高校生たちは、理想的な自分になるためにだけ不正ログインするわけではない。むしろ多いのが、嫌がらせを目的としたものだ。誰かの悪口を投稿したり売春をすることを匂わせるなど、相手になりきって不正に貶める内容を投稿する例が多いのだ。
高校3年生女子A子は、「自分もTwitterでなりすましをされたことがある」と言っていた。A子は早々に推薦で大学進学が決まっていた。「友だちが私のなりすましがいると言ってくれて、見たら私の写真を使って悪口とか書いてた」。ツイート内容から同じ部活の同級生が犯人と考え、追求したところ逆ギレされた。「大学も決まったし可愛いし彼氏もいるし、A子はいいじゃない」。同級生は志望校になかなか合格できず悩んでいたようだったという。
中学2年生女子B子もTwitterでなりすましをされた。B子のTwitterアカウントが「☓中のC子はブス」などとツイートしていたためケンカになりかけたが、実際はこのアカウントはB子になりすましたものだった。B子はTwitter上でフォロワーが多く、学校名や学年、名前や顔写真なども公開しており、なりすますことは難しくない状態だった。結局犯人はわからない状態であり、Twitterではこのように影に隠れて嫌がらせできてしまうことがわかる。
いくつか耳にした例から言うと、やはりそこには妬みややっかみが関係していることが多い。気に入らない相手になりきることで陥れられると考えて、そのような行動に及んでいるのではないか。
これまでも述べてきたとおり、中高生は不正アクセス禁止法のことなど興味がなく、共同アカウントという文化もあり、乗っ取りやなりすましに抵抗が少ない状態だ。
私はスマホで手軽にできるからこそネットいじめが増加した面があると考えているが、おそらく共通する部分があるのではないか。スマホで手っ取り早く理想の存在になったり、嫌な相手を陥れられることが分かっているからこそ、彼らは気軽に乗っ取り、なりすましを繰り返している。中高生にとっては、手っ取り早くスマホで自分たちの願望を叶えただけのことなのだ。
「なりすましは違法でしょ?」と聞かれることがあるが、残念ながらなりすましをしただけでは違法とはならない。しかし、なりすましにより社会的評価が下がる投稿などをされた場合は、名誉毀損罪などに該当するだろう。
しかし、そもそもTwitterでは、なりすましは規約によって禁止されている。アカウントは通報でき、なりすましと認定された場合、アカウントは凍結される。なりすましをされた場合は、こちらのリンクを参考に通報するといいだろう。
なりすましはスマホの影に隠れ、他人に迷惑をかける卑怯な行為だ。保護者は、子どもたちがこのような行為に手を染めることがないよう、利用を見守ってあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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