日本アイ・ビーエム(IBM)は5月19日、大手企業とスタートアップの協業やインキュベーションを支援するプログラム「IBM BlueHub(ブルーハブ)」のデモデイを開催した。同社が双方のハブとなり、質疑応答システム「IBM Watson」やクラウドプラットフォーム「IBM Bluemix」などのソリューションを提供するプログラムだ。
今回は、東京オリンピックが開催される2020年に向けて各社が力を注ぐ「旅行・訪日」領域をテーマに、8つのチームがアイデアを発表。各アイデアの創出や開発には、ゼンリン、ソフトバンク、NTTドコモなどが協力した。審査は「新規性」「有効性」「オープンイノベーションの実現度」「収益性」「成長性」「事業の魅力度」の6つを基準とした。
審査員による審査の結果、8つのチームの中から最優秀賞に選ばれたのは、ホテルや旅館向けの客室単価設定ツール「メトロエンジン」。競合ホテルの客室単価やレビュー数、部屋の写真、民泊の物件情報などの“予約行動”に関するビッグデータを毎日収集し、AIや機械学習処理を用いることで客室単価を算出する。
同社の代表取締役CEOである田中良介氏は、多くの宿泊施設は客室単価を過去の経験などの“勘”で決めており、大手のホテルチェーンなども過去の実績に基づいて価格を決めていると説明。しかし、過去の客室単価がそもそも適切だったのかどうかの検証ができていないほか、需給によって価格が大きく変わる民泊の台頭もあり、過去のデータに基づいた単価設定は機械損失につながる可能性があると指摘する。
メトロエンジンでは、“リアルタイム”のデータを活用することで将来の価格を算出するため、競合の客室単価戦略から、市区町村別、都道府県別の傾向も瞬時に把握できるとしている。たとえば、客室の在庫状況に対して「女性をターゲットとした宿泊プランを作成し、価格帯を1000円下げ、大阪向けの情報発信を強化した場合、80%の確率でホテルの稼働状況は満室になる」といった具体的な戦略まで導き出せるという。
4月25日からサービスを提供しており、これまでに50施設で導入されているという。また、現在それぞれのホテルとのシステム連携を進めており、6月末には完了する予定としている。
続いて、残る7つのアイデアを紹介しよう。同日には審査員賞も設けられたが、最多となる3つの賞を受賞したのが、パーソナル日本酒ソムリエ&酒蔵ツアーサービス「SAKEVEL」。日本のお酒に興味がある訪日外国人と酒蔵をつなぐサービスだ。
ユーザーは、アプリで日本酒のラベルをスキャンすることで、そのお酒の詳細を英語や中国語などで閲覧することが可能。また、Facebookなどのソーシャルアカウントでログインすることで、性格分析をしてお勧めのお酒をレコメンドしてもらえる。さらに、ワイナリーツアーのように酒蔵ツアーを一気通貫で支援するという。同社では自治体とも連携することで地方創生に役立てたいとしている。
このほか、場所と料理ジャンルを選ぶとその人に最適なレストラン情報を動画などで提示してくれる中国人訪日客向けのチャットボット「YOYAKU」。Instagramの写真からレストランを探せる個人と飲食店向けアプリ「Quippy for Restaurants」。GPSではなくスマホで撮った“写真”で現在地を特定し、矢印で目的地まで案内する「SnapGo」などのアイデアを発表。
さらに、ガイドブックなどでは見つからない地域の祭り情報をリアルタイムに確認して、参加申し込みも可能にするアプリ「Miccossy」。外国人同士や日本人で宿泊や遊び、食事、交通などを“シェア”できるNTTドコモのプラットフォーム「シェア旅」。回転寿司の食べ方など、訪日外国人が旅行で抱える悩みを解決する1分動画を作成して、Facebookなどのソーシャルメディアで配信する「1minute Japan」などのアイデアが発表された。
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