LINEは8月23日、同社の独自AI「Clova」を搭載したスマートスピーカ「WAVE」の先行体験版の提供を開始した。秋には正式版を販売する予定。
WAVEは、「Clova」と話しかけることで、音声会話によるコミュニケーションがとれるスマートスピーカ。「LINEニュース」と連携した最新ニュースを教えてくれるほか、「LINE MUSIC」が提供する4000万曲以上の楽曲を再生でき、その時の雰囲気やユーザーの好みに合った楽曲をレコメンドしてくれる。また、天気予報やアラーム設定などの機能も利用できる。
今後はアップデートによって、メッセージアプリ「LINE」とも連携し、新着トークの通知や内容の読み上げ、トークの返信もすべて音声でコントロールできるようにする。また、「LINEショッピング」やフードデリバリー「LINE デリマ」、チャットボットプラットフォームなど、LINE内外のサービスと連携する予定だ。
先行体験版の発売から1カ月が経ったが、利用者からの反響はどうか。また、秋以降に日本に上陸予定のAmazonやGoogleのスマートスピーカと、いかに差別化するのか。LINEの「Data Labs」「Clova Center」を統括する橋本泰一氏と、同社上級執行役員CTOの朴・イビン氏に話を聞いた。
――WAVEの利用者からの反響はいかがでしょうか。
橋本氏 : 先行体験版なので性能面やできることは限られていますが、それでも「未来感がある」と感じていただけているようです。また、当初想定していたユーザーは新しいもの好きの一人暮らしの男性などだったのですが、実際にはITに詳しくない購入者の奥さんやお子さんが非常に楽しんで日常的に使われていることがわかりました。特に音楽機能をご利用いただいています。これは正式版の販売に向けて参考になりました。
――実は私の自宅でも、家族の方がWAVEによく話しかけて楽しんでいました。音声という特別な操作方法を覚える必要のないインターフェースは、利用者のハードルを下げているのでしょうね。Clovaの開発において最も苦労した点や、こだわった点はどこでしょう。
橋本氏 : やはり音楽ですね。歌手名や曲名などを呼びかけた時に、正しく認識できるように学習させていくところに一番苦労しました。精度については、ユーザーがWAVEを使えば使うほどレコメンドの精度も上がっていきます。
また、開発において注意しているのが、Clovaを「仮想的なエージェント」だと意識することです。他社のAIプロダクトの中には、ユーザーの意見をそのまま学習して、政治や性の話に対して批判をするといったことがありました。Clovaでは文化などにはなるべく触れることのないように、チューニングをしています。
――WAVEを使っていて気になったのが、話しかけてから返答までの時間(約4〜5秒)が少し遅く感じることや、たまに誤認識を起こすことです。また、女性より男性の声の方が認識されやすく感じました。これはハードウェアに依存した問題ではなく、ソフトウェア(Clova)の更新によって改善されるのでしょうか。
橋本氏 : 認識の精度や返答速度についてはユーザーの皆様からもご意見をいただいておりまして、いままさに改善を進めているところです。また、おっしゃる通り男性の声の方が認識しやすく、女性や子どもの声はトーン的に拾いきれていないところがあります。
これらはハードウェアではなくソフトウェアによって改善できます。まだまだチューニングしきれていないところがありますので、さらにパフォーマンスも上げていきます。そういったところも含めて、先行体験版の利用者の皆様には、Clovaが徐々に良くなっていくところを体験していただきたいですね。
――「Amazon Echo」や「Google Home」など、AIを搭載したスマートスピーカが年内に日本に上陸するといわれています。勝敗をわけるポイントはどこになると考えますか。また、その上でLINEのClovaならではの強みは何でしょう。
イビン氏 : 向かっている方向性は、各社そこまで違わないと思っています。その中で、重要になることは2つあると考えます。1つ目が私たちの技術力をさらに上げること。2つ目が日本のあらゆるサードパーティと早く連携してエコシステムを構築することです。
アップルの(音声エージェントの)「Siri」も最初はそこまで品質が良くありませんでしたよね。ユーザーのフィードバックデータをもとに、時間をかけてチューニングして質を上げていったのです。ですので、各社が長い時間をかけて改善をしていくなかで、いかにその時間を短縮できるかが大切です。
橋本氏 : LINEならではというところでは、(メッセージアプリによって培った)コミュニケーションの部分は非常に強みになると思っています。人々がコミュニケーションをするうえで何が重要になるのか、会話を促進するにはどうすればいいかといったことは、他社よりも多くのことを経験していると思います。AIプラットフォームは、単純に音声によって何かを実行するのではなくエージェントと人との対話ですので、コミュニケーションの部分で、これまでの経験を生かしていければと思います。
正直、僕らにとってもこのプロダクトが100%満足いくものではありませんし、まだ未完成です。ただ、お約束できるのは、今後も非常に速いスピードで成長させ、よりよいものにしていきますので、ユーザーの皆様には、実際に使いながらそれを実感していただきたいですね。
――話は変わりますが、2018年春に京都に新たな開発拠点を設けることを発表しました。この狙いを教えてください。
イビン氏 : いま我々がやろうとしていることは非常に多いのですが、それと同時に次にやるべきことも進めなければいけません。そのためにはより多くのエンジニアが必要になりますし、彼らが仕事をする環境を作る必要があります。(京都の開発拠点では)地方のエンジニアの採用も目的にしていますが、混雑している東京ではなく京都で働きたいという外国人も多いので、日本にこだわらずさまざまな国からエンジニアを採用する予定です。
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