1万人のデータと機械学習で病気を予見--Alphabet傘下の「Project Baseline」 - (page 3)

Jo Best (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年02月07日 07時30分

 Project Baselineが健康について描く最終的なビジョンでは、人間の生命と遺伝子を理解するためのアルゴリズムが導き出されるかもしれない。その理解が完全になれば、病気のごく初期の兆候も見逃さないように監視し、発症する前に疾病を排除する、あるいはゲノムをスキャンして効果が最も高そうな治療を特定することもできるようになるだろう。

 デューク大学医学部のHernandez博士にとって、Project Baselineの主な目標は3つあるという。「1つ目は、もっと個人に応じた医療を実現し、ひとりひとりに適した治療を判断すること。2つ目は予防を強化すること、つまり、事後対応型の医療システムから先取的な医療体系に移行するにはどうすればいいかを知ることだ。3つ目は、医療という巨大なジグソーパズルの中で、これらすべてのピースをどうやって1つに組み上げるか、その方法を究めることにある」(Hernandez博士)

 Project Baselineで特に重視されているのが、心臓血管医療とがん医療の2つの分野だ。今はまだ解明されていない疾病について、この研究で危険因子を明らかにできる日が来るものと期待されている。そうなれば、まったく新しい医療支援や治療の創出につながる可能性もある。

 とはいえ、データの収集は最初の一歩にすぎない。参加者が共有し、膨大な量に及ぶ医療上の変数の間で複雑な関係を解き明かすには、強力な計算能力が必要だ。そこでGoogleの出番ということになる。

 「喫煙が健康に悪いと予測した最初のモデルのことを考えてみると、当時最新だった技術は使われていたが、現在のように膨大な量のデータがあふれていたわけではない。ここで、機械学習の威力が発揮される。なにしろ、百万もの要因があって、どれが重要かを見分けるのは難しいからだ。時間とともに変化する要因もあるので、『いつ』重要になるのかを見分けるのも難しい」(Hernandez博士)

 このプロジェクトでは、「最新のデータ科学」を使うことを期待している、とHernandez博士は続けた。「信じられないほど巨大なデータリポジトリと、その上で動作するAPIに近いものを想像してほしい」

 そうした機械学習も、医療上の変数をいくつでも扱える拡張機能も、この研究が発展して初めて、重要性が増す。Project Baselineは5年計画だが、新しい健康診断技術も登場する以上、プロジェクト関係者は5年後の先も見据えており、データセットは増え続けるものと考えている。

 「これは静的な研究ではなく、時とともに変わっていく。新しい技術が発達し、科学と医療に対する関心も形を変えて、患者の視点も取り込まれるようになるからだ。多くの人々に役立つ結果を生み出す最高の研究を考案し、実施するにはどうすればいいのか、われわれも患者の視点から学ぶようになる」(Hernandez博士)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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