埼玉県・東大宮にある介護・デイサービス施設「あけぼしデイ&リハ」をはじめ、複数の施設を運営するグレートフルも、カイポケを導入している介護事業者だ。同施設の正社員は7名で、1日に25人ほど訪れる高齢者に対して、介護やリハビリテーションのサービスを提供しているという。
日々のケアサービス後のすきま時間に、施設内に置かれたiPadに、血圧・脈拍などのバイタルや飲食内容などを記録して共有していると、現場で働くスタッフは語る。表示される項目にタップしていくだけで記録できるため負担も少ないという。
同社はカイポケを導入して6年目、iPadを導入して2年目になる。あけぼしデイ&リハは1年2カ月前にオープンしたため、当初からタブレットで運用していたが、その他の施設では、紙に書いたり、PCにインストールするタイプのレセプト(診療報酬明細書)ソフトを利用したりしていたため、記録作業が発生する月末月初はスタッフの残業が当たり前だったと、グレートフル代表取締役の岩﨑英治氏は振り返る。
従来は事務所にPCが1台しかなく、スタッフが交代で情報を入力していたため業務効率が悪かったそうだが、PCやタブレットなど複数端末からクラウドにアクセスできるカイポケを導入したことで、効率が劇的に改善したと岩﨑氏は説明。また、訪問介護の際もスタッフは利用者ごとに大きな紙のファイルを持ち歩いていたが、いまではタブレットにすべての情報を入れて持ち歩けるようになったという。
紙やPCで作業していた頃は、月末になると22時ごろまで残業することも多く、休日出勤することもあったそうだが、タブレット運用に切り替えたことで、現在は17時半~18時にはほとんどのスタッフが退社できるようになったという。また、削減した残業時間を高齢者とのレクリエーションや、社員同士のBBQなどのイベントに充てられるようになったことで離職率も下がっていると話す。同社には40名の正社員がいるが直近1年間で退職した社員は1人もいないという。
これらの効果だけを聞くと、どの事業者もタブレットに切り替えるべきと思ってしまうが、経営者やスタッフの意識変革はそう簡単ではないと岩﨑氏は話す。実際グレートフルの施設でも、日ごろPCに触れる機会が少ないスタッフも多かったため、カイポケの導入当初はタブレット操作に慣れるまでに時間がかかったという。また、介護という人と向き合う仕事にデジタルを取り入れることに抵抗のあるスタッフもいたそうだ。「効果が分かるまでは『紙の方が早い』と思ってしまう。残業が減らせるなど、導入することによるメリットをしっかり共有すべき」(岩﨑氏)。
今後も介護需要は増え続ける一方だが、行政から得られる介護報酬には限度がある。そのため、いかに業務を効率化して生産性を上げられるかが、介護事業者の経営を左右する可能性はある。ICTを活用したペーパーレス化はその第一歩といえそうだ。また、今回はカイポケを紹介したが、各社が提供する介護ソフトの連携なども実現すれば、介護業界のデジタル化はさらに進むだろう。
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