Z会グループは12月7日、スマホ学習塾「アオイゼミ」を運営する葵の全株式を11月30日付で取得し、完全子会社化したことを発表した。買収額は非公開。なお、葵の代表取締役である石井貴基氏をはじめ、経営陣や組織に変更はないという。
Z会ではこれまで、グループのZ会エデュースや栄光ゼミナールなどを通じて、通信教育、教室、書籍、模擬試験、アセスメントなどの幅広い教育サービスを、幼児から大学生・社会人まで幅広い年齢層に提供してきた。今後は、葵の持つオンライン学習塾のプラットフォームと運営ノウハウを活用し、グループにおけるEdTech分野を強化するとしている。
一方の葵は、2012年3月に創業し、オンライン学習塾サービスのアオイゼミや、少人数制の難関高校対策講座「サクラス」などの教育サービスを展開している。主力事業であるアオイゼミは、10名以上のプロの講師の生放送授業を毎日無料で視聴できる。コメントやスタンプで講師やほかの生徒と交流することも可能。また、有料で過去の授業動画4000本以上を視聴することもできる。
石井氏によれば、アオイゼミの会員数は40万人を超えており、有料サービスの新規課金者も前年比で300%増加するなど好調だという。広告によるプロモーションなどはしておらず、主に利用者のSNSなどを通じて口コミでユーザーが増えていると説明する。また、利用者の中から慶應大学や北海道大学、九州大学など、難関大学への合格者も生まれているそうだ。
約5年半かけて着実に成長してきたアオイゼミだが、一方で「より多くの中高生に使ってもらうためには新しい教材をゼロベースで作る必要があった」と石井氏は課題を述べる。しかし、自社のみで新たな教材を作るには時間やコストもかかることから、豊富なコンテンツや講師を抱えるZ会にコンタクトしたところ、グループ入りして事業を推進することが最適と判断し、今回の買収にいたったのだという。
「IPOしたいという気持ちもゼロではなかったが、(Z会グループに入り)より早いスピードでアオイゼミの機能やコンテンツを拡充することで、志望校に受かる人を一人でも増やすことが僕にとっての幸せだと思った。Z会はそれができる会社だし、やらせてくれる。業界トップになるために今回のM&Aで一気に時間を確保できた。逆にここからは言い訳ができない」(石井氏)。
Z会と葵はすでに、2018年春に公開予定の新規事業を共同で開発しているという。また、今後の連携の可能性として、Z会や栄光ゼミナールの教育コンテンツや講師とアオイゼミとのコラボレーションや、グループ内の送客なども検討してきたいとした。「オンライン学習サービスが塾業界を“壊す”とは思わない。それぞれの強みを生かし、両社でタッグを組んで次世代の学習サービスを作りたい」(石井氏)。
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