クックパッドは11月29日、今後の事業戦略に関する説明会において、動画事業への本格参入を発表した。12月から都内に料理動画の撮影・編集がワンストップでできる無料スタジオを開設するほか、全国の小売店チェーンと協業して食料品売場に料理動画コンテンツを配信するデジタルサイネージを展開するという。
説明会に登壇した同社代表執行役の岩田林平氏は、創業から20年を迎えるクックパッドの今後の方向性について、「これからの10年は日本だけでなく世界中の料理のつくり手にフォーカスし、料理に関するさまざまな課題を解決するサービスを目指す」と説明。これまでの成長を牽引してきた事業に加えて長期で新たな市場を創り、リードする存在になることを目指していく考えを明らかにした。「今後は、さらなる成長のための事業基盤づくりに再度注力する投資フェーズになる」(岩田氏)。
そして、動画事業をその中核に据え、ユーザーが能動的にレシピを検索する夕方の時間帯に多く利用されている既存コンテンツだけでなく、朝の通勤時や夜の就寝前といった、受動的にコンテンツ接触をする時間帯と相性のよい動画コンテンツを提供することで、ユーザーに新たなインスピレーションを提供したいと狙いを語った。
「動画コンテンツは、美味しさ、簡単さの表現に向いている。従来からあるテキストレシピの強みは維持しながら、動画コンテンツによってユーザーの料理頻度増加や料理人口の拡大が可能になる。また、検索頻度の高いユーザーにとっては、検索しない料理に出会うことでレパートリー拡大にもつながる。料理動画で圧倒的ナンバーワンのポジションを作っていきたい」(岩田氏)。
岩田氏は、動画事業での今後の目標について「料理動画数、動画広告、ユーザー課金で圧倒的ナンバーワンを目指す」と表明。そして、その基盤として約6000万人というユーザーのスケールメリットを生かしていく方針を説明した。
ところで、料理動画の分野ではすでに「kurashiru(クラシル)」や「DELISH KITCHE(デリッシュキッチン)」といった他社サービスがユーザー数を増やしているが、このタイミングでの本格参入について、岩田氏は「私たちが考えてきたのは、本当に料理の作り手が増える形を生み出せるかということ。料理の楽しさを感じてもらえるサービスのあり方を模索し、試行錯誤を徹底的に行ってきた」と説明した。
料理動画コンテンツに関しては、同社がFacebookページで行っている自社制作のコンテンツ展開に加え、レシピ制作者自身が調理の模様を収めた「1分動画」を制作して投稿する仕組みを新たに追加。ただし、「自宅で撮影・編集することは非常に困難。やってみたいが難しいというユーザーは多い」(岩田氏)ことから、今後全国にクックパッド会員向けの動画投稿用のキッチンスタジオを設置して、ユーザーに無償提供するという。
12月10日に最初の拠点を代官山にオープンし、今後全国に拡大していくとのこと。スタジオは予約制。専用アプリを使うことで、初心者でも簡単に動画の撮影・編集ができるという。現地スタッフには調理師免許、栄養士免許、店舗衛生管理などの資格・経験を持つ専門家も加える予定。スタジオで投稿された動画はクックパッドに投稿可能なほか、ユーザーのSNSなどにも投稿できるという。
岩田氏は、投稿される動画コンテンツの数値目標について「現段階では設けておらず、スタジオの活性化に注力したい。まずは(動画投稿への)モチベーションの高いユーザー層を巻き込んで動画投稿のトレンドを作る。数字の目標よりも、少人数でもいいので熱量の高いコミュニティを早期に作り上げたい」と語った。
なお、同社が一般ユーザー向けの動画スタジオを開設するのは初めての試みだが、設備投資やスタッフの人件費といったコストについては、スタジオを活用したPRイベントの開催やタイアップ動画などの広告事業の収益などで賄っていくとしている。「スタジオがコストセンターになることはない」(岩田氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」