朝日インタラクティブは9月26日、リブセンスと共催で成長を遂げる不動産テック市場の最新動向などを紹介するイベント「CNET Japan Conference 2017 テクノロジが加速させる“新しい街・住まい”づくり」を開催。「地理空間データが変える街選び -データ活用が照らす不動産仲介の未来-」と題したセッションでは、リブセンスがアジア航測と共同開発した住環境データ提供サービス「IESHIL CONNECT(β版)」(イエシルコネクト)について紹介された。
今回発表されたIESHIL CONNECTは、地域の災害リスクや不動産物件の住環境データを物件ごとに検索・閲覧できる不動産会社向けの営業ツール。ビッグデータと人工知能を活用して不動産の価値を評価するサービス「IESHIL」が保有する約27万棟の物件データと、アジア航測が保有する膨大な地形分析データや災害シミュレーションのノウハウを活用し、物件が所在するエリアの総合的なリスク評価を可視化するのが狙いだ。セッションに登壇した、アジア航測 社会基盤システム開発センター G空間Biz推進部 事業開発室の角田明宝氏、IESHILを運営するリブセンス 不動産ユニットの竹馬力氏と稲垣景子氏が、サービスの背景や狙いについて語った。
まずは、アジア航測の角田氏が、IESHIL CONNECTで大きな役割を果たしている航測技術について説明した。「航測」とは読んで字のごとく「航空機で測量すること」を意味する。アジア航測はこの市場で60年以上に渡る歴史を持つ最大手企業で、保有する自社航空機によって空から地形などの空間情報を測量し、都市計画や建物の建築計画、防災シミュレーションに関するコンサルティングや、自然災害時の被害把握などの支援を行ってきた。
角田氏は、具体的に同社でどのような測量を行っているのかについて説明。航空写真を撮影するデジタル航空測量カメラ、5つのレンズで異なった角度から同時撮影することで都市の3Dモデルを作成することができるオブリークカメラ、空中からレーザーを照射して地形を緻密に測量することができる航空レーザーなどの機材を航空機に搭載して、地形や建物の高さや形を正確に測量することができるという。リアルな街の形を正確なデータにもとづいてバーチャルに再現することができるのだ。
こうして収集したデータの活用事例として角田氏が紹介したのは、災害シミュレーションだ。地形を正確に計測しているため、津波や洪水などが発生した場合の浸水リスクを正確にシミュレーションでき、リアルな都市モデルに反映することで住民が分かりやすい情報になるという。また、大災害が発生した場合には被災地の撮影を自主的に実施し、被害の実態把握に協力しているという。「熊本地震が発生した際にはすぐに飛行機を飛ばして被災地の3Dモデリングを行い、状況把握および緊急対策を支援し、WEBでも公開した」(角田氏)。
角田氏は、今回IESHIL CONNECTに提供したデータについて同社が保有しているデータに加えて、一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運営している「G空間情報センター」のオープンデータを使用したと説明。その理由について「無料で使用できる点、2次利用が可能である点が大きい。また災害等に関するシミュレーションは人命に関わることなので、信頼性の高い自治体や官公庁のデータを使用することにした」と語った。
今回、IESHIL CONNECTで提供されるデータの範囲は首都圏1都3県となる。開発にあたって苦労した点について、角田氏は「首都圏1都3県のデータを約8億ポイントに及ぶ5メートル間隔のポイントで作成し、1つのポイントにつき、それぞれ地震時の予測震度、浸水リスクなどを載せてIESHIL CONNECTに提供させてもらった」と説明。膨大かつ精緻な測量データがIESHIL CONNECTの災害リスク診断などサービスの根幹に貢献している点を強調した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス