立命館小学校、マインクラフトを活用した“答えを決めない”課題解決型学習 - (page 2)

マインクラフトで作った歴史建造物を案内するプログラミング

 筆者が取材に訪れたのは、こうした過程を経て完成したマインクラフトの作品発表会の日だった。子どもたちが何カ月もかけて取り組んできたマインクラフトの京都観光ワールドは、どのように仕上がったのだろうか。

 金閣寺を担当したグループは、「観光客にお寺全体を見てもらえるように、少し離れたナナメの位置をスタート地点にした」とこだわった点を発表した。また、エージェントが池の周りを歩いて案内するときも、所々で一時停止をするようにし、見ている人が全体の景色を楽しめるように工夫したという。


金閣寺を担当したグループ。子どもたちからは「実際の観光でもロボットが使えるとゆっくりしたペースで動いてくれるので、体の不自由な人に便利ではないか」といった感想も聞かれた

 ちなみに、子どもたちがマインクラフトで作った金閣寺は特徴を捉えて、立方体のブロックで上手く表現しているが、ここまで至るには情報収集が欠かせない。マインクラフトの動画を参考にしたり、金閣寺の写真や他のお寺の設計図を見るなど、子どもたちはイメージした形を表現するために情報を集めた。“本物っぽく作りたい”、こうしたマインドになれること自体、マインクラフトが持つコンテンツの魅力だといえる。

 二条城を作ったグループは、お城の中に階段を設置し、最上階までエージェントが登りながら案内するプログラムを作った。子どもたちからは、「エージェントのプログラムを少なくするために、繰り返しブロックを使って同じような動きをまとめた」という話が聞かれた。ほかにも「エージェントに案内してもらうと同じスピードで歩くのが良いと思う」「人間だったら忘れてしまうことも、エージェントは正確に案内できる」といったプログラミングを活用したガイドのメリットも語った。


二条城を作成したグループ。お城の中に階段を設置し、最上階まで登れるように工夫した

 平等院鳳凰堂を作成したグループは、10円玉に描かれているお寺であることをイメージしてもらえるように、エージェントを正面からスタートさせた。同グループは、エージェントが平等院鳳凰堂のまわりを一周するプログラムに挑戦したが、「ナナメの移動がとてもむずかしかった」と苦労した点を述べた。ほかにも、エージェントを簡単に操ることができるよう、キーボード操作で動くようにしたり、いつでもスタート地点に戻れるプログラムを設けるなど工夫した点を説明した。


平等院鳳凰堂を作成したグループは、10円玉に描かれているお寺であることをイメージしてもらえるように、エージェントを正面からスタートさせた

 発表では、清水寺や伏見稲荷、立命館小学校のグループも作品を披露し、工夫した点やプログラミングのメリットについて語った。発表の最中は、組み立てたプログラムが上手く動かないなどトラブルが発生したが、子どもたちは教師やメンターにアドバイスをもらいながら、その場で修復作業を行うなど、対応力の高さも印象的だった。

マインクラフトで答えのない問題、教科横断型の学習を実現

 正頭教諭は、今回の課題解決型学習を振り返り、「子どもたち同士の話し合う量が圧倒的に増えるので、コミュニケーション力が伸びていると思う」と手応えを語る。というのも、このような学習においては、どうすれば正解なのか、正しい答えがあるわけではない。そのため、子どもたちが自ら話し合って最適な形を見つけるしかない。当然、そこに至るまでのプロセスでは言い合ってしまう場面や、話がまとまらないこともあるが、子どもたちは徐々に何がおかしいのか、何がしたいのかを発言できるようになってくると同教諭は説明する。


立命館小学校 ICT教育部長 正頭英和教諭

 また、マインクラフトを用いた協同作業については、「子どもたちの将来は、コンピュータの中で、他の人と同時に作業したり、自分のアイデアをアウトプットしたりするスキルが求められる。マインクラフトは、子どもたちが主体的に取り組みながら、そうしたスキルを伸ばすことができるツール」と語った。

 一方で課題となるのは、カリキュラムマネジメントだと同教諭は述べた。今回の課題解決型学習は、社会、英語、ICT授業とも連携して進めたが、やはり教科を超えてひとつのプロジェクトを進めていくのは難しいという。

 とはいえ、教科を横断して、答えのない問題に挑戦できるのはマインクラフトのメリットだ。しかも、マインクラフトの場合は、子どもたちの“思い入れ”が圧倒的に異なる。主体的な学びを実現するためにも、子どもたちの好きなものをリスペクトし、それを学びに生かす。そんな発想が日本の教育現場にも広がってほしい。

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