“プロではない”クリエーターにも焦点--「Premiere Pro」が描く映像ツールの今後 - (page 2)

――YouTuberなど新しいタイプのクリエーターはどのようにサポートしていくのですか。

 YouTubeで成功するには、映像のクオリティ、画像、サウンドも良くなければいけません。アドビはこうした新しいクリエーターにもフォーカスしています。また、企業でも、マーケティングの素材であったり、人事、CS向けにもいろいろな動画が使われ、YouTubeなどにアップロードされるようになっています。

 私たちが指す、新しいクリエーターのターゲットはまさにここです。元々動画のプロではないのですが、何かナレッジを持ち、それを動画で広めたい方々です。2016年のAdobe MAXで、今後の3年間の方向性を話しました。私たちはクリエイティビティというものを、深いところではなく、何か目的を持ったクリエイティブな人たちを再開発しないといけないということです。

 アドビは、FacebookやYouTubeとも緊密な関係にあり、彼らも私たちと同じ事を考えています。自分たちのプラットフォームで、個人だけでなくスモールビジネスにも働きかけて、さまざまな動画を作って欲しいと働きかけています。私達のビジネスでは、放送局やプロのユーザーが多くを占めますが、先ほどの新しいコミュニティがビジネスを盛り上げています。

 今後、アドビとして3つの方向性を掲げています。クラウドセントリック、タッチセントリック、マルチスクリーン(マルチデバイス)であることです。この分野ではアドビは先行的に取り組んでおり、3D関連では「Project Felix」を発表しています。ビデオ製品に関してはまだアナウンスできませんが、よりシンプルで、グラッフィクス、編集、オーディオなどを融合した複合的に使えるものが必要だと考えています。

 この方向性は、Premiere Proでも新しく発明しています。モーショングラフィックステンプレート以外にも、「Adobe Audition CC」の一部機能をPremiere Proに取り込んだ「エッセンシャルサウンドパネル」のほか、「Adobe SpeedGrade CC」の機能を「ルメトリカラーパネル」という形でPremiere Proに取り入れました。要するに、Premiere Proさえ使えれば、AfterEffectsやAudition、SpeedGradeの機能を動画に取り入れることができるのです。

 これらのツールは、「プログレッシブディスクロージャー」という方法を使っています。これにより、初心者にとっては簡単なUIで使うことができ、慣れてくればさまざまなコントロールが可能です。

 また、シンプルを追求する一方で、プロ志向の機能を提供できる体制を持っているのも強みです。今回の新機能では、小突きやバンプなどで生じるブレを削減する「カメラシェイクデブラー」のほか、360度映像の機能も追加しました。その他では、HDR動画のサポートです。これはNHKからのリクエストで入れた新機能で、ハイブリッドログガンマ(HLG)のプロファイルに対応しました。

 日本では、「シン・ゴジラ」でPremiere Pro CCが使われましたが、ポスプロの世界をPremiere Pro CCで塗り替えたいと考えています。デヴィッド・フィンチャー監督にも似ていますが、昔はオフラインとオンラインで分けていた編集を、コンスタントに常にいじって作っていくやり方がメジャーになっていくでしょう。

――アドビのクラウドといえば、AIプラットフォーム「Adobe Sensei」もクラウドで動いています。Adobe Senseiを使った新機能はあるのでしょうか。

 Adobe Senseiは、いろいろなものを比較して繰り返しリピートするようなタスクなど、コンピュータが得意としている分野で効果を発揮します。「Adobe Character Animator CC」では、口の動かし方と音のパターンをマッチする部分で使っていますし、Premiere Pro CCでは、自動ラウドネス調整でAdobe Senseiを使用しています。

 これは、各クリップの音の大きさをターゲットの音の大きさと比較し、バラつきのあるものをノーマライズします。Adobe Senseiのような機械学習技術はクリエーターにとって大きな支援になるでしょう。また、今は実験中ですが、タイムラインの中の動画をすべてノーマライズさせる実験も実施しています。制作期間が限られている人にはとても便利な機能だと思いますし、時間がたっぷりある人でも、開始点がきちんと決められることで、無駄なく効率的に作業ができます。

 もう一つSenseiを使った機能として、制作した作品をAdobe Stockにアップロードする際に使われます。Adobe Senseiが起動し、動画のサムネイルから内容を判別して自動的にタグ付けしてくれるのです。この機能は、「Adobe Lightroom CC」の機能と似ています。今までこうした技術がまったくアドビになかったわけでなく、これまで提供してきた機能が“Sensei”というネーミングのもとにまとめられたのです。

 また、Senseiにちなんで、アドビのラボを「道場」と呼ぶか迷っています(笑)。今後も新しい機能を開発していく予定ですので、楽しみにしてください。

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