タイトルからは、デザイン関連などのクリエイティブな仕事をしている人向けの本なのだろうな、と思うかもしれない。だが実際には、お客様と対話しながら、最適な形を創り上げて、その成果物を世に出していくような仕事、つまり、あらゆる種類の「仕事をしている人」に参考になる話とも言える。
本書は、木村俊介氏の聞き書きというスタイルで、寄藤文平氏の体験や仕事に対する考え方、デザインや装丁の仕事の実際などが淡々とつづられている。寄藤文平氏が手がけたデザインや装丁は、それを見れば分かる人も多いだろう。刺激的にも感じられる数々の仕事の話は、舞台の裏側を垣間見ているようで興味深いものではある。もちろん、そこを面白いと感じる人も多いだろう。だが、ときおり出てくる「スランプのときにどうするか」といったことや、「仕事を続けていく上で必要な基礎的なこと」などの話は、まったく異なる業種で働いている人も、きっと共感するはずだ。
違う仕事をしている人の話を知ることが、新しい視点から、自分を取り巻く環境を見直すきっかけにもなる。そういう意味で、「自分の好きな仕事とは何か」ということで悩んでいる人や、転職や独立を考えているという人にプレゼントしたい1冊だ。
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