ワンダーエッグ関係者を集めて建設--VRエンタメ施設「VR ZONE SHINJUKU」秘話

 7月14日に新宿・歌舞伎町TOKYU MILANO跡地にて開設したVRエンターテインメント施設「VR ZONE SHINJUKU」。最先端のVR技術と、独自の体感マシンをかけあわせたVRアクティビティを設置している施設だ。

人気のVRアクティビティ「マリオカート アーケードグランプリVR」より
人気のVRアクティビティ「マリオカート アーケードグランプリVR」より

 2016年にお台場で、期間限定で運営していた「VR ZONE Project i Can」の流れをくみ、約1100坪規模の大型施設としてオープン。お台場時代に人気が高かったVRアクティビティに加え、「エヴァンゲリオン」や「ドラゴンボール」、「マリオカート」といったIP(知的財産)を活用し、作品世界を楽しむことができる新作も多数設置。施設内にはプロジェクションマッピングを活用した演出も凝らし、飲食コーナーにも力を入れているなど、最新技術とエンタメ性にあふれた施設となっている。新たに建設された施設ではあるが、今回も2019年3月までの期間限定で延長の予定はないという。

 一歩進んだVR体験が味わえるとしてオープン以降も人気を集めている。また日本のコンテンツとVRという異業種連携と最先端の技術を活用した取り組みが評価され、クールジャパン官民連携プラットフォーム主催の「クールジャパン・マッチングアワード2017」にてグランプリを受賞した。

 そんなVR ZONE SHINJUKUの秘話、そしてこれまでとこれからについて、プロジェクトのキーマンであるバンダイナムコエンターテインメント AM事業部 エグゼクティブプロデューサーの“コヤ所長”こと小山順一朗氏と、AM事業部 AMプロデュース1部 プロデュース4課 マネージャーの“タミヤ室長”こと田宮幸春氏に聞いた。

“コヤ所長”こと小山順一朗氏(左)と、“タミヤ室長”こと田宮幸春氏(右)
“コヤ所長”こと小山順一朗氏(左)と、“タミヤ室長”こと田宮幸春氏(右)

ワンダーエッグ時代を知る関係者を呼び寄せてスペシャルチームを結成

――お台場時代は「VRエンターテインメント研究施設」とうたい、VRエンタメの実験の場、そしてそれが一般にも通用することを証明するべく展開していたかと思います。VR ZONE SHINJUKUは次のステップになるかと思いますが、実際にいつぐらいから動いていて、そして今の場所に決まったのでしょうか。

小山氏 :お台場のVR ZONEが好評で反響も強かったことから、早い段階から次に向けた計画は進めていました。閉じるころ(2016年10月)には、今の場所でやることの最終承認が下りるかどうかぐらいの状態でした。

田宮氏 :まず今のVR ZONE SHINJUKUぐらいの規模感でやりたいという希望と、お台場からあまり間隔を開けず、1年以内にはオープンしたいという意向がありました。それで場所を探していたのですが、都内ではなかなかいい物件がなかったんです。それでもいくつか候補を検討していたなかで、今の場所が見つかったんです。

小山氏 :ただ、更地の状態になるということで、1年もしないうちに建物ごと新しく作る、というところは不安でした。

田宮氏 :決めた段階ではまだ建物が残っていて、本当に更地になるのかなと思うぐらいで。立地としては繁華街のど真ん中ですから魅力的ですけど、一番の障壁はイチから施設を建てることでした。期間限定となることもわかっていましたが、最終的には大下(バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長の大下聡氏)の判断で、東京のど真ん中で、フラグシップとしてふさわしい場所でやることの意義を重視したのが、今の場所になった決め手です。

――開設に向けた発表会のなかでは、みんなで楽しめるものを意図して用意したと説明されていましたが、それも早い段階からイメージされていたのでしょうか。

田宮氏 :施設のメッセージを「友達と遊びに来てほしい」とするのがいいと思ました。なので、新作は複数人で楽しめることを前提にしていました。

小山氏 :お台場時代のVRアクティビティは、基本的に1人での体験が中心でした。でも「高所恐怖SHOW」(極限度胸試し 高所恐怖SHOW)では、見ている人も含めて楽しんでいたんです。偶発的だったんですけどその様子を見るに、始めから一緒に楽しめるものをベースにすべきだと思ったんです。

