中国発の自転車シェアリングサービス「Mobike」。国内では初めてのサービス地域となった札幌において、9月上旬に体験したときの模様をお届けする。
Mobikeは、2016年4月に上海市でサービスを開始して以降、急速に成長。中国以外の国とも提携を開始。2017年6月には福岡に日本法人を設立した。そして、新サービスの社会実装を容易にし、実証実験の聖地を目指す「No Maps」を経由して、8月から札幌でのサービスを開始した。
サービスエリアとなっているのは、中心地であるJR札幌駅や大通公園付近から少し離れた、西区のJR琴似駅~桑園駅、札幌市営地下鉄東西線の琴似駅~西18丁目駅あたり。利用料金は、10月からプロモーション料金として30分毎に50円。このプロモーション期間の期日は未定としている。また利用にあたっては、クレジットカード登録を通じてのデポジットは必要となっている。
使用している自転車は、SIMやGPSを搭載している“IoT自転車”。そのため、Mobikeのアプリを通じて近隣の自転車の位置を探すことが可能だ。利用登録を済ませたスマートデバイスで、自転車に記載されているQRコードを読み取ると解錠し利用できる。またアプリを通じて自転車の予約も可能。乗車した自転車は、モバイク駐輪スペースで自由に降りることが可能で、施錠すると利用が終了する。利用可能エリア外の走行自体は可能となっているが、そこで駐輪した場合には大幅な割増料金になるという。
海外では乗り捨て可能としている地域もあったことから、国内市場参入時にもこの言葉が多く見受けられたが、札幌でのサービスでは、原則としてモバイク駐輪スペースに駐輪するように定めている。9月上旬の段階では、主にドラッグストア「サツドラ」(サッポロドラッグストアー)や、コンビニエンスストア「セイコーマート」などの一部店舗に駐輪スペースを設置している。
筆者は他の自転車シェアリングサービスを利用していないため比較はできないが、実際に利用してみて、貸出やアプリの操作がスムーズで、率直に借りやすいと感じた。利用するための登録も携帯電話番号とSMS認証、クレジットカード番号で済むため、借りたいと思ったらその場でアプリをダウンロードして利用することも容易。QRコードによるロックの解錠は瞬時ではないものの、数秒ほどでイライラするほど待たされるようなこともなかった。施錠するだけで利用が終了できるのも含めて、テンポよく借りられるという印象を持った。
一方で乗り心地については、快適というにはもうひとつだったというのが素直な感想だ。その理由として、まず札幌で使用されている自転車は、変速システム(変速ギア)がないモデルであること。そしてもうひとつは、パンクレス(エアレス)タイヤで、なおかつサドルにはスプリングのような衝撃を吸収する機構がない“固い自転車”と呼べるようなものであるため、凹凸や段差の衝撃がお尻や腰に強く響くというものだ。短時間では気にならないものの、長時間であれば気になるところ。また、一部サービスで導入されているような電動アシスト機能が搭載していないことも挙げられる。
今回JR琴似駅から適度に降りたり借りなおしたりを繰り返しつつ、円山公園を経由し大通公園の西11丁目付近まで行き、琴似駅まで戻る形で2時間強ほど走行。筆者が走行した範囲で、利用可能地域のほとんどは平坦な場所であり快適な走行ができたものの、例えば円山公園付近に向かうあたりの上り坂は変速システムがなかったこともあり、自転車を降りて押して上ったほど。また長時間の走行で、かなりの疲労感があったのも正直なところだ。
もっとも、国内展開のキャッチーコピーに「最寄駅からご自宅までの“ラストワンマイル”問題を解決する」とうたっていることもあり、また施錠すると利用終了となる仕様上、お店に立ち寄るといったこともしにくいため、ちょっとした距離を自転車で走るというような、短時間での利用用途が想定される。そうなると乗り心地の快適さよりも借りやすさのほうが優先されるため、このあたりは“欲を言えば”の範囲だろう。ちなみに、Mobikeで提供している自転車はいくつかのバージョンがあり、海外地域では変速システムを搭載した自転車もあるとしている。
限られた地域でのスモールスタートで実感はしにくいものの、たとえば国内で利用登録しておけば、海外のMobikeを現地で登録し直すこともなくそのまま利用できるというように、地域にとらわれず利用できるのも魅力と考えると、国内の自転車シェアリングサービスの多くは地域限定であることから、本格展開によって国内に広まってからが本領を発揮するのではと思える。乗り心地の面ではいろいろ指摘したが、利用登録と貸出のスムーズさなどシステム上の利便性はかなり優秀だ。そのため、ポートの増加や利用範囲の拡大など物理的な利便性の向上に期待したいところだ。
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