体温を熱源に自ら発電する。そんな斬新な機能を備えたスマートウォッチ「MATRIX PowerWatch」が、米国で話題を集めている。来日した開発元のスタートアップ、Matrix Industries社CEOのAkram Boukai氏とCTOのDouglas Tham氏に、どんな製品なのか取材した。
スマートフォンの通知を振動で伝えたり、運動や睡眠をトラッキングできたりと便利なウエアラブルデバイスだが、その多くは一般的な腕時計に比べてバッテリの駆動時間が短い。筆者が愛用する「Apple Watch」はほぼ毎日充電が必要だし、消費電力の少ないアクティビティトラッカーの「FitBit Alta HR」だって1週間に1度程度は充電しなければならない。問題は充電している間は、一切のトラッキングができないということ。歩数も心拍も記録のない空白の時間が生じてしまうというのが、これまでこれらのデバイスを利用するユーザーの大きな不満だった。
MATRIX PowerWatchはこの問題を解決べく、自ら発電する機能を備えた充電不要のスマートウォッチだ。同様の試みは光で充電する光発電エコ・ドライブを搭載したシチズンの「エコ・ドライブ Bluetooth」や、ソーラーパネルを搭載した「LunaR」などでも行われているが、MATRIX PowerWatchの発電方法はそのどれとも異なるユニークなものだ。
Boukai氏とTham氏はともに、カリフォルニア工科大学で高性能シリコンを用いた熱電変換を研究していた研究者だったが、その研究成果を実用化すべく6年前に起業した。熱電変換とは「温度差を有する材料の両端間には電位差(起電力)が生じる」という「ゼーベック効果」と呼ばれるしくみを利用し、熱を電気に変える技術だ。「起業から2年後、技術を応用する方法を模索していたときに、最も強く関心を示したのがウエアラブルメーカーだった」とTham氏。
なぜならウエアラブルデバイスには、冒頭にも紹介したバッテリに関する不満がくすぶっているからだ。そこで彼らは技術の応用分野を、ウエアラブルデバイスに定める。しかし「既存のメーカーでは、新しい技術はハイリスクだということでプロジェクトがまったく前進しなかった」(Tham氏)。「既存の企業がやらないのなら、いっそ自分達で作ろう」と思い立った彼らは、2016年11月にクラウドファンディングのindiegogoでキャンペーンをスタート。約165万ドルもの資金調達に成功し、MATRIX PowerWatchが誕生することになった。なお、このキャンペーンで、「米国に次いで多くの申し込みがあったのが日本だった」とBoukai氏はいう。
MATRIX PowerWatchは、省電力なモノクロのLCDメモリディスプレイを搭載。歩数や距離、カロリー、睡眠がトラッキングでき、50mの耐水圧性能を備える。Boukai氏によれば「動きだけではなく体温の変動も加味してカロリーを表示しているため、正確な消費カロリーが記録できる」とのこと。iOS、Android向けに専用のアプリケーションも提供していて、トラッキングされたデータがこのアプリで確認できる。カラーはシルバー、ブラックの2色。また、加えてスマートフォンからの各種通知を知らせる機能を搭載し、200m耐水圧性能を持つ新モデル「MATRIX PowerWatch X」もすでにリリースされている。現在、直販サイトで発売中で、日本へも発送可能だ。
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