Uberのスパイ戦術を元従業員が暴露、対Waymo訴訟にも影響

Dara Kerr (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 吉武稔夫 (ガリレオ)2017年12月18日 13時35分

 プリペイド式の携帯電話から、秘密のサーバやメッセージが消えるアプリまで、37ページにわたって詳細を記した書簡が米国時間12月15日に公開された。Uberの内部情報というより、スパイ映画の「ボーン」シリーズに出てきそうな内容となっている。

 この書簡を書いたのは、Uber Technologiesの元従業員でグローバルインテリジェンス担当マネージャーを務めていたRichard Jacobs氏の弁護士だ。この「Jacobs書簡」が、Waymo対Uberの訴訟で焦点になっている。

 この裁判は12月初めに開始される予定だったが、Jacobs書簡が公開されたため2018年2月に延期された。米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で審理を担当するWilliam Alsup判事は11月末、Uberに関する別件の犯罪捜査を行っている米司法省から書簡について伝えられた。

 Alsup判事は11月、「裁判を延期せざるを得ない。なぜなら、もしこの書簡に書かれていることが半分でも真実である場合、Waymoを裁判に呼び出した上で書簡の内容を証明できなければ、極めて不公平なことになる」と述べていた。

 これまでJacobs書簡の全文を目にした人はごく少数に限られていた。書簡には、「違法な諜報活動」から、企業の記録の作成や抹消を隠ぺいする特定のデバイスの使用まで、さまざまな諜報活動をめぐる疑惑が詳細に記されているという。多くの箇所で手が加えられているとはいえ、企業秘密を入手して証拠を隠滅したとされるUberの戦術を垣間見ることができる。

 書簡には次のような記載がある。「これらの戦術は、匿名サーバで構成される分散アーキテクチャ、電気通信アーキテクチャ、出所不明のハードウェアやソフトウェアを通じて密かに実行された」

 書簡にはさらに、「今後予想される訴訟でデバイス、ドキュメント、通信手段が特定されるのを防ぐという具体的な意図を持って、一時的な通信や出所不明のデバイスを利用したり、弁護士と依頼者間の秘匿特権を乱用したりすること」に関して、Uberの従業員らがペンシルベニア州ピッツバーグを拠点とする同社の無人運転車チームの教育に当たったとある。

 書簡に書かれていることの多くは、WaymoとUberの訴訟とは関係がない。コロンビアでの麻薬対策作戦やイラクの戦地における2度の任務など、Jacob氏の職歴をたどっている。また、2017年3月に編成されたUberの対諜報チームについて説明し、「Uberに対する攻撃的な活動」を特定して「競合他社に反撃」するためのものだとしている。

 Jacobs氏はまた、Uberが「出所不明」のハードウェアを使用して、政治家、規制当局、捜査当局、タクシー会社、労働組合から収集した情報を保存していたと主張している。書簡には、「違法な通信傍受」「違法なハッキング」「スパイ行為」について詳細に記されている。

 Uberは、Jacobs氏が書簡を使って同社を恐喝しようとしたと述べている。Uberは、訴訟を避けるため8月に和解に合意し、他の費用と合わせてJacobs氏に450万ドル(約5億1000万円)を支払った。Jacobs書簡に記載されている主張の内容はまだ証明されていないが、Alsup判事は信ぴょう性のある内容とみて、Waymoは訴訟に関連する疑惑について調査する機会を与えられるべきだと考えているようだ。

 Uberの広報担当者は以下のようにコメントした。「当社は書簡に書かれたすべての主張の裏付けは取っておらず、重要なこととしてWaymoに関することについても裏付けは取れていない。当社の新たな経営陣は、当社が今後、自らの発想と技術に基づいて誠実かつ公正に競争していくことを明確にしている」

 Waymoの広報担当者は「UberはJacobs氏の書簡を不適切に隠ぺいした。このことは、同社が競争を有利に進め、不正行為の証拠を隠すためなら何でもするということを示している」と述べ、さらに「書簡とは別に、WaymoはUberが当社の企業秘密を盗んだことを示す重要な証拠を集めてきた(中略)当社は裁判を待ち望んでいる」とした。


Waymoは、Uberが自動運転技術を盗んだと主張している。この図は、Googleの自動運転に関する2014年9月の特許から。
提供:Google

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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