視線入力がPCやスマートフォン、車のインターフェースを大きく変えようとしている。視線で操作するだけでなく、視線を読み取ることで機器が“認識”という概念を持ち始める。アイトラッキングのリーディングカンパニー、トビーテクノロジーが見据える未来のインターフェースとは何か。共同創業者、CEOであるHenrik Eskilsson(ヘンリック・エスキルソン)氏に聞いた。
――マーケティングや学術分野で使われているアイトラッキングですが、2016年はその用途に広がりを見せたようですね。
デル「New ALIENWARE 17」やエイサー「Predator 21 X」のPCや、ファーウェイのスマートフォン「Honor Magic」など、既存のハードウェアに組み込まれるようになりました。アイトラッカー自体は非常に小さいものですから、あらゆる場所に搭載できます。
アイトラッカーというと、デバイスのモニタを見る視線を追うことでデータを取得するといったマーケティング的な使われ方などを想像すると思いますが、デバイスに内蔵することによって、デバイスを擬人化し、双方向な使用が可能になります。
例えば、アイトラッカーが組み込まれたPCの前にユーザーが座ると、PCは誰が座ったのかを認識します。それがPCのユーザー本人であれば、パスワードを入力する手間なく、PCを起動。座るだけでPCが立ち上がります。
このようにアイトラッカーが組み込まれることで、デバイス側がユーザーを認識できるようになります。現時点では、多くのデバイスにアイトラッカーが搭載されておらず、いわばデバイスが眠っている状態。これを目覚めさせることで、ユーザーが誰なのか、どこに注意を払っているのか、興味を持ってくれているのかを、デバイス側が認識できます。それは人と会話をしているような感覚を得られ、デバイスそのものがより面白くなってきます。
――PCの起動時以外にはどんな変化が起こりますか。
例えば、PCでウェブサイトを見る場合、マウスやタッチパッドを使ってスクロールが必要になりますが、アイトラッカー搭載のPCであれば、スクロールのアイコンを見つめるだけで、画面の移動が可能になります。
ゲームを楽しむ際はもっと顕著で、サードパーソン・シューティングゲーム(TPS)ゲームでは、敵を見てエイムコマンドを押すだけで、カメラが画面中央に移動したり、画面の左をみるとカメラを向けるように画面が左側へパンしたりと、まるでゲームの中に入り込んでいるような感覚でプレイできるようになります。
スマートフォンでも同様に、スクロールや画面を見つめるだけでズーム操作ができるようになります。複数の動画コンテンツが並ぶウェブページなどでは、見たいコンテンツのサムネイルを見つめるだけで選択ができ、あとはその場所をタップするだけで動画が再生されます。
――視線による入力ミスは生じませんか。
その部分もアイトラッカーが常にユーザーの動きを認識することで補います。PCを立ち上げた時はこの辺りをいつも見ている、モニタの左端を見ることはほとんどないなど、アイトラッカーを搭載しているデバイスが、ユーザーに関する知識を増やすことで反応も良くなっていきます。
使えば使うほど、より操作が軽快になる。それがアイトラッカーの魅力です。すべてを視線入力で補うのではなく、カーソルを動かす部分までは視線入力で、その後のクリックはタッチ、音声、ジェスチャー、マウスを使うなど、既存やその他インターフェースと組み合わせることで、操作ミスも減らしていけます。
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