東芝は、2019年度に売上高で4兆2000億円、営業利益で2100億円を目指す中期経営計画を発表した。
「『新生東芝』による事業計画」と位置づけるこの計画は、マジョリティにこだわらない売却を計画しているメモリ事業およびウェスチングハウスによる海外原子力事業を切り離し、社会インフラを核とした事業領域に注力したものであり、社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、ICTソリューションの4つの事業で展開することになる。
同社はこれまでにも「新生東芝」という言葉を使ってきたが、「また、振り出しに戻った。新たな気持ちで『新生東芝』に挑む。言葉は同じだが、再度チャレンジする」(東芝の取締役代表執行役社長の綱川智氏)と述べる一方で、「2部降格を前提にした中期経営計画である。社会に対する信用を確保しつづけ、上場廃止にはならないように努力をしたい」と語った。
2019年度の見通しのうち、社会インフラの売上高が1兆9650億円、営業利益は880億円と売上高の約半分を確保。エネルギーの売上高は1兆500億円、営業利益は450億円、電子デバイスの売上高は8000億円、営業利益は480億円、ICTソリューションの売上高は2800億円、営業利益は120億円を見込む。
2016年度見通しでは、メモリおよびウェスチングハウスを含めた売上高は5兆5200億円であり、新生東芝の事業規模は約4分の3にまで縮小することになる。
「2016年度は、ウェスチングハウスにおける減損などで7170億円のマイナスがあったが、これを除くと、メモリ事業で1654億円、社会インフラを中心とした新生東芝の領域で1416億円となり、あわせて3000億円以上の営業利益がある。これは、東芝にとって過去最大の営業利益になる。海外原子力以外の事業は順調である。これをしっかりと成長させたい」(綱川氏)としたほか、「メモリの外部資本の導入により、2019年までの資金収支は確実にプラスになる」と語った。
また、2019年度までの設備投資は、年平均1300億円となり、2016年度の4500億円から大幅に減少するが、「これは半導体分野への投資分が減ったものであり、新生東芝の部分については、2016年度の900億円から1300億円に増額することになる」とした。
新生東芝の中核事業となる社会インフラ事業については、公共インフラ、ビル・施設、鉄道・産業システムに加えて、東芝テックによるリテール&プリンティングで構成。「水処理や受配電、道路、防災、放送、防衛、航空管制、気象、郵便、金融などの公共インフラの更新、高度化需要獲得、保守ビジネスなどの安定収益事業に加えて、中国およびインドなどの成長地域への投資、SCiB、昇降機、空調、鉄道システム、物流などの成長領域への投資を行う」という。
エネルギー事業では、火力・水力・地熱、電力流通、国内原子力に加えて、「水素社会に向けた新たな芽として、次世代エネルギーに投資する」とした。「海外エネルギー事業のM&Aで失敗した過去を反省して、新たに進んでいく」と述べた。
電子デバイス事業は、ディスクリートおよびシステムLSI、ハードディスクで構成。小信号デバイスやオプトカプラ、モータ制御ICなどの産業用半導体での販売拡大、急成長するIoT車載市場の重点顧客との連携を図るという。「これが、メモリなき後の半導体事業の姿である。電子デバイス事業の回復については、新たな車載関連、制御関連デバイスの開発で収益性を高めたい。ハードディスクはしっかりとやっていく。市場は縮小するが、データセンタには必要な製品であり、ROS(Rate of Sales)では2019年度も5%を確保する」とした。
ICTソリューションでは、IoTおよびAIを活用したデジタルサービスを顧客ととも共創することを目指し、東芝のIoTアーキテクチャーである「SPINEX」を活用。モノづくりノウハウや、東芝が特許を持つ音声認識技術、画像認識技術などを組み合わせていくという。
さらに、かつてヘルスケア分野を担当していた綱川氏は、「中期経営計画期間を過ぎた将来の領域について、ひとつだけ話を追加しておきたい」とし、「医療分野の顧客から、超伝導技術を生かした重粒子線癌治療システムはどうなるのかと聞かれる。これは確実にやり続ける」と断言した。
綱川氏は、「新生東芝は、メモリ事業や原子力事業のように1兆円近い売上高を誇る、核になる事業はない。だが、2000~5000億円レベルの事業において、これらの計画を確実にやり遂げる。再び成長できる姿に向けて、海外原子力事業の大幅な見直し、メモリ事業の分社化などをし、事業形態は変化するが、脆弱な財務基盤からの早期脱却を図ること目指す。会計問題や原子力事業における損失計上で、困難と痛みを伴う一層の改革が必要であるが、私を筆頭に経営陣、従業員が責任をまっとうし、再度成長軌道に乗れるように努めたい。これらの方針を確実に実施していくことが、過度な成長戦略を求めた過去の経営との決別につながり、健全な経営体制の第一歩になると考えている」とした。
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