logo

東大のロボット義足チームが初受賞の快挙--「SXSW 2017」をじっくりレポート<後編>

松葉忍(WHITE VRマーケティングチーム)2017年04月19日 09時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2017年3月10~19日に米国テキサス州オースティンで開催されたクリエイティブフェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2017」に参加してきた。私なりの視点から、2017年のSXSWをレポートしたいと思う。SXSWについては、前編で説明しているので割愛させていただく。

SXSW

ウェアラブルサングラス「Spectacles」への期待

 米国で盛り上がっているガジェットの中には、日本で買えないものがいくつもあるが、そのうちの1つが「Spectacles」だ。米国で最も利用されているSNSの1つである「Snapchat」を展開するSnapが作ったウェアラブルサングラスで、搭載されたカメラによって、最大30秒までサングラスを掛けたユーザー視点の動画を録画できる。動画はSnapchatアプリを通して共有、またはダウンロードすることが可能だ。

 最近、米国内でオンライン購入できるようになったが、それまでは一部のポップアップストアと期間限定で現れる専用自動販売機でしか買えなかった。しかも、その自動販売機は直前にならないと置かれる場所がわからないのだ。国土が広い米国において、置かれる自動販売機の場所はわずか1~3カ所。米国に住んでいても出会うことは難しい。こういったマーケティングがブランディングにつながり、その話題は日本にまで届いた。

「Spectacles」の自動販売機
「Spectacles」の自動販売機

 筆者はSXSW 2017の期間中、Spectaclesの自動販売機がオースティンに置かれるだろうと予想していた。そこで、オースティン入りしてからTwitterとSpectaclesのサイトをチェックしたところ、狙い通りSpectaclesの自動販売機と出会うことができ、デバイスを手に入れることができた。

 早速、Spectaclesを掛けてオースティンを歩いていると、すれ違う人々から「それSpectaclesだよね?見せて欲しい!」「どこに売ってたの?」「最高にクール!」と次々に声を掛けられた。また、トレードショーなどを回っていても同じだった。米国で最も利用されているSnapchatを展開するSnapのブランディングの巧みさを、身をもって体験することができた。

Spectaclesを開封した図。ケースがSpectaclesの充電器になっている
Spectaclesを開封した図。ケースがSpectaclesの充電器になっている

気になる日本勢の動きは?

 2017年は日本からの出展企業の数が増えた印象だ。特にソニー、パナソニック、資生堂、パルコ、ワコムといった名だたる企業が出展したことが特徴的である。資生堂、パルコ、ワコムはトレードショーに出展。パナソニックは市街にパビリオンを構え8つの事業アイデアを展示した。また、ソニーは2016年よりも力を入れている印象で、古倉庫を改装し、13の体験型展示を展開していた。

 このように、大手企業が出展をはじめたことから、SXSWに対する日本からの注目度も年々増加している。2017年のSXSWは日本人がとても多かったという意見を多方面から聞いたが、大手企業が出展することで、関係者が多く参加したという背景もあるだろう。全体的に日本勢の評判は良かったとされており、2018年は出展数がさらに増えることが予想される。

ソニーは古倉庫を改装して13の体験型展示を展開した
ソニーは古倉庫を改装して13の体験型展示を展開した

 ソニーは先にも記述したように、古倉庫を改装して13の体験型展示を展開した。イヤホン製品のプロトタイプやウェアラブルデバイスなども出展されていたが、特筆すべきはヘッドマウントディスプレイを装着しないハーフドーム型や巨大スクリーン型も含め、13展示のうち6つがVR・ARコンテンツだったことだ。

 「PlayStation VR」を使用したVR展示もあったが、こちらもVRコンテンツだけではなく、「Synesthesia Suit (シナスタジア・スーツ)」というスーツが、Rez Infiniteというコンテンツに連動するものだった。すべての展示が完成度の高い体験型の展示だったと記憶している。

