輸送トラックの空車情報をリアルタイムに把握できる物流情報のオープンプラットフォーム「docomap JAPAN」が、11月1日よりサービスを開始する。
産業インフラとしての物流は、コスト負担増やドライバー不足などによる危機に追い込まれている。特に中長距離トラックが荷物を届けた後、空のまま戻らねばならない空車回送は平均すると約30%を占めており、社会問題にもなっている。
空車マッチングを行うサービスはすでに存在するが、利用手数料(運賃の3〜20%)が必要となる。国内には6万社を越える運送会社があるが、99%が零細企業で横のつながりも薄く、デジタル化もされていないため、マッチングの仕組みそのものにも課題があった。
業界全体の構造的問題を解決するには、単独事業者で取り組むのは難しい。そこで、業界でそれぞれ実績を持つ、富士運輸、トラボックス、イーソーコ、NTTドコモの4社がタッグを組み、1年前から課題解決に取り組んできた。
まずは空車情報の共有化にフォーカスし、トラック運送会社、倉庫管理会社、荷主といった配送に関わるプレーヤーが、各自でサービスを利用できるオープンプラットフォームを構築。サービス窓口として富士運輸が設立した「ドコマップジャパン」を加えた5社が協業し、“強い物流”の実現を目指す。
ドコモのGPS端末などをベースに富士運輸が開発した車両位置情報確認システム「DoCoMAP」を利用し、トラックのIoT化を進める。手のひらに乗るほどコンパクトなGPS端末を取り付けるだけで、どんなサイズのトラックにも簡単に搭載できるのがポイントだ。
オンライン地図はGoogle Mapがベースで、PC、タブレット、スマホのブラウザから情報にアクセスでき、サイズごとに色分けされたトラックのアイコンをクリックすると配送状況や連絡先がポップアップで表示される。NEXCOが提供するリアルタイム交通情報とも連携させ、渋滞もひと目でわかるなど、実証実験を重ねて使いやすいユーザーインターフェースに仕上げた。
サービスを利用するには、DoCoMAP使用料として月額1480円(税抜)が必要だが、マッチング手数料は無料で初期費用も徴収しない。富士運輸の取締役を務める、ドコマップジャパンの高林治幸社長は「社会貢献と考えて極力料金を下げることで、より多くのプレーヤー参加を目指す」と言う。
また、運送会社の5社に1社が利用するトラボックスの運送会社向けサービス「トラまっぷ」ともシステム連携し、スケーラビリティを図る。なお、サービス登録台数は2年間で新規に3万台を目標としている。
さらに将来的には、同サービスで蓄積されたデータを活用したAI技術の導入による、マッチングの自動化や予測といった展開も視野に入れている。NTTドコモの紀伊肇関西支社長は実現時期として「2020年の実現を目指す5G技術と同時期までを想定している」とコメント。あわせてIoTを活用した荷物管理まで応用もできるのではないかとしている。
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