KDDIは11月16日、法人向けのIoT通信サービス「KDDI IoTコネクト LPWA」と、デバイス管理サービス「KDDI IoTコネクト デバイス管理」を、2018年1月より提供すると発表した。低消費電力のIoT向け通信ネットワークであるLPWAを活用しているという。
同日の記者発表会で登壇した、KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏は、M2Mの時代からIoT分野のビジネスに取り組んできた15年間の実績を示すと共に、法人向けのIoT回線契約が2015年から2016年にかけて急速に伸びており、「申し込みベースでは指数関数的な伸びが始まっている」と説明する。
IoTのデバイス数は2020年に全世界で300億個に達するほか、国内でのIoT市場規模も2022年には3兆円に達するとの予測もあることから、KDDIとしてもIoTビジネスを一層強化していく方針だという。しかし、IoTの普及を進める上では、いくつかの壁があるとのこと。1つはデバイスを通信させるには電源の確保が必要なこと。そしてもう1つは、通信コストの負担が大きいことだ。
そこでKDDIでは、新たにIoT向けの通信サービスであるKDDI IoTコネクト LPWAを提供するに至ったと原田氏は説明する。そして、このサービスの特徴の1つは、携帯電話のネットワークを活用した「セルラーLPWA(Low Power Wide Area)」を用いていることだという。
同社の技術企画本部 技術企画部 グループリーダーである松ケ谷篤史氏によると、LPWAは省電力性に優れた通信方式だが、セルラーLPWAは携帯電話回線を用いており、「LoRaWAN」「SIGFOX」などの免許不要な周波数帯域を用いたLPWAよりも、広いエリアで利用できるメリットがあるという。LTEのネットワークを活用したLPWAには複数の方式が存在するが、今回のサービスに用いられる「LTE-M」は、通信速度が1Mbpsと比較的早く、なおかつハンドオーバーにも対応することから移動に強いのが特徴なのだそうだ。
松ケ谷氏によると、LTE-Mは基地局を探すために通信するタイミングが、通常のLTE(1.28秒)より長い(最大43分)、あるいは一時的に止めることで、消費電力を大幅に抑えられ、環境にもよるが単3乾電池2本で10年程度の長期間利用が可能だという。また基地局から同じデータを最大32回送信し、途中データが壊れた場合でも後から送られてきたデータを用いて修復・合成することで、見通しがきく場所では5km以上通信可能なエリアが広がるなど、通常のLTEよりも広範囲での通信が可能になるとのことだ。
すでにKDDIでは、福島県福島市と沖縄県那覇市で、700MHz帯を用いたLTE-Mの実証実験を実施しており、福島市での実験では、屋外のLTEエリア外で、LTE-Mによる接続ができることを確認。また福島市と那覇市の両方で、屋内での浸透実験を実施し、通常のLTEよりも奥の場所で通信できることを確認したという。なお、商用サービスでは800MHz帯を用いるとのことだ。
そしてもう1つ、KDDI IoTコネクト LPWAの特徴となっているのが料金だ。3種類の料金プランが用意されており、容量と回線数に応じて値段が決まってくるとのこと。月間10Kバイトまで利用できる「LPWA10」の場合、1〜1万回線の契約では1回線当たり月額100円かかるが、500万〜1000万回線を契約した場合、1回線当たり月額40円で利用できるという。
一度にそれだけ多くの契約をする企業があるのかという点が気になるところだが、「電気や水道などの社会インフラに関連する企業を想定している」と原田氏は答えており、低価格でコストが抑えられることをアピールすることで、大口顧客の獲得を進めていく考えを示した。一方で、IoTに初めて取り組むケースなど、POC(概念実証)での利用も多くなることが想定されることから、原田氏は「30台まで1万円で利用できるサービスなども検討している」と話した。
一方で、原田氏は15年間M2M・IoT向けのビジネスを展開してきた経験から、顧客はいくつかの課題とニーズを抱えていると話す。IoTでは使用する回線やデバイスの数が非常に多くなるため、それらを現地に赴いて1つずつ管理、設定、アップデートするとなると「かえって人件費の方が高くついてしまう」(原田氏)というのだ。
そこでKDDIでは、多数のIoT機器を集中管理できる「KDDI IoTコネクト デバイス管理」も同時に提供する。これを用いれば、ネットワークやデバイスの状態を管理したり、通信の頻度やタイミングなどを設定したり、ファームウェアをアップデートしたりといった操作を、すべてリモートでできるようになるという。
原田氏はKDDI IoTコネクト LPWAの活用事例として、日立システムズなどと取り組んでいるマンホールの防犯・安全対策ソリューションや、日油技研と取り組んでいる水位監視ソリューションなどを紹介。今後もIoTの利用は、産業機械や物流、ヘルスケアなどさまざまな分野で急速に伸びていくとの見解を示し、「IoTであらゆるモノがネットワークにつながる、便利な社会を目指したい」と、今回のサービスによるビジネス拡大に自信を見せた。
原田氏はさらに、「月額40円という低価格でサービスを提供することが、ビジネスにつながるのかということを必ず言われる」と話し、低価格の通信サービスでいかに収益を上げるかについても言及。KDDIではネットワークとデバイスだけでなく、「KDDI IoTクラウド Standard」「KDDI IoTクラウド Creator」など、クラウドとデータを活用したIoTサービスを強化していることから、それらを顧客に提供することで売上を高めていく考えを示した。
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