A6:ソニーは何といっても有機ELテレビの開拓者。11型のXEL-1も発売していただけに、有機ELの難しさをよく理解している。今回発表した4K有機ELテレビ 「BRAVIA A1Eシリーズ」は、音へのこだわりも強く感じさせるモデル。ディスプレイを振動させることでテレビの画面から音が直接出力する「アコースティックサーフェス」を搭載していることが最大のポイントだ。
ソニーでは、A1Eシリーズに対して「映像だけが浮かんでいるような佇まい」「映像から直接でてる一体感のある音」「究極のコントラスト・質感によるリアリティ」という3カ条を掲げていて、それがそのままテレビに反映されている。
アコースティックサーフェスは、薄型テレビが長年抱えていた“音質”に対する1つの答え。画面下や左右に設置されるスピーカは、サイズが小さく、画面との一体感にどうしても欠けてしまう。画面全体から音が出るアコースティックサーフェスは、画と音の一体感が抜群だ。
問題はパネル部分のガラスだ。ガラスを鳴らすと質感が出すぎてしまうなど難しい部分が多い。ソニーはそこに有機ガラスを用いたグラスサウンドスピーカ「LSPX-S1」技術を投入。緩衝材の入れ方やガラスの配置などを調整した。
音は自然で、低音もサブウーファがつくため迫力もある。何より画像と音像の一致が気持ちいい。
ソニーは液晶テレビ「Z9D」シリーズが、明るさ、階調感、色再現力と三拍子そろった高画質を実現しており、現在、最大の“画質コンシャス”なテレビはこちらで、有機ELではない。Z9Dとの差別化をつけるためにも革新的なオーディオを採用しているのだと思う。
ただ、放送・業務用の有機ELマスタモニタとして30型の「BVM-X300」と55型「PVM-X550」をラインアップしており、こちらは一階調ごとに画面のコントロールが可能という突き詰めた高画質モデルも開発している。
A7:東芝はブラウン管テレビも、自社開発、製造を手がけてきたため、自発光は得意分野。黒の沈み込みや色再現力が難しいとされる液晶テレビでも、画質に定評がある「REGZA」をリリースしており、画質へのこだわりは強い。
3月上旬に発売する「4K有機EL REGZA X910」は、REGZAのフラッグシップモデルでありながら、パイオニアのプラズマテレビ「KURO(クロ)」の画質を受け継いだ後継モデルという2つの顔を持つ、異色のテレビだ。
KUROは、パイオニアが2009年まで販売していたプラズマテレビのブランド。その名の通り沈み込む黒の表現力が持ち味で、高画質性能はピカイチだった。
東芝は、当時パイオニアでKUROの商品企画を担当していた西尾正昭氏(現オンキヨー&パイオニア)に画作りを依頼。KUROの遺伝子を持ったREGZAが誕生した。
メーカーの垣根を超えたコラボレーションは、オンキヨー&パイオニア側にもメリットがある。現在、北米市場ではホームシアターとテレビを同じブランドで統一して販売するケースが多いが、オンキヨー&パイオニアではテレビを持っておらず、統一ブランドとして販売することができない。その弱点をREGZAと組むことによって解消できる。
A8:Q1で先述しているように液晶はバックライト、有機ELは自発光と構造が異なる。液晶は開発当時、視野角が狭い、動画応答速度が遅い、コントラスト悪いことから「液晶3悪」だったが、それらのデメリットをまったくもたないのが有機ELになる。
ただし、液晶は各テレビメーカーの技術力で“3悪”を、それなりにそして部分的にカバーし、動画応答速度などを大幅に改善。視野角の広い「IPS」パネルや、コントラストの出しやすい「VA」パネルなど、パネル自体も改良を加えることで、高画質化してきたという歴史がある。ただし”3悪”を完全に払拭した液晶バネルはない。
A9:白ピークは液晶が方が優れていて、明るい画が出しやすいのは液晶テレビ。ハイエンドな液晶テレビは3000ニッツ程度の白ピークが出せると言われているが、有機ELは900ニッツ程度。以前はこの半分程度だったので大きく改善しているが、液晶には及ばない。
また有機ELの黒は、沈み込みすぎて階調が出にくいこともあり、階調性は液晶の上。ただし黒が浮いて見えてしまうことも。
A10:予算が許すのであれば、有機ELを選ぶのがベスト。テレビの画質は4K、8Kなど、高精細化も1つの基準とだが、もっとも高画質を体感できるのはコントラスト。ここがよくならなければ4K、8Kの高精細感も生きてはこない。逆に2Kであってもコントラストさえよければ、高画質感は得られるはず。
精細感、解像度が上がってもコントラストが上がらないと画質的には不十分なので、コントラストが非常によい有機ELは高精細時代に大きなアドバンテージを持っていると言える。東芝、パナソニック、ソニーとテレビメーカーが続々と参入してくる2017年は有機ELテレビ元年といって間違いない。
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