不動産×クラウドがもたらしたストック型ビジネスの新たな未来 - (page 2)

ニーズありきで生まれたクラウドという唯一無二の選択肢

--パッケージではなくクラウドを採用したのもこうした理由からなのでしょうか。

 サービス開始は2000年ですから、まだクラウドという言葉すらなかった時代です。私たちのお客様は、複数の物件を所有しています。その物件は日本各地はもちろん、海外など、あらゆる地域に分散している。物件を管理、運営するには、所有者だけではなく仲介会社や管理会社など、多くの人が関わっています。

 ここまで考えた時に、クラウド以外の選択肢はないだろうと。@プロパティは、JREITなどのファンド、大手不動産会社あるいは保険会社の不動産部門や電力会社の管財部門など、大手企業から導入していただいています。大きい企業では3000棟くらいの不動産を活用していますが、それだけのソフトウェアをパッケージソフトを配布して活用するのは現実的ではないと気づきました。

 インターネットですべての地域をつないで、ウェブサイト上から情報を入力する。本社部門ではそれらの情報を分析する。さらに常に最新のソフトウェアを活用するという点でクラウドサービスが適切であろうと、私と高橋(取締役副社長の高橋秀樹氏)で考えました。

 東京と大阪にビルを持つオーナーの方には、どうやってデータを入れてもらうか、20棟全部に1つずつソフトを納品するのかなど、清水建設時代の経験からもクラウドでないとやっていけないと考えました。

--パッケージソフトでの販売は全く考えなかったんですか。

 考えませんでした。ただ、パッケージソフトで販売したら当初は楽だったと思いますが、利用料に立脚したクラウドサービスでしたので設立当時の経営は苦しかったですよ(笑)。それをこらえて、何とか早期に損益分岐点を超えることができました。黒字化は設立2年目で達成しています。

 クラウドで提供するメリットはほかにもいろいろあって、パッケージソフトは購入時が最新版で、あとは古くなる一方ですが、クラウドは使えば使うほどバージョンアップしていきます。メンテナンスとサポートも一括管理ができますし、さらにどの機能が一番使われているのか、逆にどの部分が使いづらいのか、なども弊社サイドで確認できます。

 不動産テックの流れからすると「不動産業界のSAPになろう」と考えてやってきましたが、技術ありきというよりは、不動産業界やマネジメントのニーズに合わせて、従来型からソフトウェアを進化させたのが@プロパティであって、クラウドを採用したのも、それがニーズを一番満たしているからです。

 クラウドに絞った戦略が評価され、2009年度にはソフトウェア業として「第09回ポーター賞」を受賞しています。

--ユーザーの中心はやはり大手企業ですか。

 そうですね。複数拠点に強いことも特徴の1つなので、大手企業が多いです。また、海外で使われているケースもあります。そのため英語版や中国版も用意しており、メニューなどは現地の言葉に翻訳しています。入力側と管理側が異なる言語で、同一データを確認できます。

 レートも換算できるほか、住所なども変換できます。グローバルに使えるようにしているのは@プロパティだけだと思います。

 一方で、全国の不動産管理会社にも同様のニーズがあるため、一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)と連携して協会員の方にOEMで使用していただく取り組みもはじめました。

 住宅の賃貸管理にも使えるようにして、契約書も全宅連のフォーマットをダウンロードできるようにしています。

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