ビットコインの価格高騰をふいにすることになった事例としては、ビットコインが使われたごく初期の取引が最もよく知られている。2010年、まだビットコインの価格が1セントの何分の1かにすぎなかった頃、フロリダ在住のLaszlo Hanyeczさんというソフトウェアプログラマーが、宅配ピザ2枚に1万ビットコインを払うことに同意したのである。
「これが、史上最も高価なピザ2枚だ」とDataTrek ResearchのColas氏は説明する(本稿執筆の2月15日時点の相場では、約9300万ドル、つまり1枚あたり4650万ドルになる)。
ビットコインを手放そうという人がほとんどいないことから、受け入れを停止する小売店も現れている。ゲーム会社のValveは2017年12月、同社の配信サービス「Steam」でビットコインの受け入れを停止すると発表した。手数料の高騰と、価格の変動が理由だという。出会い系サイトの「OKCupid」も、利用者がわずかしかいないとして、ビットコインの取り扱いをやめた。
オンライン小売店Overstock.comは、2013年にビットコインの取り扱いを始め、今ではダッシュ、モネロ、ライトコインなど数十種類の暗号通貨を受け入れている。にもかからず、暗号通貨を使った購入が占める比率は、全売り上げの約0.25%にとどまるという。
マンハッタンのアイスクリームサンドイッチ店Melt Bakeryの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)を務めるJulian Plyter氏によると、2014年から2017年までの間で、ビットコインによる取引は75件にすぎなかったという。しかも、その多くは、ビットコインで買い物をするとどうなるのかを知りたがったジャーナリストによるものだった、とPlyter氏は振り返っている。
それでも、ビットコインでの売り上げの低調を障害とは考えない向きもある。ブルックリンの引っ越し業者Dumbo Moving and StorageのCEO、Lior Rachmany氏は、数カ月前にビットコイン、イーサリアム、ライトコインの取り扱いを開始した。
今のところ暗号通貨による売り上げは、合わせてもRachmany氏の事業の5%にすぎないが、同氏は好んでデジタル通貨を使っている。取引の取り消しがきかないため、顧客によるチャージバック(支払い拒否)を心配することなく、引っ越し代金を確実に回収できるからだ。そのうえ、これまでの引っ越しによる売り上げも、ビットコインの価格高騰によって価値が増加する可能性がある。一部の海外の顧客にとっては使いやすいというメリットもある、とRachmany氏は話している。
現在は、夏の引っ越しシーズンに先立って備品を仕入れるために、暗号通貨での留保金を現金に換えようとしているところだ。
「これが未来のやり方だと考えている。金銭をめぐる力関係があまり存在しない。みんな導入すべきだ」(Rachmany氏)
このような小売店にとってのメリットが、消費者からはマイナスと捉えられる可能性も、もちろんある。
「取引は変更できない。まるで、通りすがりの人に現金を渡すようなものだ」と、Bert Green Fine ArtのGreen氏は指摘する。
ビットコインが今なお頻繁に取引に使われているのは、ダークウェブだ。暗号通貨は匿名性が高いことから、マネーロンダリングや契約殺人、麻薬やランサムウェアに利用する支持者が生まれた。
1日のビットコイン取引全体のうち、約20%(およそ5000万~6000万ドル相当)は非合法活動に利用されていると、Blockchain Intelligence GroupのCEO、Lance Morginn氏は推定する。Blockchain Intelligence Groupは、疑わしいビットコイン取引を追跡しているバンクーバーの企業である。
このように、非合法活動に結び付いているという世評も、ビットコインが主流になるのを阻害している要因のひとつだ。米司法省もMorginn氏のクライアントで、Blockchain Intelligence Groupはこの問題の解消にも取り組んでいる。今後ビットコインが発展するためには、匿名性を低くする必要があるだろう、というのがMorginn氏の提案だ。
画廊を経営するGreen氏は、早い時期にそれなりのビットコインを蓄えており、今では、蓄えた分をほかの大方の暗号通貨ファンと同じように使っている。ときには、一部を別の暗号通貨と交換したこともあり、事業が振るわないときには、一部を売って帳尻を合わせることもある。だが、大部分は、抱え込んでいるということだ。
「私もビットコインは消費していない。保持していることに長期的な価値があるはずなので、買い物には使っていない」(Green氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)