GMOインターネットは9月13日、9月7日に発表した仮想通貨のマイニング事業について説明会を開催した。
仮想通貨は、日本円など中央集権型の法定通貨と異なり、管理者がいない非中央集権型のネットワークをベースにしている。法定通貨は、国家が信用の源泉であるのに対し、仮想通貨ではブロックチェーンが信頼性を担保する。そのブロックチェーン上で、トランザクションが正確に実施されたかを計算し、取引を承認するのがマイニングと呼ばれる作業だ。マイナー(採掘者)は、膨大な計算リソースをもとに暗号解読を進め、ブロックへの追記処理を完了させたマイナーに報酬としてビットコインが付与される。
GMOインターネット常務取締役兼次世代システム研究室長の堀内敏明氏は、マイニングはくじ引きで例えることができると説明する。1枚だけ当たりが存在する大量のくじの中から、最初に当たりを見つけるまでそれぞれのマイナーがくじを引く作業に近いという。最初に当たりを見つけるには高速にくじを引く力(=計算リソース)が必要であり、ビットコインのシステムではおおよそ10分に1回当たりが出るように設計されている。1回の算出で12.5ビットコインが付与され、1日あたり約144回(1800ビットコイン)ブロックが生成されることになる。
すにで、多くのユーザーが参入しているマイニングだが、GMOの優位性はどういったところにあるのだろうか。堀内氏は、パートナー企業とともに開発したマイニング専用の半導体(ASIC)と、十数年間にわたり手掛けてきたサーバ事業で培ったナレッジだと話す。
マイニングには、高速な計算処理が可能なGPUのほか、より計算速度を向上させるためにマイニング専用に設計されたASICを使用する(Bitmainなど中国の大手マイナーは専用のASICを開発している)。GMOでは、共同開発した専用ASICを採用。マイニング用ASICでは初となる7nmの最先端プロセス技術を取り入れ、競合のASIC製品と比べて2倍以上の省電力性能を実現したという。
ASICはすでに論理設計が終了している段階。1チップあたり10TH/sのマイニング性能を持ち、消費電力は1チップあたり500W以下を目指す。SHA256を採用したコインの採掘に対応し、当面はビットコインとビットコインキャッシュをマイニングする予定だという。
同社では、サーバ運用のナレッジを生かし、北欧に「マイニングセンター」を設立する計画。2018年上半期での稼働開始を予定しており、500PH/sの演算性能を見込む。また、再生可能エネルギーの余剰電力を使い、日本の3分の1という安価な電気代、気温が低いという北欧の地の利を生かした冷却システムに加え、既存製品の半分以下の電力で同等性能を実現する専用ASICにより低コスト運用を目指す。採掘したビットコインは、仮想通貨取引所を運営するGMOコインに供給するほか、同社のグループ会社が持つFX取引のビッグデータ解析などを生かし、マイニングしたコインの運用も手掛ける。
同社では、3種類のマイニングソリューションを提供する。マイニングセンターによる自社採掘のほか、計算リソースをユーザーに貸し出すクラウドマイニング事業、マイニングセンターで使用しているものと同性能のASICを搭載したボードも一般販売する。また、単体ではマイニングの成功確率に限界があるため、クラウドマイニング含め、複数の小規模リソースを束ねて一つの巨大な計算リソースに見立てる「GMOマイニングプール(仮)」を設置予定。これにより個人でも安定した収益が見込めるとしている。
GMOインターネット代表取締役会長兼社長の熊谷正寿氏は、マイニングセンターによる自社採掘を「旧財閥グループ戦略」、ボードの販売を「リーバイス戦略」とし、自ら鉱山を掘ることで母体を確立した旧財閥と、ゴールドラッシュ時に作業着の販売で成功したリーバイスの戦略を同時に実行すると説明する。
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