人間の目は、見る対象物との距離に応じてピントを調整することで、近くから遠くまでハッキリと見られる。この調整機能は加齢で衰えるため、ある程度以上の年齢になると老眼鏡なしでは近くが見えにくくなる。そして、少し離れた周囲を見るには老眼鏡を外す必要があり、掛け外しする手間が煩わしい。
そんな面倒も、ユタ大学の研究チームが開発した、見るものに自動でピントを合わせる眼鏡を使えば解消される。
研究チームが「スマートグラス」と呼ぶこの眼鏡は、ゴムのような柔軟性のある透明な2枚の膜のあいだにグリセリンを封入した特殊なレンズを使うことで、ピント調整を可能とした。レンズの周囲には3個のアクチュエータを設け、引っ張り方によってレンズの曲率を変え、眼鏡の度数を調整する仕組み。
眼鏡フレームのブリッジの部分には、赤外線パルスで距離を測るセンサを搭載。装着者の顔を向けた物体までの距離を計測し、この距離情報にもとづいてレンズを調整してピントを合わせる。
このスマートグラスを使う場合、最初に装着者の度数データをスマートフォンのアプリに入力し、Bluetooth経由で眼鏡に送信する。これにより、装着者に適した調整が実行される。老眼が進むなどした場合は、度数データを設定し直すだけなので、眼鏡を買い替える必要がない。
なお、研究チームは米国ネバダ州ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)にプロトタイプを出展したが、大きなフレームの重い武骨なデザインだ。小型化と軽量化に取り組むことで、早ければ3年後に販売できるレベルになるという。眼鏡の事業化は、Sharpeyesというスタートアップが担当する。
この研究成果は、米国光学会の論文誌「Optics Express」に、「Tunable-focus lens for adaptive eyeglasses」として掲載された。
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