ゴーグルをつけて鬼ごっこをするSuperception。ゴーグル内は、自分や鬼を含めた参加者全員の視界が見える
ゴーグルをつけて鬼ごっこをするSuperception。ゴーグル内は、自分や鬼を含めた参加者全員の視界が見える

SXSW初のアートプログラムに選出された後藤映則氏

 SXSWは2017年からアートプログラムを開始し、選出された5名と地元オースティンのアーティスト1名の計6名が出展した。このアートプログラムには200以上の応募があったが、そのうちの1人として日本から後藤映則氏が選出された。

 後藤氏の作品は、オースティン市内にあるJW Marriottの306号室に展示された。「toki - series #02」というタイトルで展示されていた作品のひとつで、メッシュ状に3Dプリントアウトした、一見すると白い塊のようなものは、バレリーナが踊っている瞬間をつなげたもので、光のスリットを投射することでバレリーナが踊り始めるインスタレーションだ。

後藤映則氏の作品
後藤映則氏の作品

 後藤氏に話を聞いたところ“時間軸”に興味があるとのことだった。ある状態からある状態に移り変わるその間には時間が流れているが、その時間は目には見えない。この見えない時間を可視化し、実空間で表現したかったのだという。現地でも好評だったようで、実際に見た人から勧められて見に来たという人も多かったという。

東大のロボット義足開発チーム「BionicM」が日本勢で初受賞

 さらに、東京大学情報システム工学研究室のロボット義足開発チーム「BionicM」が、SXSW Interactive Innovation Awards Student Innovation部門で受賞した。BionicMは、2足歩行ヒューマノイドロボットの技術を活かしてロボット義足を開発するプロジェクトだ。日本勢としては初めての受賞ということもあり、大きな話題となった。

東京大学情報システム工学研究室のBionicMチーム
東京大学情報システム工学研究室のBionicMチーム

 チームリーダーの孫小軍(Xiaojun Sun)氏は、幼い頃、骨肉腫のために右足を切断した。義足は非常に高価なため、初めて義足を手に入れたのは15年後だったそうだが、機能性は高くなかったと振り返る。義足が必要とされる人のうち、実際の利用率は約40%だそうで、技術の力でこの問題を解決したいと語った。受賞ステージでは言葉に詰まりながらもスピーチし終わると、会場からはスタンディングオベーションが沸き起こった。

SXSW Interactive Innovation Awardsのトロフィー
SXSW Interactive Innovation Awardsのトロフィー

2018年の「SXSW」に向けて

 今回のパナソニックや資生堂のように、2018年はさらに出展を検討する日本企業が増えるだろう。これまで、スタートアップが腕試しのように参加していた場所が、マーケティングの場としても活用され始めているのだ。

 筆者は出展する企業や団体の規模よりも、出展するプロダクト、ソリューションのユニークさ、先進性、何よりチャレンジングなものが集まる場であることが、SXSWの魅力だと思っている。もし、出展を検討している方がいたら、企業規模などに関係なく、ぜひSXSWで映えるプロダクト、ソリューションを持っていってほしい。そして、一度実際に行って現場の空気を感じてほしい 。SXSW期間中のオースティンは、いわゆる展示会のそれではなく、独特の雰囲気があるからだ。

 私は今回で2度目の参加だった。2016年にWHITEのVRヘッドセット「MilboxTouch」がSXSW Interactive Innovation Awards VR&AR部門にファイナリストとして選出され、チームの一員として参加した。トレードショーにも出展していたため、ブースでの対応、Finalist Show Case、Finalist Partyへの参加と、とても貴重な経験をした。

 2017年はレポーターとして参加し、さまざまな企業の展示に触れることができた。2016年とはまた違った視点からSXSWを体験し、やはり多くの収穫があった。2018年以降もSXSWへ参加したいと思うが、次回は視察側ではなくプレーヤーとして参加できるよう、クリエイティブやプロダクト開発に取り組みたい。

-PR-企画特集