に、機能を盛り込みすぎないようにしている。提供する必要がある最小限の機能と、子どもたちに想像力を働かせてもらう余地を考慮している」

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