日本的で“やりすぎる”から支持された--「グランツーリスモSPORT」山内一典氏に聞く - (page 3)

自動運転の開発にも使われているグランツーリスモ。業務用の開発も

--自動車メーカーと常に協調していますが、本作の開発にあたって、メーカーとのやり取りにおいてエピソードなどはありますか。

 自動車メーカーのみなさんとのやりとりは、常に刺激に満ちています。競争が激しい業界ですし、面白い方がたくさんいて、興味深い話ばかりです。

 本作ではポルシェが収録されるのですが、そのきっかけとして、2016年のル・マン24時間レースで、ポルシェのエンジニアのみなさんにお会いしたことがあったんです。時間をいただいて本作のコンセプトについて説明したところ、「これは本物だ」「このゲームはレースのことをわかっている」「ポルシェとして、これは関わらなくてはいけない」と言ってくださったんです。単純に熱意を感じていただいただけではなく、自動車やレースを正しくとらえていると思ってくださったのではないかと。

 FIAグランツーリスモチャンピオンシップの開催についても、システムやルールに対して、長年レースをやってきた方から見ても、抑えるべきことを抑えて共感をいただいたからだと思っています。

--本作ではPS VRに対応しています。平面とVRでは違うところも多いと思いますが、大変だったところはありますか。

 一番大変だったのは負荷対策でした。ステレオで2枚描かないといけない(※右目用と左目用と、2つの映像を描画しなければいけない)とか、フレームレートに関してもシビアですから。結果として、今PS VRでできるVR体験としては最高レベルのものになったと思います。実際に内装を作りこんでいるのも、VRを見据えているからなんです。本当の内装体験というのはVRだからこそ生きるものですから。

--VR酔いの問題についてはいかがでしょうか。

 できる対策はすべてとっています。もともと車は本物もそうなのですけど、酔いにくいものなのです。座っていますし、操作系もステアリング、アクセル、ブレーキと限られています。また内装があって、その向こうに景色が広がっているという、自分のポジションを見失わないような空間になっています。VRとドライビングのゲームの相性はとてもいいんです。

 あとは車の挙動が、普段みなさんが実際に運転していると同じように直感的に動くものであれば、未来が想像できます。人間は常に無意識のうちに未来を予測していますが、それがズレた瞬間に一瞬にして酔うんです。それを徹底的になくしました。

--いったん、2016年での発売日が発表され、お披露目イベントも行われましたが延期することとなりました。

 グランツーリスモは、すべてをやりすぎたぐらいの状態でユーザーに届けたいという思いで作っています。ですがいつもそれが叶うとは限りません。グランツーリスモ6はPS3向けに作っていましたが、PS4の発売が迫っていたので、その前に発売しなくてはいけないという事情があって、妥協したところもありました。

 本作の制作でも、いろいろな方々の期待にこたえたいという思いは常に持っていました。そのなかで発売日が一旦決まったのですけど、そのときに「このままでも発売できなくはないけど、後悔する」と思ったんです。なので、わがままを言わせていただいたというのが延期した理由になります。

 本当にゲームの開発は、終わりが決められないものです。もちろん1年で作りなさいと言われたら、その範囲で作ることはできます。グランツーリスモごとに、そうした物語がありました。ただ、振り返ると初代作は5年かけまして、本作についてはそれだけ真面目に作って、やり切れるところまでやったうえで勝負したいという気持ちが強くありました。

--現実世界においては、自動運転化の流れが進んでいます。自動運転と車との関係、ゲームとの関係についてどう思いますか。

 いろいろな見方ができると思います。まずスポーツカーと自動運転の関係でいうと、僕はフェラーリにこそ自動運転がほしいんですね。やはり渋滞のなかでフェラーリを運転するのは、結構苦痛なんです。ワインディングロードやサーキットに行くまでは自動運転にしてほしいと思います。スポーツカーであればあるほど、普段使いをするときの快適性は落ちてしまうものですから、スポーツカーこそ自動運転は生きるものだと思います。

 ゲームとの関係というと、実は自動運転の開発にグランツーリスモを活用している企業は結構あります。それは自動運転というのが、シミュレーションベースで実験や検証を繰り返さないといけないからです。リアルな世界では実験がしにくく、事故が1回でも起きてしまうと止まってしまいますから。なので、僕らが望む望まないに関係なく、自動運転の開発に使われている実情がありますし、本作もリリースされるとおそらく研究に使われると思います。

 ゲーム内の自動運転ということでは、かつてはセットアップとストラテジーを入力し、プレーヤーが運転をせずに結果を楽しむモードもありました。本作では入っていませんが、いずれそのゲームモードも復活できたらとは思っています。

--グランツーリスモの車のモデルを、メーカーがデジタルカタログとして活用したいというお話を受けたり、展開するような計画というのはあるのでしょうか。

 この話はもうしょっちゅういただいています。特にスケープスは自動車メーカーのみなさんにとっても初めてのテクノロジで、カタログ写真にすごく向いてます。そういう依頼はもう実際にいただいてまして、本作を完成させたら、エンタープライズ向けのグランツーリスモを開発しようと考えています。

 さきほど自動運転の開発に使われているというお話をしましたが、開発ではまさに市販品を活用しているのですね。例えば車速について、画面に表示されているものを画像認識によって読み取って計測しているそうなんです。こういった情報は、特定のAPIを通じて出すことも技術的にはできますので、そのような機能を持つエンタープライズ向けのグランツーリスモを、本作の開発が終わったら取り組もうと思います。

「グランツーリスモSPORT」
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