「『iPhone』を作っていた時は、当時使っていた携帯電話に嫌気がさしていたことがモチベーションの大部分だった」。Appleの最高デザイン責任者、Jonathan Ive氏は米国時間10月6日に開催された「The New Yorker TechFest 2017」のインタビューでこう語った。Ive氏は、「iPod」、iPhone、「iPad」など、最もよく知られるApple製品のデザインを手がけた人物だが、公開インタビューに応じるのはまれである。
インタビュアーに説明を求められたIve氏は、当時普及していた携帯電話について「出来損ないだった。(中略)便利さをうたっていたが熱意に欠けていたように思えた。今もとがめずにいられない。(ユーザーである)私たちは大切な存在で、少なくとも真摯な努力に値する存在だと思っている」と答えた。
Ive氏はこのインタビューで、Appleと自身の名声を象徴する、より高い水準を追求することについて繰り返し触れた。
「世界最高のシリコンチップデザイナーの一人と2時間でも話すことができれば、私はこの上なく幸せだ」とIve氏は語った。「私たちを結びつけるのは、好奇心と、素晴らしいものを真に追求する感覚のようなものだ。それは成功しないかもしれないし、実際できないことが多いが、心から何かをしたいと思う感覚によって、物事はとても良くなる」
以下にインタビューの一部を抜粋する。
「そんな経験をしたのは後にも先にもなかったが、私たちは初対面で、衝撃的にピンときた。すぐに理解し合うことができた」(Ive氏)
Ive氏とJobs氏は親しい友人となり、毎日ランチを一緒にとり、ほぼ毎日共に働いた。その一方、当時Appleはそれほど良くない製品を作っていたために、Jobs氏は当初、「デザインの責任者として、君はまったくの無能だ」とIve氏に向かって言ったという。
Ive氏によると、Appleは当時、Jobs氏の非難よりもはるかに悪い状況にあった。「この会社に多くを注いでいたし、会社があらぬ方向へ流されていくのを見るのは胸が痛んだ」と同氏は語った。
Ive氏はクリエイティブなプロセスでアイデアが生まれる瞬間について、このように語った。「いつも最初はごく一時的な根拠のない思いつきとして生まれる。(中略)とても漠然としているため、その考えを試したり説明したり、人に伝えたりする能力が非常に重要だ。(中略)その根拠のない思いつきを、力のあるものに変えていけると思えるときが大好きだ。そのプロセスに携わることができることに、本当に感謝している」
Ive氏はJobs氏の並外れた集中力に触れ、同氏から多くを学んだと語った。「彼ほどの集中力を持っている人に出会ったことがない。(中略)集中するということは、自分が大切にしていることも諦めるということであり、そのことが大きな損失になることも多い。彼はこの点で卓越した能力を持っていた」。Ive氏は、自身も何度かこのような集中した状態に至ったことがあるといい、それを維持するには大変な労力を要し、消耗するとした。「そして、私たちが成し遂げてきたことすべてにおいて、このような集中力が必要だった」
自分の製品が人々を結びつけると、Ive氏は「喜び」を感じるという。だがそれと同時に、他のツールと同じく、こうしたガジェットは誤った方法で使用されることもある。潜在的な例を問われたIve氏は、「おそらく、絶えず使い続けてしまうことだと思う。(中略)これに限ったことではないが、適切なバランスを見つけるために、私たちは少しばかり自制心を鍛えないといけない」と語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」