田宮氏 :新作についてはある程度はテーマとなるものを考えていて、具体的な仕様としてまとまりつつあったのが、だいたい2016年の10月ぐらいですね。

小山氏 :「釣りVR」(釣りVR GIJIESTA)だけは少し早かったです。個人研究も兼ねてずいぶん長く作ってました。

――小山さんは、釣りに相当ハマっているとうかがってます。今後の展開にかかわらずVR空間での釣り体験を実現するべく動いていたということでしょうか。

小山氏 :その通りです(笑)。

――建物ごと作るとなると、コンテンツ制作だけではない苦労もあったかと思います。

小山氏 :テーマパーク規模の施設を更地の状態から作るのは、ナムコ・ワンダーエッグ(※1992年に二子玉川園で開園したテーマパーク。2000年に閉園)以来なんです。ナンジャタウン(※1996年に開園した、池袋のサンシャインシティにある屋内型テーマパーク。現在も運営中)は、いわば改装にあたるんですね。建物ごととなると自由度が高くなりすぎるし、自分たちとしても初めてなので、どうしていいかわからない。なので、ワンダーエッグに携わっていた当時の関係者を、同期の方を通じて呼び寄せてもらって、手伝っていただきました。

田宮氏 :もはや、あの方々を呼ばないとプロジェクトは成立しないという状態で。本当に職人さんと呼べるような、スペシャルチームを組んでいました。

小山氏 :ワンダーエッグの建設や現場などで指揮していた方々というのは、当時にしても40歳前後。そこから20年以上経過しているわけですから、もう60歳ぐらいになられているんです。退職して北海道に移住した方もいらっしゃったのですが、来ていただいてサポートしてくださいました。

――施設内は、プロジェクションマッピングを多用していて、先端技術を感じられるようになっています。

小山氏 :テーマパークという作りにはしなかったんです。テーマパークだとストーリーがあってその世界に入るという形になりますが、VRのショウルームのような雰囲気にしたかったところがあります。それでも、入ったときに幻想的な世界が広がっていて心が高揚するという感覚は欲しかったので、フロアには木のようなセンターツリーを立てたり、プロジェクションマッピングをふんだんに活用しました。壁の装飾を凝ったものにする案もあったのですが、期間限定の建物ですし、インタラクションのあるプロジェクションマッピングのほうがわくわくしてもらえるのではないかと。

センターツリー
センターツリー

――建物ごと作るとなると、VRアクティビティを前提にした作りができると思うので、配置などは融通がききそうですが。

小山氏 :いやいや、配置からして大変でしたね……。

田宮氏 :CAD図面を3Dで仮におこして、VRで見て雰囲気をつかむということもしました。

小山氏 :思いのほか設置スペースが足りなくて、2階建てにしないとお話にならないぐらいでしたから。VRアクティビティはこれからも増える予定で、そろそろ何かを押し出さないといけないぐらいです。当初お台場時代にあった「マックスボルテージ」や「トレインマスター」の設置も検討したのですが、キャッチコピーの「さあ、取り乱せ。」から少し外れたものでもあるので、泣く泣く見送りました。センターツリーも、配置スペースを考えるともう少し小さくても良かったですね。

田宮氏 :建物に関しては内部というよりも、むしろ外側に課題があると感じてます。建設する前に戻れるのなら、もっとガラス面を増やして、建物の中の状態が見えるようにしたいです。通りがかった人が面白そうと感じられるのは、VRアクティビティなどを体験している人の反応で、お台場時代は商業施設のなかということもあって見えていたんです。建物の外から見たときのありようは、あまり気が回らなかったんです。

「VR ZONE SHINJUKU」外観
「VR ZONE SHINJUKU」外観

小山氏 :外壁でプロジェクションマッピングを活用した映像も流していますが、パッと見て何の施設かはイメージしにくい。その状態でVRに興味が無い人を引きつけられないです。お台場時代は連日予約で埋まって、無断キャンセルもほとんどなかったので、外装には関係なく来ていただけるものと思ってしまったのと、コンテンツ作りに手一杯だったというのはあります。

田宮氏 :このあたりもやってみてわかることで、今後の展開では留意するところですね。

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