体温で発電、充電不要に--スマートウォッチ「MATRIX PowerWatch」開発者に聞く - (page 2)

 開発にあたっては、「時計を身につけたときにどこで温度を得て、どのように温度差を生み出すかという設計はもちろん、素材の開発にもかなりの時間を割いた」とTham氏。「電力を高めるブースコンバーターもいちから開発し、より効率的な発電ができるように工夫した」という。

 MATRIX PowerWatchは彼らにとってまったく初めてのモノ作りだっただけに、「パーツ探しから品質の担保、ソフトウェア開発まで、プロトタイプが完成するまではとにかく何もかも大変だった」とBoukai氏。しかしその経験が「自分達のチームを大きく成長させてくれた」と語る。製品リリース後は、既存のウエアラブルメーカーやIoTセンサメーカーなどから、彼らの技術を活用したいというより具体的なオファーも舞い込んでいるという。


肌と密着する背面に、「ヒートパス」と呼ばれる熱を感知するセンサーがあり、ここの温度と気温との温度差で発電するしくみ

「MATRIX PowerWatch」の背面をサーモグラフィで捉えたもの。指の温度を効率的に取り込んでいること、裏側(ディスプレイ側)との温度差が大きいことがわかる

ディスプレイ外周に表示されるメモリで、今どれくらい発電できているかがわかる。温度差が大きいほど効率的に発電できる一方、体温と気温の温度差が少なくなった場合は、発電効率が落ちる

 彼ら自身もすでに、次期モデルの開発を進めている。現在リリースされている第一世代では、体温>気温という温度差を使って発電する設計のため、真夏など気温が体温を上回るケースでは発電ができないが、2018年にリリースを予定している第二世代では、「体温>気温、体温<気温のどちらでも発電が可能になる」とBoukai氏。「第二世代ではさらに発電効率を高めて、新たな機能も搭載する計画」(Tham氏)で、カラーディスプレイやGPS、さらにはLTE通信機能なども視野に入れているとのこと。

 また「実は人が発する熱の半分は頭部から発せられている」といい、これを利用すれば「スマートウォッチのほかにも、ヘッドホンのようなイヤラブル(ヒアラブル)デバイスやARグラス、スマートヘッドセット、さらに血圧計からペースメーカーまで、医療分野への応用も考えられる」とTham氏。ウエアラブル以外でも、たとえば室温と外気温の温度差を利用したビル管理など、さまざまな分野に応用できるという。

 自社でスマートウォッチ以外のデバイスを開発することは、今のところ考えていないが、「クラウドファンディングを使えば、リスクをとらずにコンシューマーのニーズに応える製品が作れるので、可能性はゼロではない」(Boukai氏)とのこと。まずはB to Bでこの技術を広げていき、将来的はあらゆる製品が充電不要となる「チャージレスな社会の実現」を目指したいという。彼らの技術が高度化し、発電効率が高まっていく一方で、各種チップが使用する電力の省電力化も進んでいくため、「両方のカーブがうまくあわされば、さまざまな製品でチャージレスが実現できるはず」とTham氏。面倒な充電から開放される日を、楽しみに待ちたい。

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