GA technologiesは1月19日、首都大学東京と共同で不動産テックにおけるAIを活用した物件レコメンドシステムを開発したと発表した。従来の仕入れ担当者だけによる物件検索に比べ、検索時間が最大約55%削減した。
両者が研究開発したのは、機械学習を応用した物件のレコメンドシステム。GA technologiesでは、リノベーションを目的とした中古マンションの買い取りを実施しており、従来は仲介業者から送られてくる「マイソク」(不動産物件のチラシ)を、仕入れ担当者が目を通し、欲しい物件を見つけ出していた。
物件の買い取りは勘と経験に頼る部分が大きく、担当者の熟練度によっても品質にばらつきがあった。AIによる物件レコメンドシステムでは、物件データを蓄積し、提案した物件がどう評価されたかをランキング学習。検索結果表示の精度向上を実現したという。
これにより、マイソクから得た物件情報を“いい物件”の順にソートし、目的の物件にたどり着くまでの時間を短縮。従来12分30秒かかっていた提案までの検索時間が5分36秒にまで短縮できたという。
物件のレコメンドシステムは、ほかの不動産会社などでも採用しているが、リノベーションに特化した物件をピックアップできることが特徴。リノベーションを前提にしているため、間取りはあまり重視しない、内装を大きく変更できるといった情報を盛り込んでいるという。
あわせてマイソクの自動読み込みシステムも発表。マイソクに書かれている情報をデータベース化することで、仕入れ業務工数の3分の2を自動化することに成功したという。
マイソクは、不動産会社が独自で作成しているため、定形フォーマットがなく、情報量もマチマチ。自動読み取りは極めて難しいとされてきた。GA technologiesでは、画像認識技術を使い、マイソクの自動読み取り技術を開発。読み取った情報はデータベース化することで、AIによる優良物件のスクリーニング、ソフトウェアロボットによる自動処理RPA(Robotic Process Automation)を使った書類作成や業務効率化を実現するという。
従来、マイソクの情報は仕入れ担当者のみが持つデータだったが、自動読み取りにより、すべての物件をデータベース化できることもメリットだという。現在、読み取り精度は80%程度。物件仕入れの業務の工数は3分の1に削減した。
不動産テックのスタートアップとして、不動産業界をテクノロジの力で変えている、GA technologies代表取締役社長の樋口龍氏は「不動産業務のシステム化はとにかく大変で、エンジニアと不動産の業務に従事するスタッフのコンセンサスが取れるまでに1年くらいかかった。しかし、システムができる度に業務が効率化されるので、不動産担当者も、データをとることの大切さ、システム化することの利便性を理解してくれた。不動産会社はアナログの部分が多く、残業も多いというイメージが一部では定着しているが、システム化を推進することで、今までのイメージを払拭し、人事採用にもいい影響を及ぼしてきた。今後はレコメンドシステムを一般顧客向けに展開するとともに、将来的にはこれらのシステムをほかの不動産会社向けにシステムとして提供していきたい」と今後の取り組みについて話した。
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