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米アクセラレータ「Techstars Music」が新プログラム始動--音楽×テックビジネス創出へ

加納恵 (編集部)2017年11月13日 11時41分
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 音楽×テック事業を手がけるスタートアップ支援プログラム「Techstars Music」が2018年度のプログラムをスタートする。企業パートナーには日本企業としては初めてレコチョクが参加。Sony MusicやWarner Music Groupらとともに、新たな音楽ビジネス創出の一翼を担う。Techstars Musicを立ち上げ、2017年度では11社のスタートアップに資金と支援をもたらした、Techstars MusicのManaging DirectorであるBob Moczydlowsky(ボブ・モクジドロウスキー)氏に、立ち上げのきっかけから、音楽ビジネスにおけるテクノロジの役割などを聞いた。


Techstars MusicのManaging DirectorであるBob Moczydlowsky氏

 Techstars Musicの母体は、2006年にアクセラレータプログラムをスタートしたTechstarsだ。設立から約10年が経過し、現在多くのアクセラレータが活動しているが、その特徴は手がけたスタートアップの"生存率”の高さ。支援したスタートアップのうち8割近くが現在も活動を続け、うち1割は売却に成功している。

 Techstarsのノウハウを受け継いだTechstars Musicは、5月に第1弾のプログラムを終えたばかり。参加した11社は合計で15億円以上の資金調達に成功している。Moczydlowsky氏は「第2回目のプログラムには、レコチョクなどの新たな企業パートナーを迎えた。こうしたことから考えても、いい兆候が出ている」と現状を分析する。

 Moczydlowsky氏によると、過去15年間で、音楽に特化した投資は減少傾向にあったという。しかしここ数年で状況が少しずつ変化。「音楽を聴く環境がストリーミングになったり、アーティストの発掘にSNSを利用したりと、業界を取り巻く環境がデジタルにシフトしていく中で変わってきつつある。今こそ投資するタイミング」と言い切る。

 中でも日本は「世界第2位の音楽市場ながら、投資やビジネスチャンスの実現には至っていない。今回はレコチョクという強力なパートナーを得ることができ、力をあわせて音楽業界が抱える問題に取り組むスタートアップをサポートしていきたい。新しい情報を得たり、Techstars自体の知名度を上げていくには、日本企業の協力が必須」と話す。

数々のスタートアップを成功に導いた“13週間”のプログラム

 Techstars Musicでは、7月に受付をスタートし、ピッチイベントを経て、2018年2月にファイナリスト10社を選出する。ファイナリストに選ばれたスタートアップは、米ロサンゼルスで3カ月間のプログラムを実施。オフィスが提供されるほか、Techstarsから12万ドルの投資を受ける。

 プログラムは3つのフェーズに分けられる。第1フェーズでは、メンターシップとしてトップ企業のエグゼクティブを紹介。人数は200名程度。音楽業界に限らず、ITやベンチャーキャピタルなど、業種も多岐にわたる。

 第2フェーズは実質的なプログラムとして、プロトタイプを作る、ケーススタディを行うといった具体的なビジネスのサポート。第3フェーズでは、2018年5月に開かれるデモデイに向けてプレゼン力を高める。このデモデイでさまざまな投資家からの資金調達を得るためだ。

 「3カ月という期間を短いと感じる人もいるかもしれない。けれど3カ月=13週間というスケジュールはTechstarsCEOのDavid(David Cohen氏)が、約10年間かけて編み出したもの。さまざまなプログラムを試しながら、もっとも最適なプログラムが13週間だと導き出した」(Moczydlowsky氏)とのこと。

 さらにMoczydlowsky氏は「3カ月では時間が足りないことは事実。だからこそ、ファイナリストたちは自分の悪い部分、修正すべき部分を見つめ直し、必死になってブラッシュアップする。オフィスには同じく3カ月間という限られた時間で努力する仲間がいる。その中でファイナリスト同士も協力しあったり、アイデアを出しあったりする環境が自然にできる」と、ワークスペースをシェアするメリットを説明した。

 Techstarsがスタートアップに求めるのはチーム力だ。プレゼンテーションでは「このチームならば問題を解決できるか、乗り越えていけるか、という部分に注目している。そのためメンバーひとりひとりが過去に何を作ったか、どういうスキルをもっているか、何がユニークなのかを見るようにしている。場合によってはプロダクトやサービスのコンセプトよりも、チームの人間力を買っている」と強調する。

 「応募してくるスタートアップはほとんどがシード期で、形になったサービスやプロダクトはあっても、問題を解決していくなかで、その中身は変化するはず。しかし、チームの人間力は変わらない。大事なのは問題を解決する力があるかないか。なぜなら、彼らが解決する問題が大きければ大きいほどリターンも大きくなるはずで、それによって投資の仕方も変わってくる。いいチームは、何度でも失敗を乗り越えて、チャレンジし続けるハングリー精神が必ずある」と続ける。

最大限の力が発揮できる最高のオフィスを提供する

 3カ月という短期間でいくつもの問題や失敗を乗り越える。スタートアップ側からみれば、かなり困難な挑戦かもしれないが、そこで得られるものは大きい。「第1フェーズで出会えるパートナー企業は、彼らがふつうでは会えないほどのエグゼクティブたちで、そこから直接アドバイスが受けられる。何よりも実際の業界に関わっているプロたちのサポートは、プロジェクトを大きく促進させる力になる。また、このプログラムを経ることで、ベンチャー側、投資家側に加えて、音楽業界側から見たサービスやプロダクトの検証ができる。そこにほかにはない価値がある」とMoczydlowsky氏はプログラムの手法を明かした。

 Techstarsが、スタートアップと関係を構築する上で実践するのは「Give First」という考え方だ。ファイナリストに選ばれた10社には、とにかくなんでも協力して、オフィスも提供する。「単なるオフィスではなく、安心して居心地が良いオフィスを提供することが大事。そこでは、あらゆるメンターシップを受けられる。ファイナリストには実際に13週間はロサンゼルスに暮らしてもらうため、彼らの住居からも遠くなく、おいしいコーヒーがあるとさらにいい(笑)」とMoczydlowsky氏は、オフィス環境の重要性を話す。


Techstars Music第1回プログラムファイナリストたちのオフィスの様子

 「いいリターンを得るためには、スタートアップが成功することが大事。成功するために最高の環境を整える」のだという。

 3カ月のプログラム終了後も、Techstarsでは毎年卒業したスタートアップを一堂に集め、2日間のサポート活動を実施する。新規事業の相談に乗ることはもちろん、さらに多くの企業を紹介する、投資家につなげるといった活動をしているという。

 「ファイナリストに残ったスタートアップは一生サポートしていく。Techstars内には法務やM&Aなどの部署もあるので、そこも活用してもらいたい」とバックアップ体制は万全だ。

 Moczydlowsky氏はTwitterの音楽部門立ち上げなど、自らもスタートアップの経験を持つ。「スタートアップから資金調達できたという報告を受けるのは、本当に嬉しい出来事。それ以上に嬉しいのは、問題解決ができたとき。もっと将来的には、卒業したスタートアップが手がけるサービスやプロダクトが、誰もが知っているようなものになって『これに自分は協力している』といえること。そう考えながらスタートアップ支援に取り組んでいる」と話した。

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