電動キックスクーターなど個人用モビリティ普及の背景には、シンガポールの厳しい車規制や亜熱帯地域特有の気候などある。
同国では渋滞緩和のため、自家用車の所有を制限する規制が設けられている。車本体の購入費用のほか、車の所有権を取得するための入札費用や所有し続けるための高額な税金がかかるため、必然的に車を所有できるのは富裕層に限られる。市街地中心部の道路利用に対して課金するシステムERPもあり、さらに駐車料金も安くない。
その点、電動キックスクーターなどの個人用モビリティは、500〜1000シンガポールドル(約4万円〜8万円)で購入でき、交通規制も比較的緩い。運転免許は必要なく、操作も簡単だ。
また、通年気温が30度を超える南国のシンガポールでは自転車をこぐだけで汗をかいてしまうが、電動キックスクーターには風を切る爽快さがある。スコールが降った際には屋内に持ち込みやすく、勤める会社のオフィスに置ければ駐車場を借りなくて済む。
シンガポール政府は、2030年までに車に頼らない社会を目指す「スマート・モビリティ構想」を掲げており、渋滞や大気汚染、駐車場不足など交通に関わる問題の解決を目指している。これもまた、電動キックスクーターのシェアリングサービスにとって追い風となるだろう。
シンガポールには、Telepodのほかもう1つ「Neuron Mobility」という電動キックスクーターのシェアサービスもある。
両サービスの大きな違いは、Neuron Mobilityはステーションとスクーターのドッキング設備が必要なのに対して、Telepodは不要であること。Telepodはスペースがかぎられていてもステーションを設置できるため、よりスピーディーにエリア拡大を進められる。ステーションの数が増えれば、利用者の利便性は高まるだろう。
また、Telepodは、電動キックスクーターのレンタルサービスも提供。1時間23シンガポールドル(約1900円)、3時間35シンガポールドル(約2900円)、24時間63シンガポールドル(約5200円)で貸し出している。
今後は、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイやマリーナ・ベイサンズなど、シンガポールを代表する観光スポットの周辺にもステーションを設置する計画。地元の人たちの交通手段としてだけでなく、シンガポールの新しい観光アクティビティとしても注目を集めるかもしれない。
タクシー、自家用車のみならず、電動キックスクーターもシェアされる時代に。ありとあらゆるモビリティが所有からシェアへとシフトしつつあることを感じさせる動きだ。
(編集協力:岡徳之)
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