納期が大幅に短縮したiPhone X、HomePod発売延期の背景--Appleニュース一気読み

 11月3日に発売されたiPhone Xは初回分の予約以降、3〜4週間の納期が示されてきたが、先週2〜3週に、そして今週は1〜2週へと納期が短縮された。アナリストによるとiPhone Xが不人気なのではなく、生産状況が改善されてきていることの表れだと指摘する。

 しかし、中国でiPhoneを組み立てるFoxconnの工場では違法な労働が行われているとFinancial Timesが報じた。これによると、インターンとして仕事に従事していた高校生6人が、常態的に1日11時間労働を行っており、中国の法律では残業が違法であると指摘している。ある高校生は1日最大で1200台のiPhone Xカメラを組み立てたという。


 AppleとFoxconnはインターンの高校生の残業が発覚したことを受けて、是正措置をとることを認めている一方で、労働が強制ではなく、補償や手当が支給されていたことも確認したという。しかし高校生らは卒業許可を得るための3カ月の『労働体験』として労働を強制されたと主張している。そうした労働体験の学生は3000人に上る。

 今回の件はもう少し双方の主張を確認する必要があるが、Appleがこれまで採用してきた中国などの新興国での製造を中心としたビジネスモデルについて、再考する必要性は以前から指摘されてきた。中国での労働力の確保や賃金の高騰から、Appleはインドでの製造も開始している。またトランプ政権は、AppleがiPhoneを米国で製造することを望んでいる。

 グローバルでビジネスを行う上で、各国の法令に従うことはもちろんのこと、サプライチェーンや労働力の確保などを精密に設計する必要があり、同時にAppleは高い付加価値、すなわち製品1台あたりの大きな利益マージンの確保も意識していくことになる。

 例えばiPhoneは年間2億台以上が製造されるが、iPhone以外の製品も含め、発売当初は品薄状態に陥るほどの需要に支えられ、Appleのビジネスは成立している。しかしここ数年のiPadやAirPodsのように、需要に応えられず販売台数を伸ばせなかったカテゴリもあった。

 Appleはビジネス全体の6割以上を占めるiPhoneの製造に注力していく優先順位を付け、iPhone Xの供給も改善にこぎ着けようとしている。しかしその背後でフル回転状態の製造ラインから前述のような問題が指摘されるようになっている。

 ポイントは2つだ。引き続きiPhone Xのような販売価格が高い製品へのシフトを強め、販売台数の減少を十分補うことで、販売台数を追究しないモデルへと緩やかに転換すること。iPhoneのこれまでの平均販売額の最高は700ドル弱だったが、iPhone Xは999ドルもしくは1149ドルで、300〜470ドル高い価格だ。ただし、Appleはサービス部門の売上を倍増しようとしており、その成長には低価格のiPhoneを含む販売台数が重要な要素となり、矛盾をはらむ。

 もう1つは、ロボットによる組み立てを推し進めることだ。これは技術発展や手法開発が伴うことになるが、Appleがこれに取り組むことに大きな疑問はない。実際、既にAppleはiPhoneを分解し部材ごとにリサイクルの仕分けをするロボットLiamを披露している。ロボットによる製造の推進は、先進国に製造拠点を設置することも可能にする。もっとも、採用する労働力が限られることから、トランプ大統領にとっては不満な結果となる可能性もある。

「iPhone X」製造で違法労働、中国のFoxconn工場で--米報道(11/22)

中国政府からのSkype削除要請に応じる

 Appleは中国のApp StoreからSkyepアプリを削除した。これは中国政府による要請があり、Appleが応じたものだ。Appleによると、中国公安部から複数のVoIP(音声通話)アプリが法律に準拠していないとの通知を受けたためと説明している。

 現在中国では、Twitter、Facebook、Googleなどのアプリやサービスを利用することができず、今回MicrosoftのSkypeもこのリストに追加された。またAppleは中国国内のユーザー向けのiCloud等のサービスを稼動させるデータセンターを中国国内に設置する投資を発表しており、法令や当局からの指摘に敏感に反応していることがわかる。中国国内でビジネスができなくなることは、Appleにとっての世界第2の市場を失うことを意味する。

 データセンター設置に関連して、シリコンバレー企業から批判が上がっている中国の検閲にAppleが加担するのか?との指摘も出されているが、暗号化などを理由に、検閲への協力を行うわけではないとしている。

アップル、中国のApp Storeから「Skype」を削除--中国政府が要請(11/22)

HomePodは数年来開発が進められてきた?

 AppleはHomePodの発売を2017年12月から「2018年初頭」へと延期した。その背景を深読みすると、2つの背景が浮かび上がる。1つ目は、Appleの常套句である「最新ではなく最良の製品を目指す」こと。2つ目は、そもそもAppleは「スマートスピーカ」競争に興味が薄いということだ。


 Bloombergは11月21日に、HomePodに関する経緯を紹介する記事を掲載した。これによると、HomePodは2012年にMacの複数のオーディオエンジニアによるサイドプロジェクトとして出発したという。ちなみにiPhone 4SにSiriが搭載されたのは2011年のことだった。

 Amazonが2014年にAlexaを搭載したスマートスピーカ、Amazon Echoを発売したが、そのタイミングではHomePodは登場せず、開発は続行したというが、音声アシスタントよりも音質を重視する製品として開発が進められていった。その後プロジェクトは中止と再開を繰り返しながら、2017年6月のWWDC 2017での発表となったそうだ。

 HomePodは選曲などのためにSiriを採用するが、あくまでオーディオ製品という位置づけであることが強調されるのは、その開発の出発点に起因していると見てよいだろう。

 加えて、音声アシスタントデバイスを十分世の中に販売しているというAmazonとの違いも、スマートスピーカにこだわらない理由として挙げられる。Appleは現在販売するすべてのiPhoneにSiriを搭載し、Apple Watch、iPad、Mac、Apple TVにも搭載し、デバイスごとに機能の違いはあるが、質問や検索、文字入力などの体験は既に共通化されている。

 そのため、HomePodにもSiriは搭載されるが、現状はApple MusicやHomeKitデバイスの操作と限られた情報の検索程度で十分、と考えているのかもしれない。

アップルの「HomePod」、数年間で開発中止と再開を繰り返しか(11/22)

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