スマートフォンネイティブが見ている世界

「インスタ映え」を求める女子高生のビジュアル信仰 - (page 2)

現実を盛って「偽りのリア充」を演出

 Instagramで“盛る”のは、周囲の人たちにリア充と思われたいためだ。タイムカレントの「SNS投稿のリア充疲れ」&「リア充盛り」に関する調査結果(2016年3月)によると、自分自身の状況を投稿した際に実際より盛った投稿をしたことがある人は、男性63.4%、女性44.5%もいる。SNSでつながる友だちや知り合いのリア充投稿を見てイラッとすることがある人は62.4%に上るにも関わらず、自分も張り合って実際よりも盛った投稿をしている状態なのだ。

 現実の生活は必ずしも華やかな場面ばかりではなく、多少盛ったくらいではインスタ映えが難しいこともある。そこで、現実の方を偽ったり、演出したりするケースも増えている。たとえば、たくさんの友人がいるように演出する「リア充代行サービス」がある。役者を雇って友人を演じさせ、リア充写真を撮影してInstagramに投稿するというわけだ。ある代行会社では月に40件ほどの依頼があるという。

 また、あるテレビ番組でモデルの西上まなみさんは、「おしゃれカフェに友だちと2人で来ているように見せるために、1人で来ているのに食事を2人分頼んだ」ことを告白。Instagram発タレントのGENKINGさんも、投稿するためだけにブランド物を買いすぐに売って借金まみれだったことを告白している。このように、現実を偽って見栄を張っているケースは少なくない。

 ある男子高校生は、自分が盛っている理由について「友だちの数」と答える。「フォロ爆でフォロワーの数を増やしている。フォロワーの数が多いとクラスの友だちに尊敬されるから」と言う。「クラスの友だちに、『有名人で友だちも多いんだね』と言われて嬉しかった」。

 ある女子高生は、「友だちが彼氏がいるっぽい写真を撮って公開している」という。「わざとカップが2つ並ぶ写真を撮ったり、男の腕を入れた写真を投稿したりしている。だから絶対彼氏がいると思っていたら、『あれ弟だよ』と言われて驚いた」という。

 さらに、自分が偽ったことは「やっぱりビジュアルかな」という。「加工アプリ3つくらい使ってプリクラの写真を盛ってるから、元の顔はわからないと思う。でも、SNSの知り合いには『可愛いね』と言われるからやめられない」。

SNSで盛っても現実は変わらない

 SNSで承認されると喜びを感じ、その行為は中毒性が高いことはよく知られている。承認欲求は誰にでもあることなので、それ自体が悪いわけではない。しかし、現実を偽ってまでSNS内で承認されても、自分自身が承認されたわけではない。現実は何も変わらないのだ。

 高校生は将来を模索すべき大切なときだ。SNSに時間や気力を使いすぎると、肝心の現実のほうが疎かになってしまう危険性がある。SNSも目的を持ってツールとして使いこなすのであればいいが、無目的にただ承認を求めて利用するのでは何も得られないだろう。

 英王立公衆衛生協会(RSPH)は2017年5月、SNSの中でInstagramが一番若者の心の健康に悪影響を与えることがわかったと発表している。Instagramは、若者の心に与える不安感や孤独感、いじめ、外見への劣等感などの否定的な影響が他のSNSより高いという。

 Instagramにはキラキラしたリア充投稿があふれているため、自分と比較して劣等感や孤独感を感じる人は多いだろう。しかし、この記事で述べてきたように、Instagramは必ずしも現実を反映したものではなく、現実を偽ったり盛ったりしていることが多いものだ。保護者は、子どもがInstagramを過剰に利用していたら、Instagramには演出した盛ったものがあふれており必ずしも現実ではないことを教えてあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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