スタートアップ企業のテクノロジと大企業のリソースを掛け合わせ、先進的な事業を次々と生み出すためのオープンイノベーションプラットフォーム「creww」を運営するcrewwが4月25日、イベント「OPEN INNOVATION CONFERENCE 2017」を開催した。
このイベントでは、同社のオープンイノベーションプログラムを通じて行われたコラボレーションのなかから、「成長性」「シナジー」「将来性」の3点を基準に最も成功が見込まれる取り組みを表彰する「Creww Award 2017」を開催。事前審査を通過した7組のうち、ドレミングとセブン銀行による「即払い給与サービス」に関するコラボレーションが最優秀賞を受賞した。ここでは、最終選考に残った7組の取り組みの概要を紹介する。
ドレミングとセブン銀行は、「即払い給与サービス」の実現を進めている。セブン銀行が2017年秋から開始する「リアルタイム振込機能」と、ドレミングが開発する日次で税金、社会保険料などを計算、控除し、給与の手取り額を決定する「リアルタイム給与計算機能」を組み合わせることにより実現するもの。
即払い給与サービスを導入した企業は、従業員に対して当日働いた分の給与を即日支払うことができる。立て替え経費の即日精算も可能で、昨今話題に上ることの多い“働き方改革”をはじめ、多様な働き方をサポートする可能性を秘めたシステムとなっている。
ドレミングが、グローバリズムを感じさせるスケールの大きなビジネスモデルをもっていること、セブン銀行が自身のシステムを通じてその力をどう引き出すか、という明確な方法論をもっていることなどが評価され、受賞となった。
ビデオチャットプラットフォームの「FaceHub」を開発するFacePeerと、ネットワークインフラ事業を手がけるケイ・オプティコムは、crewwを通じたコラボレーションにより「クラウド通訳」というサービスを開発した。BtoBtoCに特化したビデオチャットプラットフォームであるFaceHubの技術を応用し、主婦らが参加するクラウドソーシングサービス「うるるBPO」ともコラボして、専用のスマートフォンアプリを経由したビデオチャットによる同時通訳サービスを実現したもの。
実際に同時通訳するのは在宅している主婦ら。語学スキルを有しながらも、家庭の事情で在宅の必要があり、しかしそのスキルを生かして収入を得る方法を探している人たちにとってメリットのある仕組みだ。スタートアップ企業ということで知名度、実績、営業力が不足していたFacePeerだが、関西を中心に全国にも事業展開を進めているケイ・オプティコムとコラボレーションすることで、新たなサービスの提供につながった。「より多くの人が自分のスキルを活かせる社会」を目標としている。
LEAPMINDとジーエフケーマーケティングサービスジャパンは、コラボレーションにより、AIとビッグデータの技術を組み合わせたBtoB向けのマーケティングサービスを新たに開発した。LEAPMINDは、AIによる学習・解析処理をクラウドではなくエッジデバイスで行うためのディープラーニングフレームワークを手がけており、これにジーエフケーがもつ大量のユニークなマーケティングビッグデータを掛け合わせたという。
たとえば、企業のロゴやその企業の商品画像などをディープラーニングで学習し、SNSなどに投稿された大量のコンテンツや画像を解析することで、商品の評価、SNSで“いいね!”をもらえる画像の要因など、マーケティングに有用なさまざまな情報を得ることができる。SNSには1日当たり4000万枚もの画像が投稿されることもあり、手動で自社製品の使われ方について分析するのはもはや困難だ。両社がコラボした成果により、これまでにない効果的なマーケティング施策を試しやすくなるのがメリットと言えるだろう。
Z-Worksとキヤノンマーケティングジャパンは、「IoTによる介護支援システム」の全国展開と、人の“健康(でいられる)寿命”の延長を目指している。Z-Worksは、高齢者もしくは要介護者が身につけたセンサから得たさまざまな情報をクラウドで処理し、異常を検知した場合に介護スタッフや家族に通知する介護システムを開発している。
これをキヤノンマーケティングジャパンのもつ販売・営業網を通じて普及拡大することで、システムを全国展開し、大量のセンサ情報の有効活用を狙う。また、キヤノンのカメラ技術、画像認識技術などとも組み合わせ、介護現場における幅広いニーズに応えることも考えられるという。現在10年ほどの差があるとされる“健康寿命”と“実寿命”の差について、Z-Workの技術を生かしてヘルスケアプラットフォームを構築することでこれを縮め、介護や医療の問題の解決にもつなげたいとしている。
フューチャースタンダードとオリックス・レンテックは、映像分析・監視に利用できる独立型システムのカメラをレンタルで提供することを狙っている。オリックス・レンテックはIT機器、測定機器などのレンタル事業を柱としている企業。しかしながら、昨今はソリューションカンパニーを目指すことも重要な事業戦略の1つとしている。その中でフューチャースタンダードが提供している映像解析ソリューションに関心を抱いたという。
フューチャースタンダードは、将来的なスマートシティの実現をにらみ、カメラをより効率的に使うための技術を提供している。ところが、交通量調査や犯罪の未然防止などに必要十分なデータを得るためには、まだカメラの数が足りないというのが実情だ。そこで、オリックス・レンテックの販売網と組み合わせ、さまざまなアルゴリズムにより画像解析、データ分析する新たなカメラとクラウドの仕組みを構築。独立システムとして稼働するレンタルカメラ製品として安価に提供することにより、より多くの高機能なカメラを世の中に拡散していきたいとしている。
プログレス・テクノロジーズと東京メトロは、視覚障害者が安全に地下鉄を利用できるようにするシステムを開発中だ。現在、世界には視覚障害者が2億8500万人、国内に限っても164万人おり、国内では年間428件の事故が発生している。そのため、プログレス・テクノロジーズは「安心して暮らせる東京を実現する」というビジョンを掲げ、AI、画像認識、ビーコンなどを開発。その技術を元に、東京メトロの駅構内や施設内で、視覚障害者の歩行を支援する基礎技術の実証実験を3月から始めている。
将来的には、視覚障害者の方がスマートグラスや操作ボタンを内蔵した杖などを持ち、手持ちのスマートフォンや駅構内に設置されたWi-Fi、ビーコン、クラウドサービスなどと連携して、骨伝導スピーカーなどによって詳しい道案内を行う。細かな駅構内の情報や、危険回避のための情報なども伝えられるようにする。「目の不自由な方が電車に乗って、安心してお出かけできる社会を実現したい」というのが目標だ。
Warranteeとオートバックスセブンは、ユーザーの車両情報の管理・活用を目的としたシステムの構築を進めている。Warranteeは、家電製品の保証書を電子化するスマートフォンアプリを提供しており、ユーザーがアプリを通して所有製品の保証期間を確認したり、詳細な商品情報や説明書の閲覧、修理依頼、中古品としての査定依頼なども行えるようになっている。
この仕組みと実績を生かし、中古車買い取りや査定、修理を手がけるオートバックスセブンとコラボレーション。ユーザーのもつクルマの車検証の情報をデータベースとしてもつことで、ユーザーは車両ごとの車検タイミングの通知を受けたり、資産価値の確認などが容易になる。一方、オートバックスセブンなどの事業者は、ユーザーに対して乗り換えの案内や、保険の提案、メンテナンス情報の提供などを行える、という仕組みだ。
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