6月28日〜7月1日の日程で、モバイル端末・ネットワーク技術などの展示会「Mobile World Congress Shanghai 2017」が開催された。初日のキーノートセッションに登場したファーウェイの輪番CEO 郭平(グォ・ピン)氏は、拡大を続けてきた新規モバイルユーザーの獲得が難しくなってきていると指摘。今後も競争力を保つためには、既存ユーザーに向けたビジネスへの投資が重要であると訴え、世界各国におけるファーウェイの技術を活用した事例を解説した。
まず最初の事例として、ケニアの携帯通信事業者Safaricomが10年前にスタートしたモバイル向け支払いサービス「M-PESA」の、「Send Money Home」というサービスを取り上げた。
ケニアは日本の1.5倍ほどの国土面積がありながら、銀行の拠点となる窓口やATMが少なく、現金を必要に応じて引き出し持ち運ぶことは効率ではないという。多くの国民が銀行口座を所有していないこともあり、そもそも銀行拠点が多くある必要性も薄い。
そこで、Send Money Homeによって多くの国民が持つモバイル端末でお金の相互振込を可能にし、大量の現金を持ち運んだり、家庭で保管したりする手間や管理の問題を解決した。生活必需品である水はもちろんのこと、光熱費やガソリンの支払い、保険の費用などの支払いまでカバーする。
Send Money Homeによる取引額は、すでに同国のGDPの50%を占めるまでになり、Safaricomの利益の実に27%が同サービスによるものとなっているという。使い勝手の良さや、商品・サービスを提供するチャネルパートナーとのレベニューシェアの仕組みなどが成功につながったようだ。
次の事例は日本のソフトバンクによるサービス「SoftBank Air」。日本では比較的広範囲で光回線による1Gbpsを超える高速インターネット接続が可能になっているが、地方にはいまだ光回線の敷設が行き届いておらず、有線での高速インターネットサービスを各戸に提供するのが難しいところもある。
そこでソフトバンクでは、2015年12月から無線で各戸にギガビットクラスのインターネットサービスを提供するSoftBank Airの提供を開始した。ゲートウェイを既設の電柱に、各家庭の屋内に専用の受信機(無線ルーター)を設置するだけで、Wi-Fiでインターネットに接続できるようになるものだ。
次世代通信技術の5Gを構成する1要素である「Massive MIMO」に対応し、多数の家庭にある受信機とゲートウェイとの間の通信を高速化している。一般的に光回線をはじめとする固定回線は、契約して実際に利用できるようになるまで数週間程度かかるが、SoftBank Airでは受信機さえ設置すればあとは30分程度で契約が完了する導入の容易さも特徴だ。
SoftBank Airはサービス開始から1年でおよそ100万人の登録ユーザーを集めた。2017年には200万ユーザー、将来的には500万ユーザーを目指すとしている。
中国の大手携帯電話網の1つChina Telecomと、Shinzhen Water Group(深圳ウォーター)によるスマート水道メーターを用いた事例は、ファーウェイが推し進めるIoT機器向け狭帯域ネットワーク「NB-IoT」を活用したものだ。
各家庭や建物に設置されている水道の使用量を測定する水道メーターは、通常は検針員による目視のチェックが必要で、人口増加により検針員の人件費がかさんでいた。また、水道管の老朽化や破損などによって水漏れのトラブルも増えていた。
これらを解決するために導入したのが、NB-IoTを利用して通信するスマート水道メーターだ。低消費電力ながら通信範囲を広くカバーするNB-IoTのメリットを活かし、リアルタイムで水道使用量を監視でき、さらにどこで水漏れが発生しているかも特定しやすくなった。
スマート水道メーターの導入により、水漏れの発生確率は3%減少し、年間1400万トン、3200万元(5億円以上)の損失を防いだという。人件費の抑制にも成功し、210人分の検針員の人件費に相当する1500万元(2億4000万円)の節約につながったとした。
以上、いずれの事例でも、ファーウェイが提供するネットワークの基礎技術、ネットワークゲートウェイ、その他製品が用いられている。同社はそれらの技術・製品とクラウドサービスを軸にあらゆる産業のデジタル化を志向しており、そのためには5Gを見越した広帯域接続により、行政・製造・輸送といった“トラディショナルな産業”のデジタル化に向けた支援が重要だとした。
加えて、それらの分野で蓄積されているビッグデータに価値をもたらすべく、エンタープライズアプリケーションのクラウド化を全力で進めることも必要だと語った。
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