「お客さんも、ハッカー?」
ラスベガスでタクシーを拾い、シーザーズ・パレスホテルで開かれている「DEF CON」に行ってくれと伝えると、運転手はすかさずこう聞いてきた。彼に汗がにじんでいるのは、40°Cを軽く超えるこの街の熱暑のせいだけではないのかもしれない。
まる1週間というもの、ラスベガスの街は猜疑心の分厚い雲に覆われる。世界中のハッカーたちが、7月の最終週に相次いで開催される2大サイバーセキュリティカンファレンス「Black Hat」とDEF CONに参加するために、この歓楽都市に集まってくるからだ。シーザーズ・パレスは、25周年を祝うDEF CONの会場となったが、同施設内のUPSストアには、「USBメモリからの印刷お断り」という注意書きが貼り出されるほどだった。街じゅうにハッカーがあふれているとなれば、そこまで慎重になるのも無理はない。
どこに行ってもハッカーだらけ。DEF CONでのTelephreakによるパーティーのために、アルミ箔で作った帽子を被ったり、バイクベストを着たりした姿が、そこかしこに見られた。セキュリティ研究者のMike Spicer氏は、「Wi-Fiサボテン」を載せた1m以上もの高さのバックパックを背負っていた。ワイヤ、アンテナ、色付きランプ、25基のWi-Fiスキャナという装備を想像してほしい。その装置が、公共Wi-Fiを利用する程度にうかつなユーザーから、75Gバイト分ものデータを集めたのだという。ある女性が、ドアを開けていてくれたSpicer氏に礼を述べる場面を見かけたが、その間もずっと、同氏のバックパックは暗号化されていないパスワードや個人情報をかぎ回り、文字どおり何もない空中からデータを集め続けていたのである。
こうした潜在的な脅威が、文字どおり街じゅうを歩き回っているとなれば、ラスベガス市の情報技術担当部長を務めるMichael Sherwood氏は、さぞストレスでまいっているだろう、と考えるところだ。市内に設置された何千というスマートセンサが、万一どこかで故障を起こせば、交通渋滞や漏水、停電の原因になる。そうならないように保護するのが、Sherwood氏の仕事なのだ。
にもかかわらず、Sherwood氏は、Black Hatでも筆者の目の前に、笑顔で座っていた。
それどころか、同氏を含めた3人のチーム全員が、今後の攻撃防止方法を学ぼうと、Black Hatに参加している。ラスベガス市のネットワークは、このチームに代わって機械学習が守っているのだ。
大まかに言えば、人工知能(AI)とは、われわれが「スマート」とみなす仕事をこなす機械のことを指す。機械学習はAIの一部であり、そこではコンピュータが独力で学習し、適応する。
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