オーストラリアに拠点を置くソフトウェア企業のAtlassian(アトラシアン)は11月16日、タスク管理ツール「Trello」の日本市場参入を正式に表明。2018年2月から本格展開を開始すると発表した。
Trelloは、かんばん型タスク管理ツールとして2011年にリリースされ、2016年に日本語を含む21言語に対応。現在登録ユーザー数は2500万人で、PixarやGoogle、Adobeなどの企業も導入しているという。ソフトウェア会社のFog Creekが開発した後、2014年に独立しTrello Incが設立。2017年2月にアトラシアンが買収した。
特徴は無料で利用することができ、わかりやすくシンプルなツールであること。ボードにリストを作成しカードを足していくという、付せんをはり付けるような感覚で利用できる。ワークフローや新入社員向けのガイドといったビジネス的な用途から、飲食店情報を共有しあうナレッジの管理や趣味の用途まで幅広く活用できる。また「Power-Up」という形でSlackやSalesforceなどさまざまなアプリとの連携も可能となっている。より多くのPower-Upを使用する、あるいは細かい管理をするという場合には、有償プランで対応する。
日本市場への本格参入について、前述のように日本語の対応そのものは行われていたが、長期的な戦略のもと、アトラシアンの日本法人を通じて本格的なローカライズや日本語でのサポート、マーケティング施策を行う。またPower-UpについてもQiita Teamとの連携を発表。ほかにもChatworkといった日本のソフトウェアとの連携も進めていくという。
Trelloの日本市場正式参入にあわせて来日した、Frog Creekの共同創設者でもあり、現在はアトラシアンでTrelloチームを率いるMichael Pryor(マイケル・プライアー)氏に話を聞いた。
Trelloはもともとプライアー氏自身がソフトウェア会社で管理する立場であることから、部下がなにをしているかを理解するべく、すべての従業員のTodoリストを管理するソフトを思いついたことがベースにあるという。
一方でデベロッパ向けのタスク管理ツール、かんばん方式のツールは多数あったことから、それらと差別化する形で、マニュアルを読まなくても使い方を覚えることができ、それでいて深い機能も備える、多くの人々が活用できるサービスを意識して作られたという。
実際に活用のされ方として、およそ10%がプライベートのみ、40%が仕事のみで活用し、残りの50%が仕事とプライベートの両方で活用しているという。バックグラウンドの画像を変更できるなど、パーソナル化がしやすくビジネスツール感を薄めているのも特徴という。またアトラシアンに買収されるまで広告宣伝に費用をかけておらず、口コミでここまで広がったことも、わかりやすく使いやすいツールであることの裏返しであるという。
日本への本格展開は"長年のゴール”とも語る。日本語へ対応したことにより、日本においても活用しているユーザーや導入している企業が徐々に増え、英語圏以外の国ではトップクラスのユーザー数を抱えていたという。潜在的な需要があることは感じていながらも、当時はベンチャー企業ということもあり、開発リソースの関係から力を注げない状態が続いていたと振り返る。買収されたアトラシアンには、2013年から日本オフィスを開設して展開してきたノウハウがあり、日本でTrelloを本格展開できるチーム体制が構築できることから、今回の発表に至ったという。
こと日本では“働き方改革”の言葉に代表されるような、ワークスタイルに対する関心が高まっている。日本市場へ本格的に乗り出すのも、このような背景があることが後押ししたという。
「日本では残業や時間短縮ばかりに目がいきがちで、生産性の向上や仕事をすることの本当の価値を見つめ直す必要があると考えている。イノベーションが無ければ生産性は向上しない。また単純に時間を減らすだけでは、アウトプットできるものが減り、イノベーティブを生み出すきっかけも減る。イノベーティブを生み出す要素のひとつに、みんなが考えていることがわかるという意味での、オープンな会社であることが必要。そしてそれがリストアップされていると、たとえば会議の内容が濃くなると同時に短くなり、効率がよくなる。こういうところにTrelloのようなツールを使ってほしい」
Trelloの今後については、機能の拡充やPower-Upプラットフォームの充実を図るとともに、“知ってもらうこと”を挙げた。「アトラシアンのミッションは、すべてのチームの潜在性を発揮させること。この“すべて”が重要。口コミで広がってここまできたが、Trelloを必要としている人、使うべき人たちが知らないままでいるのも事実。そこを広めていきたい」と語った。
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