ドコモが「AIエージェントAPI」を開発--オープン化で普及を狙う

 NTTドコモは6月23日、AIエージェントを実現するための「AIエージェントAPI」を開発したことを発表。同時に、そのAPIをさまざまなパートナー企業に対しオープンな形で提供し、新たなサービスを共同開発する「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」を打ち出した。

AIエージェントAPI
「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」の発表会に登壇した面々。左から高島屋の髙山氏、NTTドコモの中村氏、インテルの江田氏、価格コムの村上氏

 同日に開催された発表会で登壇したNTTドコモ代表取締役副社長の中山俊樹氏は、現在掲げている中期戦略2020「beyond宣言」において、顧客のライフスタイルを革新する新たなAIエージェントを提供すると打ち出したことが、開発の背景にあると説明する。

 同社はこれまでにも、エージェントサービスの「iコンシェル」を提供し750万を超える有料会員を抱えているほか、音声を活用したエージェントサービス「しゃべってコンシェル」も提供している。それらサービスを長年運営し、蓄積してきた技術をAPIを通じてパートナー企業に広く活用してもらうことが、API提供の主な目的となる。

 そこでドコモは、AIエージェントAPIを活用した、ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブも同時に発表。APIをオープン化してデバイスメーカーやサービス事業者などのパートナー企業に提供し、共同でのサービス開発にも力を入れていきたいと、同社執行役員 R&D戦略部長 兼 イノベーション統括部長の大野友義氏は話す。AIを活用したエージェントサービスは各社がクローズドな形で展開することが多いが、ドコモではあえてオープンな方針を採ることで、普及を進める狙いがあるようだ。

AIエージェントAPI
ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブの概要。NTTドコモが開発したAIエージェントAPIをオープン化し、デバイス・サービス事業者と共同で開発を進める

 このAPIを用いて実現するAIエージェントの大きな特徴は、場面に応じて複数のエージェントが入れ替わりながら対応する点にある。通常時にユーザーと応対してくれるのは、デバイスやサービスに標準で用意された「メインエージェント」となるが、メインエージェントが対応できない機能やサービスが必要な場合は、それぞれのサービスに特化した「エキスパートエージェント」を呼び出し、そちらと対話することでユーザーの要求を解決できる仕組みとなっているのだ。

 具体的な例を挙げると、テレビに搭載されたAIエージェントを利用する場合、電源を入れたり、チャンネルを変えたりといった操作はメインエージェントが担当する。だが視聴中に買い物がしたくなった場合は、メインエージェントでは対応できないことからECのエキスパートエージェントを呼び出し、そちらと対話することで買い物をを進める、といった具合である。

AIエージェントAPI
テレビを用いたAIエージェントのデモ。メインエージェントとなる執事に「買い物がしたい」と話しかけると、買い物のエキスパートエージェントを呼び出す
AIエージェントAPI
呼び出した後は、買い物のエキスパートエージェントと対話して買い物を進める。ユーザーの要求に応じてエージェントが交代しながら対応する仕組みが大きな特徴だ

「AIエージェント」を構成する3つのAPI

 AIエージェントAPIは、1つのAPIではなく、大きく3つのAPI群から成り立っているとのこと。1つは「多目的対話エンジン」で、しゃべってコンシェルで培った自然言語処理技術を活用することにより、高い日本語での音声認識性能を実現しているという。また単にユーザーからの質問に答えるという一往復の対話だけでなく、多往復の対話にも対応するなど、より自然な対話ができる仕組みも用意されているそうで、こうした日本語による音声対話の性能の高さが、AIエージェントAPIの大きな強みになると大野氏は話す。

AIエージェントAPI
多目的対話エンジンは、しゃべってコンシェルなどで培った音声認識や言語処理技術を生かし、多往復の対話にも対応するなど日本語による自然な対話ができるのが特徴になる

 2つ目は「IoTアクセス制御エンジン」。AIエージェントにはさまざまなIoT機器を制御する仕組みも用意されているが、IoT機器は各メーカーがさまざまな規格を用いて開発していることから、制御するプログラムを作る側の手間が煩雑になるという問題を抱えている。そこでドコモでは、Open Mobile Allianceで標準化されたデバイスWebAPIを用いることで、IoT機器のインターフェースを共通化し、デバイスや環境に依存することなく機器を制御できる環境を作り上げるとしている。

AIエージェントAPI
IoTアクセス制御エンジンを活用したデモ。デバイスWebAPIを用い、照明と赤外線リモコンとゲートウェイを通じて操作し、音声による家電機器の制御を実現しているとのこと

 そしてもう1つは「先読みエンジン」。これは対話を通じて顧客を理解し、顧客に合わせたサービスを最適なタイミングで提供する仕組みで、「顧客に寄り添う」機能になると大野氏は説明する。先読みエンジンの事例として、会場ではスマートフォンの位置情報から現在の居場所を取得し、宅配便の到着に帰宅が間に合わないと判断した場合は、メインエージェントがスマートフォンにプッシュ通知でそのことを知らせ、エキスパートエージェントを呼び出して配送時間を変更する、というデモが公開された。

AIエージェントAPI
先読みエンジンを活用したデモ。メインエージェントが位置情報を基に自宅までの帰宅時間を測り、宅配便の到着に間に合わないと判断した時にスマートフォンに通知を送る
AIエージェントAPI
ユーザーが通知を開くとメインエージェントが宅配便のエキスパートエージェントを呼び出し、配達時刻の変更ができる

 ドコモでは、これらのAPIを活用したサービスとして、「dマーケット」など同社のサービスを活用した独自のAIエージェントを2018年から提供する予定。それと同時に、パートナー各社にAIエージェントを提供するほか、マーケットプレイスを用意し、サービスプロバイダにさまざまなエージェントを提供してもらう仕組みも構築していきたいとした。

AIエージェントAPI
パートナーとの連携だけでなく、NTTドコモ自身もAIエージェントAPIを用いた新しいAIエージェントサービスを、2018年にNTTドコモユーザー向けに提供することを明らかにしている

 中山氏によると、ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブの推進にあたり、すでにいくつかの企業がパートナーとして賛同を示しているとのこと。記者説明会にはそれらパートナーの代表として、インテルの代表取締役である江田麻季子氏、高島屋の常務取締役 営業推進部長の髙山俊三氏、カカクコムの取締役(食べログ担当)の村上敦浩氏が登壇し、抱負を述べた。

 その中で江田氏は、ハードウェアの技術パートナーとして、AIエージェントAPIを活用したスマートスピーカーのリファレンスデザインを提供していることを明らかにした。また髙山氏は、AIエージェントによって顧客に寄り添った形で購買体験を変えることに期待を示す。村上氏はAPIの活用によって、2000万におよぶ「食べログ」口コミデータを活用し、ユーザーにより最適な店舗を見つけてもらうAIエージェントを実現したいと話した。

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