ワンダーエッグ関係者を集めて建設--VRエンタメ施設「VR ZONE SHINJUKU」秘話 - (page 3)

「女性が喜ぶ食事を提供すべき」--迷走したフードメニュー秘話

――建物ができあがったあとの、機材の搬入や設置段階で何かエピソードはありますか。

田宮氏 :準備段階では、実際に現場で設置しないとわからないことが多かったです。特に「ドラゴンボールVR」(ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波)が大変でしたね。トラッカーを認知するBluetoothの通信が混線して、位置検出をしてくれなかったんです。VRデバイスのメーカー担当者にも来ていただいていたのですが、同じ場所で一度に何台も使われるような事例がなかったため、何台が同時稼働できるかもわからない状態だったんです。それでも、壁にアルミ箔を貼って電波を隣に届かないようにするなどの工夫をしてました。7月に入ったときまでやっていましたね。

――VRデバイスを使わないアクティビティ、そしてGLAMPER’S(グランパース)で提供されるフードメニューも、かなり充実しているように見えます。

GLAMPER’S(グランパース)での食事
GLAMPER’S(グランパース)での食事

小山氏 :VRアクティビティの開発以上に、フード周りだけで何時間も語れるぐらい、本当にいろいろありました。

田宮氏 :フードも含めたあのコーナーは迷走しました。食事もエンタメに振り切ろうという時期があったんです。

小山氏 :ほかの人がなにかのコンテンツを体験している様子を見ながら食事ができる、ということを考えていました。それで、大自然アクティビティという案でまとめていたんです。

――それだけ聞くと、今のコーナーはコンセプト通りのように聞こえます。

小山氏 :ただ、本当にそういう光景を見ながら食事が楽しめるのかという疑問があって、そこから迷走しました。一周回って最初に考えたコンセプトに近くなったんです。

田宮氏 :プロジェクションマッピングを活用して料理ショーをやるとか。

小山氏 :魔法のシェフが出て、魔法のごはんが出てくるという案もありました(笑)。こういう場所で、レンジでチンをしたようなフライドポテトやフランクフルトとか食べても、体験がチープなものになってしまいます。だから充実したものと思ってはいましたが、提供するフードのイメージがつかなかったんです。

田宮氏 :迷走しているなかで、会議にいた事業部長や事業役員から「担当を女性に据えて、女性が喜ぶ食事を提供すべき」という意見が出たんです。これが鶴の一声になりましたね。それで担当した方がまとめてくれて、最終的においしさもそうですが、写真も撮りたくなるようなフードメニューができたと。

小山氏 :男性の発想だと、大自然ならキャンプに出てくるような見た目よりもボリューム重視の食事になってしまったと思うので、そこは良かったところです。

ダントツ人気のマリオカートVR、モーションキャプチャの精度が高い攻殻機動隊

――VRアクティビティの人気についてはいかがでしょうか。

小山氏 :やはり一番人気は「マリオカートVR」(マリオカート アーケードグランプリVR)ですね。認知度も高いですし、イメージができていますから。一緒に遊ぼうと誘いやすいのもあります。特にYELLOW TicketではマリオカートVRがダントツで、ほかのはちょっとあおりをくらっているような状態です。あとはエヴァンゲリオンVR、「ハネチャリ」(極限度胸試し ハネチャリ)あたりが人気です。PVにも映っていますし、まったく知らないものよりも、イメージできるものを体験してみたいという気持ちが生まれやすいですね。

――体験した方の反応はいかがでしょうか。

田宮氏 :満足度のデータも取っています。やはりマリオカートVRがダントツで満足度が高いです。そのあとは、実は「トラップクライミング」や「ナイアガラドロップ」、「巨大風船爆発ルーム パニックキューブ」といった、VRゴーグルを使わないアクティビティが上位なんです。これにはいろんな見方があるのですけども、まず「思っていたよりも面白い」というものは、満足度が上がりやすいです。なので、施設全体として面白いものを来場者の方に提供できているととらえてます。

「トラップクライミング」
「トラップクライミング」

 そしてもうひとつは、体験する順番です。VRアクティビティでお台場時代からあるものは、1人で受動的なコンテンツが多かったのですけど、新作は複数人で能動的なものが多いのです。お台場のときは受動的なVRアクティビティを体験しつつ、能動的なものへと順々に体験して驚いてくださったのですが、新宿では、まず初めに体験するのがマリオカートVRなんですね。そのあとに受動的なVRアクティビティを体験すると、マリオカートVRのほうがよかったという感想になりがちになるんです。どの順番で遊んでいるかというのも、満足度に影響しているととらえています。

