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高齢者介護の離職率を“ペーパーレス化”で下げる--介護の現場を取材

藤井涼 (編集部)2017年02月03日 16時02分
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 いまや国民の4人に1人が65歳以上といわれる高齢化社会の日本。2025年にはこれがさらに進み、3人に1人になると予測されている。そのため、高齢者の介護人材の確保が急務といえるが、厚生労働省が発表した「平成27年介護サービス施設・事業所調査の概況」によれば、介護事業への就業者数は約208万人(介護職とケアマネジャーの合計)。すでに3000万人以上が高齢者であることを考えると、働き手が足りないことは明らかだ。

 そうなると、できるだけ多くの介護従事者を新たに増やすべきと考えがちだが、「本当に重要なのは、入職者を増やすことよりも離職者を減らすこと」だと、介護事業者向けのITソリューションを提供するエス・エム・エス(SMS)介護事業本部長の福田升二氏は話す。実は厚労省のデータをもとに同社が推測したところ、年間の介護事業への入職者は47万人であるのに対し、離職者は36万人もいるのだ。つまり年間で約10万人しか増えていないことになる。

 なぜ、こんなにも離職率が高いのか。社会保障費の抑制による介護報酬減などから「過酷な仕事でありながら報酬が低いことが原因」と言われることもあるが、それは一部の事業者の話であり、有資格者であれば特別報酬が低いことはないと福田氏は説明。そのうえで離職理由の多くは、「紙による非効率な記録作業や人間関係への不満によるもの」だと指摘する。

 介護施設のスタッフは、介護報酬を得るために行政の指定した書類や帳票などに、高齢者の体温や脈拍、食事内容などを記録している。しかし、多くの施設では、この作業をPCのエクセル入力や紙への手書きで対応しており、日々の実作業の多くの時間を割いているという。

 その結果残業が増え、本来やりたい介護サービスを満足に提供できないことから、ストレスを抱えて離職するスタッフが増えるという悪循環が生まれていると福田氏は話す。厚労省もこの問題を解決すべく実態把握調査をするなど、ICTを活用した介護業務のペーパーレス化を推進している。

介護事業者の経営全般をICTで支援

 こうした介護業界の課題を解決するためにSMSが提供しているのが、介護事業者の経営全般を支援するツール「カイポケ」だ。iPadを使って記録や書類作成、介護保険請求などができるほか、記録用の写真や動画も撮影できる。同社グループのオペレーターが操作方法を電話で説明するため、導入の際の教育コストも削減できるとしている。

 スタッフがタブレットから記録するだけで帳票に自動連動するため、転記などの手間はかからない。また、介護利用者への請求データと口座振替が連動するほか、スタッフへの給与振り込みも勤怠管理と連動するという。このほか、介護報酬を1.5倍早く資金化できる機能や、消毒液などの備品を購入できるEコマースなども用意している。

介護ソフト「カイポケ」のタブレット利用イメージ
介護ソフト「カイポケ」のタブレット利用イメージ

 さらに訪問介護事業所向けには営業支援機能も提供している。具体的には、チラシやウェブサイト、営業リストを簡単に作成できる機能や、営業リストと連動した地図をiPadに表示する機能などだ。営業記録を入力すれば自動で結果が集計されるという。

 同社では介護施設のスタッフの採用も支援している。カイポケを導入した事業者は、介護専門求人サイト「カイゴジョブ」の求人広告掲載から応募、面接、採用までのサービスを無料で利用できる。現在約67万人の介護職員やペルパーなどが登録しており、そのうちの85%以上が専門の知識やスキルを持った有資格者だという。

 カイポケでは、これら約40種類のサービスを提供しており、事業者ごとの課題に合った使い方を提案している。サービス内容によって料金は異なるが、一拠点あたりの月額平均は約2万円前後とのこと。4G回線込みのiPadは1台無料で利用でき、2台以上使う場合は通信料込みで1台あたり3000円が追加される。

約40種類のサービスを利用できる
約40種類のサービスを利用できる

 2016年7月時点で1万6000以上の介護事業者がカイポケを採用しているという。毎月の膨大な記録作業が大幅に減ったことで、実際に20人のスタッフの総残業時間を月間約200時間ほど削減できた事業者もあるそうだ。残業時間が減り、介護サービスに集中して取り組める時間が増えたことで、コミュニケーションも活発になり、離職率の減少につながっている事業者もあると福田氏は話す。

 「介護にはコアな業務とノンコアの業務がある。コア業務である介護サービスにテクノロジを入れると、スタッフのリテラシーの問題などもあり、ケアそのものの品質が下がってしまうことも多い。テクノロジによってノンコアな記録作業などをいかに減らして、コアの介護の時間を増やせるかが重要。最近は介護ロボットなども注目されているが、現場ではまだそこまで特別な技術は求められていない。記録作業を紙から電子化するだけでも効果がある」(福田氏)。

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