エイベックス・ベンチャーズは、ベンチャー企業向けに投資、支援をする「avex Enter-Tech Pitch」を開催。エイベックス・グループが持つさまざまな事業と幅広くコラボレーションできるようなスタートアップ7社による、公開プレゼンを開催した。
エイベックス・ベンチャーズは、2016年11月に設立したエイベックスの子会社。ヒット創出に向けた施策の1つとして、また、投資による新たなビジネスの創造を目的に創立した。
avex Enter-Tech Pitchは、エイベックス・ベンチャーズが実施する初のイベント。エイベックスグループ各社とのコラボレーションや提携などを見据え、ベンチャー7社が自社サービスや製品についてプレゼンをした。エイベックスグループが持つ事業と連携することで、相乗効果が得られるようなビジネスモデルを模索することを目的にしている。
審査員は、エイベックス・グループ・ホールディングス代表取締役社長CEOで、エイベックス・ベンチャーズの社長も務める松浦勝人氏、音楽プロデューサーの小室哲哉氏、経営共創基盤の塩野誠氏の計3人。各審査員賞を選出し、選ばれたベンチャー企業には、エイベックス・グループ各社とのコラボレーションや提携のチャンスがある。
プレゼンを実施したのは、以下の7社。
Insta VR(提供:InstaVR、代表取締役社長:芳賀洋行氏)
VRアプリ制作ツール。すでに世界で1万社以上に導入している実績を持ち、サービスは北米を中心に展開しているという。通常約3週間程度必要となるモックアップの制作期間が、約1週間にまで短縮できるほか、コストも従来の半分程度に抑えられる、スピードと低価格が売り。「エイベックスが現在、音源というかたちで提供しているものを、VRを使うことで、ライブの体験としていつでもどこでも提供できるようにしたい」(芳賀氏)とエイベックス・グループとのコラボレーション案を話した。
STYLER(提供:スタイラー、CEO:小関翼氏)
アパレルショップの販売と消費者をつなげるコミュニケーションプラットフォーム「STYLER」を提供。「オフィスに履いていくスニーカー」など、欲しいアイテムをネット上に書き込むと、アパレルショップの販売員がおすすめのアイテムを提案してくれる。これは「抽象的なニーズを読み取ることは不得意」であるECサイトのウィークポイントを、リアル店舗につなげることで補う仕組み。ユーザーは気になるアイテムがあれば、メッセージを送り、購入することも可能。配送や取置にも対応する。エイベックス所属のアーティストにアンバサダーになってもらうことで、さらなるサービスの成長を狙う。
Coupe(提供:Coupe、代表取締役社長/エンジニア:竹村恵美氏)
「Coupe」はサロンモデルと美容師をつなぐウェブサービス。友人の美容師がいつもサロンモデル探しに疲弊している姿を見ていた竹村氏が立ち上げた。サロンモデルとは、ヘアカタログやホームページなどに掲載されているモデルのこと。読者モデルに近い位置付けで竹村氏によれば「今、一番“ドやれる”バイト」だという。その中でもCoupeはサロンモデルに適した容姿を持つ人材を確保。ドタキャンなどスケジュール変更もないように調整しているという。現在、2600サロンが利用しており「Coupe出身の有名人を生み出していきたい」という。
PLAYER(提供:ookami、代表取締役社長:尾形太陽氏)
スポーツの試合情報やスコアがリアルタイムでわかる「PLAYER」を提供する。スタジアムかテレビが中心だったスポーツの観戦スタイルを、東京オリンピック、パラリンピックを開催する2020年に向け変えていくことが目的。「熱狂の瞬間を見逃さない」ことをポイントに、試合結果などを速報データとしてユーザーに届ける。その速さは実証済みで「1分程度のタイムラグが生じるストリーミングサービスで試合を見ているよりも、早く結果が届いてしまいクレームがきたほど」(尾形氏)だという。アスリートのマネジメントなども手がけるエイベックスと組むことで、アスリートをライブコメンテーターとして起用するなどしたいという。
cluster(提供:クラスター、Founder&CEO:加藤直人氏)
「インターネットの発達により、引きこもりでも生活には困らない。しかしライブやハッカソン、コミケなどリアルの場所に行くことができない」(加藤氏)という引きこもりの困りごとをVRで解決するために生み出したプラットフォーム「cluster」を手がける。ネット上にバーチャルの部屋を作り、そこに人を集めることが可能。部屋や1人用から数千人規模まで、自在に用意できる。「VRでエンタメイベントに革命を起こす」ことが目的だという。
orb(提供:Orb、代表取締役:仲津正朗氏)
独自開発したブロックチェーンテクノロジを元に、誰でも発行、運用が簡単ができるコミュニティ通貨のプラットフォーム「orb」を提供する。この技術をいかし、楽曲のDRMの仕組みを整え、著作権問題を解決したいという。これにより2次利用時の楽曲の権利関係を共有し、管理する仕組みを作り、新しい楽曲が生まれやすくなるという。ビジネスをきちんと成長させながら、不用意な海賊版が生まれてくるのを止めたいとした。
BONX(提供:BONX、代表取締役CEO:宮坂貴大氏)
自身もスノーボーダーだという宮坂氏が作ったコミュニケーションギア「BONX」を販売する。BONXを耳に装着し、スマホアプリと連携することで、複数人で作ったグループ内で会話できることが特長。独自の発話システムにより、言葉を発するだけで会話が始められる仕組み。ボタンなどを押す必要がなく、滑りながら自然に会話ができることが特長だ。音楽も聴くことができ、現在は自分のスマホのみから再生させるだけだったが、音楽もグループ内で共有できるようにしたいという。
会場には、審査員のほか約150名のエイベックスグループの社員が出席。飲食やスポーツなど、幅広い事業を展開しているだけに、コラボレーションしたいスタートアップ企業があれば、その場で名刺交換などをして、実務ベースでのコミュニケーションも取っていけるようにしているという。
審査員賞は、審査員全員が「欲しい」と言ったBONXが塩野誠賞、制作スピードが早く、「9月のイベントのものでも間に合うか」という小室氏の問いかけに「間に合います」と即答したInstaVRが小室哲哉賞、動作が軽く、大人数に対応できるためイベントがしやすいことをアピールしたクラスターが松浦勝人賞を受賞した。
エイベックス・ベンチャーズでは、今後も出資する機会を広げ、スタートアップ企業と具体的な協業を実現していきたいとしている。
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