ハードウェアスタートアップといえば、スペックにこだわった商品やガジェット類を手がけるCerevoを連想する人も多いだろう。そんな中、作り手が見えるプロダクトを提供するスタートアップが登場した。CerevoからスピンオフしたJavaSparrowだ。
同社は、「てあと」「なじむ」「つながり」を重視した、少量生産のプロダクト開発に注力する。てあとは、ハンドメイドのように作った人の“手垢”がのこる、同じ商品ではありつつも、それぞれ個性を持つ商品を指す。なじむは、「コップを見ると取っ手を持つ」というように、ひと目で使い方がわかるようシンプルな使い勝手を目指すというもの。つながりは、例えばユーザーがプレゼントとして商品を渡す際にどういった使い方をしてもらえるかを意識し、愛着が持てるよう、使い込んで味が出るような商品を作りたいという想いがあるという。もちろん、ベースにはIoTなどの技術が盛り込まれている。
まず、第1弾としてシンプルなIoT照明「wesign」を開発。遠く離れた人の気配を光で感じ取れる照明で、本体はメインライトとサブライトで構成されている。例えば、単身赴任で離れて暮らす父親が帰宅してwesignをオンにすると、父親側のwesignはメインライトが点灯する。同時に、遠く住む家族には、父親が帰宅したことを知らせるかのように底面のサブライトが点灯する。逆に、家族側がメインライトを点灯させれば、父親側のwesignもサブライトが点灯する。光を使って相手の存在感をさりげなく伝える。
光源には、フィラメント型LEDを採用。LEDの特徴である長寿命を生かしつつ、電球のフィラメントと同じような暖かい光を目指した。また、本体で採用しているガラスは、職人による手作りのもので、それぞれの個体で風合いが若干異なるという。電源コードには、こたつの電源コードに見られたような昔ながらのスイッチがあり、メインライトのオンオフを操作できる。また、本体にはメインライトの光量を調節するトグルスイッチが用意されている。インターフェイスは至ってシンプルだ。
wesignは、幅広い層が扱えるよう、電源を接続して一度ネットワーク設定さえ完了すれば、電源スイッチのオンオフだけで利用できる。ただし、ネットワーク設定は若干難易度が高く、一度ブラウザからプライベートのIPアドレスをたたいて設定する必要がある。また、ネットワーク設定が難しいというユーザー向けに、初期設定を完了させた小型のWi-Fiルータをオプションで用意。ルータに有線で接続さえすればwesignが利用できるようになる。
JavaSparrowの創業者は、Cerevoの初期メンバーでありプログラマを担当していた國舛等志氏と、同社でデザイナーを務めていた稲田祐介氏の2名。國舛氏は、2009年の「Cerevo CAM」にも関わった“古株”だという。また、稲田氏はパナソニック出身で、「VIERA」や「DIGA」のほか、ICレコーダー、オーディオコンポなどのプロダクトデザインを手がけていた。両氏は、Cerevoでビデオスイッチャー「LiveWedge」など、映像機器の開発に携わっていた。
「なぜCerevoから独立したのか」という問いについて稲田氏は、「Cerevoが嫌だったからではなく、突き詰めていったらいろいろ自己責任で、ものづくりをしたくなった」と語る。Cerevoでは、メカニカルデザインから、設計、UI、工場との連携、梱包、マニュアル作成など、製品の”初めから最後まで”に携わることができ、デザインや設計など部門で分かれている大手企業では経験できないことを学べたという。ただし、ニッチを攻めることで有名なCerevoでも、1000個単位などある程度の数を見込んで開発するほか、ガジェット要素のあるプロダクトが中心だったため、少量生産で作り手の風合いを楽しむような製品の開発はなかなか難しかったようだ。
なお、國舛氏と稲田氏ともにハードウェアエンジニアとしての経験はなく、電気周りの実装はお互いに勉強しながら進めたという。少量生産のIoT商品を実現できた背景として、ハードウェア開発の敷居が下がってきた点を挙げる。國舛氏は、「基板を起こすには、素人目だと数百万円かかると思っていたが、今ではポケットマネーで完成品の基板が届く。インターネットには、回路設計に関する正確な情報もある」としたほか、メイカーブームにより、1個単位でパーツを仕入れられるようになったのも大きいと語る。
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