――個人的に思うのは、お台場時代に人気だった高所恐怖SHOWは、乗り物ではないためVR酔いがしにくく、ゆっくりでも自分の足で歩くという能動的なところがあるので、初めて体験する方にはこれがいいように思いました。

小山氏 :VRゴーグルを着用したことがない方、またVR酔いに抵抗感がある方には、はじめの一歩として高所恐怖SHOWがおすすめです。酔いはまず出ないので。

――VRアクティビティのアップデートや追加も行われていますが、12月には「攻殻機動隊」(近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds)が稼働しました。

田宮氏 :装備や仕組みは仰々しく見えますが、遊びの性質としてはスポーツ競技的なもので、VRエンタメの可能性を探るうえでは、試金石になるかと思います。また始まったばかりなので、リピーターの声は聞けていないのですが、開発側でプレイしている分では、回数を重ねるごとに面白く感じています。

「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」プレイ中の様子
「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」プレイ中の様子

小山氏 :今ある海外製のフリーローム型のVRコンテンツは、割り切った作りをしているのが多いんです。自分の足で歩きながら敵を撃つガンシューティングゲームで、演出にのっとったシチュエーションを楽しむというものです。私たちのは「人間で遊ぶFPS」というイメージで、人間同士できっちり撃ち合うという感覚を大事にしています。

田宮氏 :どうしても接触などの配慮が必要であるため、安全性を重視したルールにはしています。ただ一般の方が体験している様子を見ると、移動速度に関してはそこまでシビアにしなくてもいいのかなとも思います。

小山氏 :せめて身をかわす数歩程度は、早く動いてもいいようにはしたいですね。

田宮氏 :モーションキャプチャの精度が高くて、そこに人がいるという認識と映像の精度も高いと思える出来事があったんです。読んでる方はマネしないでほしいのですが、海外の方で、何度注意しても無視して思いっきり走り回る方がいたんです。でもほかの人にぶつからずに止まったり、避けていたんです。

小山氏 :精度が悪くて映像と実体がずれているとぶつかりますから。なまじっかそれをわかっている開発者やVRコンテンツに慣れている人だと、むしろ走れないです。

田宮氏 :一般の人だったから、素直に信じたのかもしれません。

小山氏 :VR空間で体を自由に動かせることで、走り回りたくなる気持ちはわかります。たぶん勝敗よりも、その解放感が勝っていたと思うので。ただ、勝敗にこだわる考え方だと、走れないです。そのあたりはサバイバルゲームと一緒で、勝ちたいなら動かないです。勝ちたい人と興奮したい人は別ですね。

まだまだ実験しているような段階、新作も開発中

――地方展開となる「VR ZONE Portal」も、12月から国内20店舗による本格展開が始まりました。

小山氏 :VR ZONE SHINJUKUでは9割以上が首都圏近郊都市からの来場ですし、常設されたVR体験施設は首都圏近郊だけですから。講演で地方に行っても、やはり体験していただかないと説明にピンとこない方も多いです。また、VRデバイスの認知度自体も、みなさんが思っているほどではないと感じています。Portalでは多くの店舗でマリオカートVRを設置しますので、たくさんの方に体験していただいて、さらに一歩進んだ魅力を味わえる施設が新宿にある、という気持ちを持ってもらいたいです。

――海外での展開も告知されていましたが、こちらはいかがでしょうか。

田宮氏 :今は英国のロンドンで試している段階ですね。

小山氏 :やはり体験している姿が楽しく映る、能動的に見えるもののほうがウケがいいようです。意外と脱出病棟は反応がうすいです。そもそも病院が怖くないといいますか、病院でなにかがでてくるわけがないという考え方があるようで。古い屋敷とかにしないと、イメージがわかないようですね。

――VR ZONE SHINJUKUは期間限定となっていますが、今後はいかがでしょうか。

田宮氏 :Portalの展開もありますが、たくさんのVRアクティビティを堪能できる施設を増やしたいですし、それは国内だけではなく世界に向けてという意味も含めて加速させていきたいです。コンテンツ側も気合いの入った新作も仕込んでいます。これがきたらみなさんビックリすると思えるようなものもあります。「VR ZONEは次に何を仕掛けてくれるんだろう」と思ってもらい続けてほしいですし、その期待にこたえていきます。

小山氏 :VR ZONE SHINJUKUができて、一区切りしたという気持ちは全くありません。むしろまだまだ実験しているような段階です。お台場時代は少し受け身のものが多くて、新宿では能動的に遊べるものを増やしました。さらに攻殻機動隊VRでは、ゲーム性を出して繰り返し楽しむものとなりました。でも試してみたい装置や仕組み、それを活用したVRアクティビティの案もたくさんあります。VRで楽しめるものを生み出せる可能性はありますし、それを追及していきます。

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