logo

「ソードアート・オンライン」が描いた技術は実現するか--川原礫氏らがCEDECで講演 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2017年08月31日 15時51分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

VRが次のステージへ進むために求められる技術革新

 SAOでは、VR空間にフルダイブするマシン「ナーヴギア」というものが登場するが、これについて川原氏は、技術面から考えたのではなく、デスゲームの要素を盛り込む際にプレーヤーを拘束するものが必要であり、VRMMORPGをデスゲームとして成立させるために、破壊できず外せないヘッドギアを考えたという。オーバーテクノロジのVRデバイスではあるが、現代は見かけだけでいえば近しいヘッドマウントタイプのVRデバイスが登場している。

SAOに登場するデバイス
SAOに登場するデバイス

 原田氏は、ヘッドマウントディスプレイを装着することそのもののハードルの高さや長時間プレイしにくい現状もさることながら、ある程度VRコンテンツに慣れてしまうと、どのようなVR体験ができるか推測できてしまう感覚を持つようになると話す。原田氏いわく“テクノロジ待ち”と表現するように、技術革新によってもっと手軽に装着できるデバイスと進化したVRコンテンツの登場が、次のステップに進むために必要だとした。ブレイクスルーとなるイメージとしては、川原氏は「スクリーンがコンタクトレンズまで小型化すれば、装着のわずらわしさが減る」、原田氏からは「メガネで網膜に映像を投射する」といったアイデアが飛び出した。

劇場アニメ「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」について
劇場アニメ「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」について

 オーディナル・スケールでは、VRではなくARでのMMORPGとなり、「オーグマー」と呼ばれるデバイスが登場する。川原氏はもともと「女神転生」シリーズにイメージされるような、ゲームのなかで再現された現実の都市が好きで、舞台を再現された東京に設定しシナリオを書いていたと振り返る。しかし、VRにしてしまうと、プレーヤーは東京で戦っているはずなのに、生身の人間は別の県にいて、家で寝ているという状態となる。ゲームからログアウトできない設定ならばともかく、劇場アニメでは仮想空間と現実を行ったり来たりする内容であるため、「実際にはどこにいるんだろう」と違和感を覚えた川原氏は、ARを活用して生身で戦う設定にしたという。

ARデバイス「オーグマー」(右)
ARデバイス「オーグマー」(右)

 現実世界とゲームの世界がクロスするゲームとしては「Pokemon Go」がイメージされる。世間的にもARゲームというイメージが浸透したあとでオーディナル・スケールが公開されたこともあり、より注目を集めた。川原氏は、作業を始めた2014年末はPokemon Goが発表される前であり「まったくの偶然」としたものの、開発のNianticが同じく手掛けている「Ingress」の位置情報を活用したバトルはヒントになったと語った。

ARデバイス「オーグマー」について
「オーグマー」について

AIとともにある未来は「すぐに来る」

 オーディナル・スケールでは「ユナ」という、人工知能(AI)を持ったARアイドルが登場する。川原氏は、作中にあるARのなかで普通にしゃべったりできるAIキャラクターはオーバーテクノロジとして描いていると説明する。一方、原田氏はAIによるサポートチャットが作られている事例を挙げ、「極端な話、AIの部分に限っていえばユナはオーバーテクノロジではなく、先の未来には『できてたね』と言われるかもしれない」と予測。ゲームにおいても、格闘ゲームで対人戦が面白いのは“競っている”からであり、ライバルのように演出してくれるAIが相手となり、それが人間としか思えなければ楽しくなると語った。

ARアイドルとして登場する、AIの「ユナ」
ARアイドルとして登場する、AIの「ユナ」

 また原作小説の「アリシゼーション編」に登場するAIは、大きく分けて「トップダウン型」と「ボトムアップ型」の2種類があるという。トップダウン型は、人間が何かを聞けば回答するAIが限界まで進化したもので、ミスなく答えられるようになったものとして描かれている。ただし、その会話の内容をAIが理解しているかというと、川原氏は「微妙なところがある」という。

トップダウン型AIについて
トップダウン型AIについて

 ボトムアップ型は脳を再現して知性を発生させるというAIとして描かれている。川原氏は「これはSFだと言われていたが、ニューラルネットワークの発展で、そうでもなくなっているのでは」と語る。もしボトムアップ型AIが実現すれば、会話と話の内容を理解したうえでしゃべれるようになるという。これについて原田氏は「生きている間かどうかはわからないが、絶対にできる。ともに暮らす日はすぐ来る」と、AIの未来を語った。

ボトムアップ型AIについて
ボトムアップ型AIについて

 講演の締めくくりとして原田氏は、VRは研究テーマとして面白いものであり、研究すればするほど、現実社会を再定義しなければならなくなり、そこからわかることがたくさんあると語る。「VRMMORPG自体がどこまで再現できるのかはわからないが、僕らは新しい世界、価値観、AIという生命が生まれるスタート地点にいる。この研究に足を踏み入れていたい」とコメント。川原氏は、作中のテクノロジが現実のテクノロジに追い抜かれているものもあることに触れ、「このジャンルを書く作家は、現実と創造力との競争、せめぎあいになっていく。現実に追い付かれないように、一足先、二足先の未来を常に提示できる作家でありたい」と語った。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]