映像配信サービスにおいて、オリジナルコンテンツは今や重要な役割を果たす。「ここでしか見られない」プレミアム感がそのほかのサービスと差別化につながるからだ。ドラマ、ライブ、アニメとジャンルはさまざまだが、配信ならではの自由度をいかせるバラエティは最近特に注目を集めているジャンルだ。
バラエティコンテンツの多くは、地上波コンテンツの先出しや見逃し配信、映像配信サービスだけのオリジナルコンテンツだが、dTVが2016年秋より配信している「dTVオリジナル ゴッドタン」は、地上波放送とは違ったエピソードをオリジナルで制作。地上波放送とdTVオリジナルコンテンツ配信の2つを同時に取り組んでいる。
「dTVから声をかけていただく形でスタートした企画だが、まず心配だったのが物理的に可能かどうか。話を聞いてみるとかなり柔軟で、コンテンツの時間も10分前後。それならばと思いスタートした。地上波の30分番組までは作れないが、10分程度で作れそうなワンアイデアがたくさんあった。30分のテレビ番組だと試せないことを試す場として面白く感じた」とテレビ東京でゴッドタンのプロデューサーを務める佐久間宣行氏は、地上波放送と同時に配信版を取り組むことになったきっかけを話す。
ゴッドタンは2005年に放送を開始した、テレビ東京の人気バラエティ番組。お笑いコンビのおぎやはぎが司会を務め、劇団ひとりさんらがレギュラー出演している。dTV版のゴッドタンでもレギュラーキャストはそのまま出演。放送作家やスタッフもほぼ一緒だという。
地上波放送は1週間に一度撮影日を設けており、現在は加えて別日1日を押さえ、dTV用のコンテンツを4~5本まとめて撮影している。
10分前後の短尺、配信用コンテンツといういい意味での“気楽さ”は、地上波とは別モノの「面白さ」につながっているという。「ちょっとくだらなかったり、お笑い色が強すぎるコンテンツを作るには最適。地上波は万人向けの意識があるが、dTVで見てくれる人は、有料かつたくさんあるコンテンツの中からゴッドタンを選んでくれた“お笑い好き”。お笑い色が強すぎても誤解されないだろうという安心感がある」と佐久間氏はユーザー像をイメージする。
出演者にも配信ならではの挑戦をしている。「意識的に新しい人に会える企画をやろうと思っている。地上波だと結果を出そうとするあまり、ガチガチになって本領を発揮できない芸人さんもいるが、失敗してもいいし、カットもできるから自由にやってほしいと伝えている。これによって、地上波の出演につながる人もいるし、中にはdTV版でメインにしたい人もいる」と地上波放送への影響も出てきた。
10分前後と短尺ながら、企画、撮影、編集と作業量は地上波放送と同じ。「大変だが、どうせやるのであれば、見ている人が飽きないものにしたいし、新しい企画をたくさん試したい。それらを追い求めるのは正直超面倒臭い(笑)。でも超面倒臭いことは面白さにつながる。手の掛け方は地上波も配信も同じ。使う企画の振り分けや質感を変えることで、棲み分けている」という。
視聴端末はスマートフォンを想定しており、「あまり引きの画を使わない」「テロップの文字サイズを少し大きめにする」などの工夫はしているが、基本的には変わらないとのこと。
それ以上に配信用コンテンツとして重視しているのが、シリーズ感だという。「地上波放送は、前後編でも先週見ていない人もいるかもしれないし、来週見られない人もいるかもしれないことを想定し、1回で完結できることがベスト。しかし配信は面白ければ以前の回も見てもらえるし、シリーズものであれば第1回からまとめて見られる環境にある。配信コンテンツの1番いいところはストックされること。アーカイブをいつでも見てもらえるのはすごくうれしい」と配信のメリットを話す。
実際、dTV版のゴッドタンでは10分×3回の構成でコンテンツを作成しており、「続けて30分程度であれば視聴者も飽きずに、そして一度に見られる時間内。アーカイブを一気見できるのも配信ならでは」と強調した。
「ゴッドタンは言ってみれば男子校の乗りで作っている番組。地上波ではそれでも女子が2人くらいはいるような気持ちで作っているが、dTV版ではより男子校率をあげた感じ。実は視聴率は気にしたことがなくて、その意識はdTV版でも同様。たださらにお笑い好きな人に届けられるコンテンツだと思っている」とターゲットは明確だ。
「予想以上に面白いコンテンツができているので、ぜひ多くの人にみてもらいたい。この後も、バイきんぐの西村瑞樹さんがメインの回は相当おもしろいし、さらば青春の光の東口宜隆さんと鬼ヶ島の和田貴志さんが登場する注目の回など、おすすめの回がとにかくたくさんある。尺ありきで企画を作っている地上波放送と、企画に合わせて尺を変える配信の両方に取り組んでいくことで、今までにないコンテンツが作れる」と、放送と配信の2つのコンテンツに取り組むことで、幅が確実に広がっているという。
dTVでは、地上波放送のゴッドタンコンテンツも配信しており、dTV版と合わせ再生回数の上位に入る人気コンテンツになっている。配信と地上波放送、それぞれの特性をフル活用し、新たなバラエティコンテンツの形があらわれた。
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